夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

スペイン映画

「しあわせな人生の選択」:良質の脚本と演技、悲しさとおかしさの均衡、忍耐強く演出された末期がんの男と旧友の慎ましやかな友情の物語

「しあわせな人生の選択」(原題:Truman)は、2015年公開のスペイン・アルゼンチン合作のコメディ&ドラマ映画です。セスク・ゲイ監督・脚本、リカルド・ダリン、ハビエル・カマラら出演で、末期がんに侵され余命短いスペイン男性をカナダの旧友が訪ね、男…

「悲しみに、こんにちは」:両親を亡くした都会っ娘が田舎の叔父夫婦、年下の従姉妹と過ごすカタルーニャの夏を描いた自伝的人間ドラマ

「悲しみに、こんにちは」(原題:Estiu 1993、英題:Summer 1993)は、2017年公開のスペインのドラマ映画です。監督自身の幼少期の体験に基づき、カルラ・シモン監督・脚本、ライア・アルティガス、パウラ・ロブレスら出演で、病気で両親を亡くしたバルセロ…

「ジュリエッタ」:メロドラマ風の序盤、母娘の縦糸を織り込む中盤、娘の失踪の謎に迫る終盤、女性像を色彩豊かに描くヒューマン・ドラマ

「ジュリエッタ」(原題:Julieta)は、2016年公開のスペインのヒューマン・ドラマ映画です。アリス・マンローの短編集「ジュリエット」に収録された三つの短編(ジュリエット三部作)に基づき、ペドロ・アルモドバル監督、エマ・スアレス、アドリアーナ・ウ…

「マジカル・ガール」:日本的魔法少女をフックに、男女の欲望の連鎖を多重的な螺旋構造と独自のトーンで描くフィルム・ノワール的悲喜劇

「マジカル・ガール」は、2014年公開のスペインのフィルム・ノワール風ダーク・コメディです。日本のテレビアニメ「魔法少女ユキコ」に憧れる少女をフックに、カルロス・ベルムト監督・脚本、ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニーら出演で、4人の男女の欲望…

「フラメンコ・フラメンコ」:フラメンコの息吹をダイナミックに描く、フラメンコを撮り続けたカルロス・サウラ監督の集大成的傑作

「フラメンコ・フラメンコ」は、2010年公開のスペインのドキュメンタリー映画です。スペイン映画界を代表する存在でもあり、フラメンコやスペインの伝統的舞踊を題材にした作品を数多く手がけた巨匠カルロス・サウラ監督が、現在のフラメンコ界を牽引する若…

「人生スイッチ」:ちょっとしたきかっけで暴走する感情とそれがもたらす様々な結果を、風刺を効かせユーモラスに描いたアンソロジー

「人生スイッチ」(原題:Relatos salvajes(西), 英題: Wild Tales)は、2014年公開のアルゼンチン・スペイン合作のブラック・コメディ映画です。アルゼンチンのダミアン・ジフロン脚本・監督により、不運の連鎖や暴力と復讐によって思いも寄らぬ運命をた…

「おとなのけんか」:オスカーの強者4人による緊迫のリアルタイム室内劇

「おとなのけんか」(原題: Carnage)は、2011年公開のフランス・ドイツ・ポーランド・スペイン合作のコメディ映画です。皮肉で知的なブラックユーモアで国際的に高い評価を得ている劇作家ヤスミナ・レザによる戯曲「大人は、かく戦えり」(原題:Le Dieu du…

「アレクサンドリア」:宗教の狭間に殉じた女性科学者/哲学者ヒュアパティア

「アレクサンドリア」(原題:Ágora)は、2009年公開のスペインの映画です。西暦4世紀、キリスト教が定着し異教の排斥が行なわれ始めた時代のアレクサンドリアを舞台に、数学者、天文学者、哲学者であったギリシャ人女性ヒュパティアの半生を描いています。 …

「グロリアの青春」:若さとは諦めない心の状態!

「グロリアの青春」(原題:Gloria)は、2013年公開のスペイン・チリ合作のヒューマン・ドラマ映画です。セバスティアン・レリオ監督、パウリナ・ガルシアら出演で、離婚を乗り越え、孤独ともうまく付き合い自分の足でしっかりと立ってたくましく生きる中年…

「スパニッシュ・アパートメント」:シェア・ハウスは成長するヨーロッパの象徴

「スパニッシュ・アパートメント」は、2002年公開のフランス・スペイン合作のロマンティック・コメディ&ドラマです。セドリック・クラピッシュ監督、ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、ケリー・ライリー、ケヴィン・ビショップら出演で、バルセロナの経…