夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

【閑話休題】韓国の本音、韓国政府の交渉術、恨、日本が考えたいこと

いろいろな国や文化について知りたいというのが洋画を観る理由のひとつですが、韓国については韓流ドラマのファンというわけでもなく、韓国映画をたまに見る程度です。済州島とソウルを一度ずつ訪問したことがあるものの、韓国通にはほど遠く、

  • 何故、韓国政府は昔のことを何度も蒸し返すのだろう
  • 先進国である韓国が、論点のすり替え、周囲への被害アピール、威嚇といった品のない外交を繰り返すのは何故だろう
  • 日本なら非難されるであろうこうした政府の外交を、決して教育レベルの低くない韓国の国民が支持するのは何故だろう

といった疑問をずっと抱いたままでした。今般、慰安婦問題日韓合意や日韓請求権協定といった国と国との約束を韓国政府がいとも簡単に反故にし、また韓国海軍の巡洋艦が友軍である日本の自衛隊機をレーダー照射するなどの事件が続き、それに関する日韓政府のやり取りを見る中で、理解し難い彼らの考え方を少しでも理解すべく、いろいろ調べてみました。

 

以下はあくまでも、韓国人の本音、韓国政府の交渉術やそれを支持する韓国の国民性を理解する為のものであり、韓国の人々を貶めることを目的としたものではありません。3.11の際は数多くの韓国の方々からご支援を頂き感謝していますし(福島産の海産物には韓国政府がケチをつけていますが・・・)、反韓嫌韓を煽ることを意図したものではないことをお断りしておきます。

 

目次

 

慰安婦問題に関する韓国人の本音 

韓国人といっても保守革新、老若男女、さまざまな考え方があると思いますが、典型的と思われれる本音を的確に言い当てた動画を見つけたので紹介します。歴史認識は大雑把ですが、カナダ留学中に様々な異文化の中で磨かれたと思われるシーヤ氏は、慰安婦問題に関する韓国人の本音をものの見事に喝破しています(わかりやすく、端的に表現されていますので、予めご了解ください)。

 

韓国人と日韓問題でケンカした話 と今の日韓関係について(YouTube

物議をかもした韓国人の交渉術

今年の1月にフジテレビのニュース番組内で、「韓国人の交渉術」として、

  • 強い言葉で相手を威圧する
  • 周囲にアピールして理解者を増やす
  • 論点をずらして優位に立つ

ことが紹介され、これが「偏見をもたらす差別的な言動で、その集団に対する名誉を毀損している」と問題になりました。かつて海外を相手に仕事をしていた私にとっては、交渉する相手の特徴を知ることは非常に重要で、仲間とよくこうした情報を交換していました。もちろんそうした特徴が当てはまる交渉相手もいれば、そうでない人もいますが、こうした予備知識を持つことによって不用意に揺さぶられたり、迷走させられたりすることを避けることができました。

 

で、今回の一連の問題に関する韓国政府の言動を見ていると、この「韓国人の交渉術」の特徴がよく当てはまるのです。例えば、

  • 「結局は日本経済により大きな被害が及ぶ」(文大統領)
    →強い言葉で相手を威圧する
  • WTOへの提訴、アメリカへの仲裁依頼など(但し、自分に不利な仲裁手続には応じない)
    →周囲にアピールして理解者を増やす
  • 韓国海駆逐艦によるレーダー照射」を「自衛隊機による威嚇飛行」に、「安全保障の為の輸出管理強化」を「自由貿易に対する差別」にと、自らを被害者にすり替える
    →論点をずらして優位に立つ

といった感じです。他の国々でもこうした戦術を採ることはありますが、韓国政府の場合は非常に顕著で、事を有利に運ぶ為に形だけ「協議」を連発するものの、実のところ彼らは問題解決ではなく「自分が勝つ」ことしか考えていないと私は分析しています。

恨という概念

それでは、こうした日本人には理解しがたい彼らの本音、韓国政府の品のない交渉術とそれを支持する国民感情はどこからくるのでしょうか?実は韓国には、恨(ハン)という概念があり、これを理解すると彼らの本音、韓国政府の交渉術とそれを支持する国民感情が理解しやすくなります。

  • 伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、階層型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望。(古田博司歴史学者))
  • 東日本大震災の時、日本人は誰もが恨むことなく、それを受け止めていたように思う。こんな時、韓国人であれば、まず自然を恨み、神を恨み、災難に遭った自分の不幸を嘆く。事態を受け入れるのではなく飽くまで抵抗する。神や自然に対してまで抵抗し続け、恨みをバネに生きていくのが人間であるという考え。
    韓国人は自分の回りで何か問題が起こった時、それを自分ではなく他の誰かのせいにしようとする。「被害妄想型の恨」である。(呉善花(作家))
  • 「恨」とは日本語の「恨み」ではなく、自分が憧れる姿に、今の自分がいないことに対する無念の気持ち。(小倉紀蔵(韓国学者、哲学者))
  • 「三・一独立運動」を記念する式典で、韓国の朴槿恵大統領(当時)は「(日本と韓国の)加害者と被害者の立場は、千年の歴史が流れても変わらない」と述べた。日本に対する恨みは永遠に続くと公言したわけである。尋常ならざる怨念に背筋が寒くなった日本人は多いであろう。だが、この感情は歴史的に韓国人、いや朝鮮民族全体に共通するもので、「恨千年」は決して大袈裟ではない。(井沢元彦(歴史家、作家))

