夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ゴーン・ベイビー・ゴーン」:ボストンの下町がリアルなベン・アフレック監督のミステリー&サスペンス

ゴーン・ベイビー・ゴーン」(原題:Gone Baby Gone)は、2007年公開のアメリカのた社会派ミステリー&サスペンス映画です。原作はデニス・レヘインの「私立探偵パトリック&アンジー」シリーズの4作目「愛しき者はすべて去りゆく」(原題:Gone, Baby, Gone)で、ヘインの出身地であるボストン・ドーチェスター地区を舞台に描かれ、撮影も同地区で行われています。今回が初めての映画監督となるベン・アフレックは、主演の弟、ケイシー・アフレックとともにボストン出身であり、地元の人間を脇役・エキストラとして多くの出演させています。。誘拐された少女の母親を演じたエイミー・ライアンは、本作でアカデミー助演女優賞他、多くの映画賞にノミネートされ、一躍人気女優となりました。日本では劇場未公開ですが、ソフト観る事ができます。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ベン・アフレック
脚本:ベン・アフレック/アーロン・ストッカード
原作:デニス・レヘイン「愛しき者はすべて去りゆく」
出演:ケイシー・アフレック(パトリック・ケンジー)
   ミシェル・モナハン(アンジー・ジェナーロ )
   モーガン・フリーマン(ジャック・ドイル警部)
   エド・ハリスレミー・ブレサント刑事)
   ジョン・アシュトン(ニック・プール刑事)
   エイミー・ライアン(ヘリーン・マックリーディ、アマンダの母)
   エイミー・マディガン(ビー・マックリーディ、アマンダの叔母)
   タイタス・ウェリヴァー(ライオネル・マックリーディ;ヘリーンの実兄)
   マデリーン・オブライエン(アマンダ・マックリーディ :失踪した少女)
    スレイン(ブッバ :ドラッグディーラー、パトリックの友人)
   エディ・ガテギ(チーズ :ドラッグの元締)
   ほか 

あらすじ

  • ボストンに住むパトリック・ケンジーケイシー・アフレック)とアンジー・ジェナーロ(ミシェル・モナハン)は、幼なじみのカップルで失踪者を探す私立探偵です。ある日、低所得者層が住む小さな町で4歳の少女アマンダ(マデリーン・オブライエン)が誘拐されます。テレビのニュースやワイドショーは一斉にこの事件を取り上げ、母親のへリーン(エイミー・ライアン)は「娘を助けて」と悲痛な姿をテレビカメラにさらし、ボストンの街は騒然となります。
  • 初日に解決をしないと検挙率が10%にまで落ちると言われる誘拐事件ですが、既にアマンダの失踪から3 日が経過し、警察の捜査に進展が見られない中、アマンダの叔母夫婦ビー(エイミー・マディガン)とライオネル(タイタス・ウェリヴァー)がパトリックたちに捜索を依頼しに来ます。単なる失踪ではなく警察が捜査中の誘拐事件の為、パトリックとアンジーは消極的でしたが、ビーの熱心な依頼に押され、仕事を引き受けます。
  • アマンダの母親へリーン(エイミー・ライアン)を訪ねると、彼女は酒とドラッグに溺れた自堕落な暮らし振りで、育児放棄を見かねたビーとライオネルがアマンダの世話をしていたことがわかります。進まない捜索に誰もが焦りを感じる中、パトリックとアンジーはボストン市警の刑事たちと組んで捜査を進めます。独自の人脈でドラッグ中毒者、売人、闇を抱えた人間たちが集まる酒場などを調べる中、彼らはへリーンがドラッグの売人から金を盗んだことを掴みます・・・。

レビュー・解説 

なかなか、良く出来たミステリー&サスペンスで、スリリングな展開が楽しめます。地元の人間を脇役・エキストとして起用したボストンの下町の描写もリアルで、印象的。原作者同様、ボストン出身であるベン・アフレック監督の並々ならぬ思い入れが感じられます。

 

アカデミー助演女優賞にノミネートされたエイミー・ライアンは、舞台でキャリアを積んだ女優で、トニー賞に二回ノミネートされています。彼女のボストン、ドーチェスター地区に住む低所得者層の母親ぶりは完璧で、ファンと勘違いした警備が撮影初日に彼女を撮影現場に通さないほどでした。彼女は撮影に20分遅れましたが、これでいけると自身をつけたそうです。ボストン訛りも完璧で、ボストン出身のベン・アフレック監督が、ボストンのどの地区出身かと尋ねたほどでした。また、ベテランのモーガン・フリーマンエド・ハリスがしっかりとした演技で、映画を支えています。

