夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「カールじいさんの空飛ぶ家」:偏屈老人と韓国系アメリカ少年の冒険談

カールじいさんの空飛ぶ家」(原題:Up)は、は、2009年公開のアメリカのアニメ映画です。ピクサー・アニメーション・スタジオの制作で、家に風船をつけて空へと舞い上がったおじいさんが体験する奇想天外な旅の模様を描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ピート・ドクター/ボブ・ピーターソン
脚本:ボブ・ピーターソン/ロニー・デル・カルメン
製作:ジョナス・リベラ、総指揮:アンドリュー・スタントン/ジョン・ラセター
出演:カール・フレドリクセン(主人公、無口で頑固な独居老人、愛妻エリーと死別)
   エリー・フレドリクセン(カールの妻、少女時代にカールと出会い意気投合)
   ラッセル・キム(好奇心旺盛なボーイスカウトの少年、肥満体型)
   ダグ(首輪に犬語翻訳機をつけた犬、カールを主人として慕うようになる)
   ケヴィン(伝説の怪鳥、ラッセルと出会い、人にもなつくようになる)
   チャールズ・F・マンツ(30年代に活躍した冒険家、カールやエリーの憧れ)
   アルファ(ドーベルマン、マンツの犬軍団のリーダー)
   ほか

 あらすじ

勇敢な冒険家マンツに憧れる少年カールはある空き家で、同じく冒険好きでマンツに憧れる少女エリーと出会い、意気投合します。成人した二人はやがて結婚し、初めて出会った空き家を新居としました。二人の間に子供はできなかったものの、マンツが消息を絶ったという“伝説の滝”パラダイス・フォールについて語り合い、いつか二人で行こうと約束します。二人は夫婦の時間を楽しみ、長い間共に幸せに暮らしましたが、やがてエリーは病に倒れ、先立ってしまいます・・・。

レビュー・解説 

亡き妻、エリーとの出会いから別れまでのカールじいさんの生涯が、最初の10分間にほとんどセリフなし描かれます。本筋となる冒険談の背景を描く、いわばプロローグですが、短編映画として成立するくらい感動的で素晴らしい出来です。そしてこれと対となる、エピローグが、エンド・クレジットに流れます。この冒険談中心のピクサー作品は子供向けの色合いが強いのですが、プロローグとエピローグは、大人が楽しめる内容となっています。

 

カールじいさんの空飛ぶ家」のプロローグ

 

メインとなる冒険談では、アジア系アメリカ人の少年ラッセルが主人公カールじいさんと冒険を共にします。ピート・ドクター監督は、インタビューで「ラッセルはアジア系アメリカ人であるピクサーのアニメーターをモデルにした」と語っています。ピクサーの ストーリーボード・アーティスト、ピーター・ソンはニューズウィーク韓国版で、「制作初期の段階では、ラッセルのキャラクターはちょっと違っていた。ある日、ピート・ドクター監督が僕に、どんな幼少期だったか、育った街はどんな雰囲気だったかを、根掘り葉掘り聞いてきた。映画の中に自分の幼少期が活かされるなんて、制作期間中、ずっと興奮していた。」と語っていますが、ちょっと違和感があるくらい個性的なキャラクター設定になっています。

 

アジア系アメリカ人を重要なキャラクターに設定した事に関してはアメリカでもいろいろな議論があるようですが、力の衰えた老人にとってマイノリティの方がギブ・アンド・テイクの関係が結びやすい、アングロサクソン系ではなくマイノリティをクローズアップすることにより自由と平等の国であるアメリカを印象づけることができるといった面があるのではないかと思います。この設定は、クリント・イーストウッド監督・主演の「グラン・トリノ」に似ています。いずれも、妻に先立たれ独身、一人暮らし、世の趨勢から取り残され、頑固で偏屈,犬と共に行動し、最終的にアジア系アメリカ人の為に行動を起こしています。「カールじいさんの空飛ぶ家」では、カールじいさんは美しい思い出(妻との思い出が詰まった家)と決別しラッセルと共に生きる事を選択しますが、これは「グラン・トリノ」で愛車をアジア系の少年に相続し、少年の為に命をかけた主人公に重なります。

 

製作総指揮を務めたジョン・ラセターアメリカ合衆国の映画監督、兼アニメーション作家で、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズ、ピクサー・アニメーション・スタジオ両スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーです。1980年代からCGアニメに注目するも、それが原因でディズニーを解雇されますが、スティーブ・ジョブズの下、ピクサーで製作した「トイストーリー」が大ヒット、一躍、世界の注目を集め、ディズニーに返り咲きました。

 

カール・フレドリクセン(主人公、無口で頑固な独居老人、愛妻エリーと死別)

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生前のエリー・フレドリクセン(左、カールの妻、少女時代にカールと出会う)

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ラッセル・キム(好奇心旺盛なボーイスカウトの少年、肥満体型)

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ダグ(首輪に犬語翻訳機をつけた犬、カールを主人として慕うようになる)

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ケヴィン(伝説の怪鳥、ラッセルと出会い、人にもなつくようになる)

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チャールズ・F・マンツ(30年代に活躍した冒険家、カールやエリーの憧れだった)

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アルファ(ドーベルマン、マンツの犬軍団のリーダー)

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関連作品 

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老人を描いた映画

 

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エンド・クレジットが素晴らしい映画

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