因みにこの「千年恨」は韓国の流行語大賞になるほど国民の共感を得た言葉であり、また北朝鮮も日本を「千年来の敵」と評し、「(日本の統治時代に)わが民族に及ぼした人的・物的・精神・道徳的損失は、日本という国をそっくりささげてもとうてい賠償できない」と断じています。現在の韓国は少なからず日本の支援によってあるわけですが、そうしたことは一切合切、消し去り、「千年恨」だけ歴史の教科書に残す、それほど朝鮮民族の心に強く響く言葉なのです。

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時代の変化と日本が考えたいこと

韓国と北朝鮮を分断する現在の38度線付近の軍事境界線は、第二次世界大戦末期から朝鮮戦争(1950年〜1953年(休戦中))にかけて形成されたもので、韓国は自由陣営の最前線でした。それから半世紀以上がたち、

  • 中国はGDP世界第2位の経済大国に
  • 韓国はGDP世界12位の先進国に
  • 北朝鮮は核開発を推進する独裁国家
  • 9.11以降、アメリカの世界の警察としての権威が失墜

と、世界情勢は大きく変化しています。そんな中で、韓国は経済を中国貿易に、安全保障をアメリカに依存といういびつな構造にあります。韓国外交部は中国対応を課から局に格上げする手厚い対応をする一方で、日本ほど顕著ではありませんが、アメリカとの間にも様々な軋みが出始めています。韓国は北朝鮮との連邦国家樹立を目指して着々と準備を進めていますが、彼らは中国のいいなりにも、アメリカのいいなりにもなりたくありません。両大国に示威する為に、北朝鮮が核開発を継続したまま韓国と併合というシナリオもあると思っています。そんな流れからみると、今回の日本の輸出管理強化は間違いではないと思いますが、韓国に「経済による報復」という論点ずらしの口実を与えてしまったのは政府のちょっとした失策かもしれません。

 

それでは朝鮮民族の千年恨にどう対応すれば良いのか?基本的には一民族の概念に過ぎないので、留意する必要はありますが、その概念に支配される必要はありません。恨には冷淡に対応するのが良いという人もおり(例えば「どう思おうと勝手だが、約束は守れ、人に迷惑をかけるな」といった対応)、最初のビデオで紹介したシーヤさんの結論も興味深いです。個人的には、米中の防衛ラインが38度線から後退してきた場合に、日本はどう対処するのかをよく考える必要があると思っています。アメリカは日韓の軋轢よりもイランの問題に興味があるようですが、しきりに世界の警察としての負担の分担を訴えています。一方、日本は改憲勢力の確保が難しいだけではなく、在日米軍基地に対する拒否感まで年々強くなっています。そんな日本の自衛力と韓国の軍事力を比較すると韓国の軍事力が上という分析があり、これに北朝鮮の核が加わると、韓国・北朝鮮陣営が圧倒的に優位になります。短期的にはありえないと思いますが、長期的には朝鮮民族に従属し、千年、謝り続けるという選択肢が出てくるかもしれません(もちろん、そうなって欲しいわけではありません)。日韓の緊張はしばらく続くと思いますが、従来の関係に固執するのではなく、大きな流れの中で状況を見ながら対応していく必要があると思います。

余談:世界的な女性の権利拡大運動の側面

まだ読んでませんが、ちょと興味がある本です。

 

 

キャロル・グラック「戦争の記憶 コロンビア大学特別講義 学生との対話」(Amazon

 

冒頭のシーヤさんとは逆に、
「2015年12月の日韓合意は、最初から成功の見込みがなかった。今日の世界的基準からすると、日本の指導者は慰安婦制度の過ちを認めて、再び謝罪するように求められている…それを拒否したり否定したりすれば慰安婦の問題が国際社会でいっそうクローズアップされるだけだ。」
と結論付けているようです。詳細は省きますが、慰安婦問題は世界的な女性の人権運動と政治的な側面が非常に強いと、私は見ています。記録がしっかりとしているナチス問題と異なり、慰安婦問題は客観的な記録がほとんどありません*1。そんな中であることないことを活動家や政治家に利用されている観が否めず、正直なところ何度、謝罪したところで、こうした活動家や政治家が手を緩めることはなく、逆に女性の人権侵害のシンボルや政治的なカードとしてますます使われるだけという懸念を拭い去ることができません。つまりそこに人権運動や政治が介在しなければ一体、何があったんだろう、これは確かだね、これは不確かだね、じゃあこうしようと決められるけど、そこに人権運動や政治が介在すると、まとまる話どころか、まとまった話さえ、不確かな論拠でぶち壊しになるのです。本来、政府は国民と諸外国の間に入ってうまく立ち回るべきですが、文大統領は政治的に利用価値がある限り反日カードを切り続け、前政権を否定するとともに、国民の民族意識を刺激し、南北統一への求心力を高めるように見えます。極論すればもはや歴史問題でさえなく、女性の人権問題であり政治問題なのです。そもそも客観的な記録が乏しいことをいいことに、あることないことを持ち出し、無限の責任、無限の謝罪、無限の賠償を迫るというのは、暴力以外のなにものでもありません。残念ですが、遺憾の意を示しながらも、いいように利用されぬよう、主張すべきことは主張する必要があると思います。

 

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