 

監督・脚本のベン・アフレックは、1990年代後半に俳優として知名度を上げたものの、2003年にはゴールデンラズベリー賞最低主演男優賞受賞を三本連続で受賞するなど、低迷していました。もともと、マット・デーモンと共同執筆した「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」でアカデミー脚本賞を受賞するなど、制作側の仕事も手がけていたベン・アフレックは、この作品で脚本と初の監督に挑戦、非常に高い評価を得ます。また、同じく監督を務めた2012年公開の「アルゴ」では、第85回アカデミー賞作品賞を受賞しています。俳優としても復活し、「そんな彼なら捨てちゃえば?」、「消されたヘッドライン」、「カンパニー・メン」、「ゴーン・ガール」などの話題作、ヒット作に出演しています。

 

タイトルの「ゴーン・ベイビー・ゴーン」は、「ゴー、ベイビー、ゴー」の陰を踏みながら、イケイケとは全く正反対の「いなくなってしまった」という沈んだ感じを狙ったもので、行方不明になった少女と、彼の元を去る恋人をかけているものと思われます。

動画クリップ(YouTube) 

  • ボストンの下町を描く導入部〜「ゴーン・ベイビー・ゴーン

    PATRICK(V/O):I always believed it was the things you don't choose that makes you who you are. Your city. Your neighborhood. Your family. People here take pride in these things. Like it was something they'd accomplished. The bodies around their souls. The cities wrapped around those. I lived on this block my whole life. Most of these people have. When your job is to find people who are missing, it helps to know where they started. I find the people who started in the cracks, and then fell through. This city can be hard. When I was young, I asked my priest how you could get to heaven and still protect yourself from all the evil in the world. He told me what God said to his children. "You are sheep among wolves, be wise as serpents, yet innocent as doves."

    パトリック(声のみ):僕はこう思っていた。周りの環境こそが人を作る。育った街、近所の住民、家族。この街の人はそれらを自慢する。自分の功績のように。人の体は魂とつながり、街は人とつながっている。僕はずっとこの辺りに住んでいる。ほとんどの住民がそうだ。失踪者の創作を仕事にしている場合、地元を知っているのは有利だ。僕が探すのは荒んだ環境に育ち、姿を消した人。この街は厳しい。昔、神父に尋ねた。どうすれば天国に行けるのか?どうやって世の中の悪から自分を守れば良いのか?神父は神の言葉でこう答えた。「あなた方はオオカミの中の羊。蛇の様に賢く、鳩の様に素直であれ。」

  • ボストンの低所得者層の母親を演じるエイミー・ライアン〜「ゴーン・ベイビー・ゴーン

    PATRICK: Go on. Move your bike!

    BOY: Go fxxk your mother.

    PATRICK: What the...

    BOY: Beat it, sucker!

    PATRICK: Helene, you used to go with Scott Flaherty, didn't you?

    HELENE: How do you know?

    PATRICK: You know, I went to Saint Mark's. I was a freshman when you were a senior. You don't remember me?

    HELENE: No.

    PATRICK: Whatever happened to Scott?

    HELENE: He stabbed a foreign exchange student in the chest. He got life in Walpole. He's a faggot now.

    PATRICK: He was kind of a faggot in high school.

    HELENE: Oh, man. You're terrible. He was cute.

    PATRICK: Well, he kind of wore them tight shorts.

    HELENE: Oh, who's a faggot now? You're dating a faggot.

    PATRICK: So, how did the... How'd the money end up in Chelsea? I thought you're and... You and Ray went home after.

    HELENE: No, we dropped off Amanda and went back to Ray's. But fxxking retarded Ray left his baby rock at my place. You know, right then, I'm like, "I'm gonna drop this motherfxxker. I don't care if he does got a big dick." So we went back to the apartment and Ray was hollering, he was gonna wake up Amanda, she needs her sleep, you know? So, we went back to Ray's, or Ray's mother's. Whatever.

    PATRICK: Yeah?

    HELENE: I don't know where that mother went, but she left all her fxxking cats in there, and it smells like cock.

    PATRICK: And Cheese never contacted you, never left you a note?

    HELENE: No. We didn't hear nothing from Cheese. That's why Ray said, "Don't say shit."

    ANGIE: You didn't think it was worth it for your daughter's sake to tell people what happened? Cheese has your kid. God fxxking knows what he's doing to her.

    HELENE: What am I gonna do? Call Cheese and be like, "You got my daughter? 'Cause I just ripped you off, and I'm just checking."

    ANGIE: Yeah!

    PATRICK: Helene, sit back.

    HELENE: Oh, my God! Oh, I'm gonna call the cops, too, and be like, "You know, just so you know, wanna know I run coke and heroin in case that's irrelevant."

    PATRICK: All right, calm down. Calm down.

    ANGIE: You make me sick.

    PATRICK: What makes you think Ray hasn't spent all the money, Helene?

    HELENE: Nigger, please. I hid it. Pull over.

    パトリック: よけて。

    少年:うるせえんだよ。

    パトリック:なんて・・・。

    少年:出てけ、アホ。

    パトリック:ヘリーン、スコットとつきあっていたよね。

    ヘリーン:何で知ってるの?

    パトリック:セント・マーク高校に行ってたんだ。僕が新入生のとき、あなたは先輩だった。覚えてない?

    ヘリーン:いいや。

    パトリック:スコットはどうしてる?

    ヘリーン:交換留学生の胸を刺してね、ウォルポール刑務所にいるよ。今はホモだよ。

    パトリック:彼は高校の頃からホモっぽかったよね。

    ヘリーン:何言ってんの、嫌な奴ね。彼は格好良かったわよ。

    パトリック:ぴったりした短パンをはいてたよね。

    ヘリーン:あらやだ、ホモは一体だれよ。ホモとデートしてるの?

    パトリック:チェルシーで金をどうしたの?レイと一緒に家に帰ったんでしょ。

    ヘリーン:いいや、アマンダを降ろして、レイの所に戻ったわ。でも馬鹿なレイが私の所に抱っこ紐を忘れたのさ。「こんな馬鹿、降ろしてやる、どんな立派なモノを持ってたって、かまいやしない」って思ったさ。部屋に戻ったら、あいつは大声を出して、アマンダを起こそうとするんだ。アマンダは寝なきゃいけないのにね。そらから、戻ったのさ、レイの所、レイの母親の所か、どっちでもいいや。

    パトリック: それで? ヘリーン: 何処に行ったのかは知らないけど、彼の母親が猫を置き去りにして行ったもんだから匂ってしょうがなかったわ。

    パトリック:チーズからは何の連絡もなかったのか?

    ヘリーン:ないよ。何も言って来なかった。だから、レイに口止めされたわけ。

    アンジー:子供の為に本当の事を打ち明けようとは思わなかったの?アマンダはチーズに誘拐された。何されているかわかったもんじゃない。

    ヘリーン:どうすりゃ良かったの?チーズに電話して、「うちの子、誘拐した?あんたからくすねたんだけど、どうしてるのかと思ってさ」とでも?

    アンジー:ええ。

    パトリック:エリーン、下がって。

    ヘリーン:勘弁してよ。なら、サツにもこう言わなきゃいけなかったね、「関係あるかわからないけど、私、コカインやヘロインの運び屋をやったりしてしてるの」ってさ。

    パトリック:まあ、まあ、落ち着いて。

    アンジー:あきれた人。

    ヘリーン:レイが金を使いきっている可能性はないのか?

    ヘリーン:ないよ。私が隠した。止めて。

関連作品 

ゴーン・ベイビー・ゴーン」の原作本Amazon

  デニス・レヘイン「愛しき者はすべて去りぬ」

 

ベン・アフレックケイシー・アフレックのコラボ作品Amazon

  「チェイシング・エイミー」(1997年)

  「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年)

 

ベン・アフレック監督/脚本/出演作品のDVD(Amazon

  「バッド・チューニング」(1994年)・・・出演

  「恋におちたシェイクスピア」(1998年)・・・出演

  「消されたヘッドライン」(2009年)・・・出演

  「ザ・タウン」(2010年)・・・監督、脚本、出演

  「アルゴ」(2012年)・・・監督、出演

  「ゴーン・ガール」(2014年)・・・出演

 

ケーシー・アフレック出演作品のDVD(Amazon

「誘う女」(1995年)

  「オーシャンズ11」(2011年)

  「ジェシー・ジェームズの暗殺」(2007年)

  「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2016年)

  「A Ghost Story」(2017年、日本未公開)

 

ボストンを舞台にした犯罪映画のDVD(Amaozn)

  「ミスティック・リバー」(2003年)

  「ディパーテッド」(2006年)

  「ザ・タウン」(2010年)

スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)

  「パトリオット・デイ」(2016年)

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