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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ワルキューレ」:トム・クルーズ主演で、事実に基づいたヒットラーの暗殺計画とクーデターを描く

ワルキューレ」(原題:Valkyrie)は、2008年公開のアメリカの映画です。1944年に起きたドイツ国防軍将校によるヒトラー暗殺計画「ヴァルキューレ作戦」と、祖国を愛するがゆえに独裁者ヒトラーの暗殺企てその指揮を執った実在の将校シュタウフェンベルク大佐を、ブライアン・シンガー監督、トム・クルーズ主演で描いています。

 

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監督:ブライアン・シンガー

脚本:クリストファー・マッカリー/ネイサン・アレクサンダー

出演:トム・クルーズ(クラウス・フォン・シュタウフェンベルク

   ケネス・ブラナーヘニング・フォン・トレスコウ

   カリス・ファン・ハウテン(ニーナ・フォン・シュタウフェンベルク

   ビル・ナイ(フリードリヒ・オルブリヒト)

   ジェイミー・パーカー(ヴェルナー・フォン・ヘフテン)

   トム・ウィルキンソン(フリードリヒ・フロム)

   デヴィッド・バンバー(アドルフ・ヒトラー

   マティアス・フライホフ(ハインリヒ・ヒムラー

   ハーヴェイ・フリードマン(ヨーゼフ・ゲッベルス

   ほか

 

【あらすじ】

1943年4月、第二次世界大戦下のドイツはすべての戦線で敗退を続け、ドイツの敗色は誰の目にも明らかでした。シュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)は、国家に忠誠を誓う誇り高き軍人ながらも、あくまで最後の勝利を目指して戦争を続けようとするヒトラー総統(デヴィッド・バンバー)による独裁政権に、このままでは愛しき祖国に未来はないと絶望していました。彼は、北アフリカの最前線での無謀な戦乱から部下の命だけは救おうと上官に撤退を進言し、ようやく受け入れらましたが、連合軍の爆撃を浴びてしまいます。生死の境をさまよい、左目、右手、左手薬指小指を失いながらも、シュタウフェンベルクは一命を取りとめます。

彼はドイツに帰国してベルリンの予備軍司令部勤務となります。そこは反ヒトラー派の国防軍将校の巣窟でもあり、それまでベルリンの反ヒトラーグループの軍の中心メンバーであったハンス・オスター大佐がゲシュタポに逮捕された後、新たな活動的なメンバーを探していました。メンバーの一人であるオルブリヒト将軍(ビル・ナイ)は、シュタウフェンベルク大佐に目をつけ、ヒトラー暗殺計画に加わるよう求めます。シュタウフェンベルク大佐は、ドイツを完全な破壊から救うには独裁者を倒すしかないと考え、グループに加わり積極的に計画の具体化を進めます。

彼は、ドイツ再建のためにヒトラー暗殺を企てるレジスタンスの秘密会議に参加しますが、そこで語られる計画は彼にとって物足りないものでした。ある日、自宅でワーグナーを聴いていたシュタウフェンベルクは、ドイツ国内での有事に際して反乱勢力を鎮圧する「ワルキューレ作戦」を利用して、ナチス政権を転覆させる計画を思いつきます。その為には、「ワルキューレ作戦」の文書を改ざんしながらヒトラーから署名を貰うこと、発動権を持つ司令官フロム(トム・ウィルキンソン)を抱き込むことが必要でした。レジスタンスの主要メンバーであるトレスコウ少将(ケネス・ブラナー)、オルブリヒト将軍、ベック参謀総長テレンス・スタンプ)らも賛同を示し、ヒトラー暗殺計画は着々と進行していきます。自ら実行者を志願したシュタウフェンベルクは、最愛の妻ニナ(カリス・ファン・ハウテン)と五人の子供たちを疎開させ、小型爆弾を忍ばせたブリーフケースを持参して、総統大本営「狼の巣」へと向かいます。ヒトラーも参加する作戦会議室にブリーフケースを置き、彼はその場から去ります。10分後、「狼の巣」は爆破され、暗殺計画は成功したかに見えましたが・・・。

 

1944年7月に企てられたヴァルキリー事件(ヒットラー暗殺計画とクーデター)を描いたこの映画は、事実に基づき緻密に描かれているだけではなく、クーデーターを起こしてからの情勢の推移が非常にスリリングに描かれています。予備役を使って総統の膝元のベルリンを制圧するというアイディアも奇想天外ですが、クーデターに際してヒットラー派に与するか、反ヒットラー派に与するか、関係者が迷いながら事態が進展していく様は圧巻です。

 

撮影には実際に事件が起き、処刑が行われたベントラーブロックが使用されています。当初、ドイツ国防省は使用を許可しませんでしたが、トム・クルーズや脚本家でありプロデューサーのクリストファー・マッカリーがアピールして実現したものです。撮影に際しては、スタッフ全員が、毎晩、クラウス・フォン・シュタウフェンベルクに黙祷を捧げました。

 

戦局思わしくなく、ヒットラーもそのカリスマ性に陰りを感じるよう描かれています。事件の9ヶ月後、追いつめられたヒットラーは自殺することになりますが、早く、負けを認めていれば、多くの命を無駄に散らす事もなかったろうにと思います。負けを認める事は、争いを始める事よりはるかに難しいことなのかもしれません。

 

映画は主にシュタウフェンベルク大佐の公的な側面にフォーカスしており、私的な側面はあまり描かれていません。しかしながら、それが却って余韻を残しています。事件後、シュタウフェンベルク伯爵家の財産はすべて接収され、シュタウフェンベルクを名乗ることを禁じられました。ニナは4人の子供たちと切り離され、クラウスの母であるカロリーネとともに強制収容所に収容され、子供たちはナチスの養護施設に送られ、再教育を受けました。ニナは当時身重で後に次女コンスタンツェを出産しています。ヒトラーグループに参加していたクラウスの長兄ベルトルトも、ベンドラー街の国内予備軍司令部でクラウスとともに逮捕され、後に処刑されます。次兄アレクサンダーは事件当時、徴兵されて前線に出ており、ドイツにいませんでしたが、親類縁者として強制収容所へ送られました。

 

1945年4月にバート・ザクサはアメリカ軍により解放され、8月にニナは子供たちと再会します。ニナは2006年にドイツ南部で92歳で死去するまで、天寿を全うしました。長男ベルトルトは、戦後にドイツ連邦軍で陸軍少将になり、三男フランツ=ルートヴィヒはドイツ議会及び欧州議会の議員となりました。次女コンスタンツェは2008年に母ニナの伝記を出版し、ドイツでベストセラーとなっています。映画に描かれていない、こうした話だけでもひとつの映画ができそうです。歴史上の事件の背後には、常にこうした家族の物語があるのでしょう。

 

脚本を書いたのは、「ユージュアル・サスペクツ」でアカデミー脚本賞を受賞したクリストファー・マッカリーで、2002年にドイツのベントラーブロック(事件が起き、関係者が処刑された場所)を訪れたのがきっかけでした。ヒットラーとの会議の際にテーブルの下に爆弾を置いた片目の大佐の背後に、どんな話があったのか惹かれたクリストファー・マッカリーは、古くからの友人で共著者であるネイサン・アレクサンダーに話を持ちかけました。アメリカ人が登場しない第二次大戦下のドイツ軍の映画にハリウッドが興味を示さない事を分かっていた二人は、ゆっくりと脚本を書き上げ、しばらく引き出しの中に入ったままでした。これが、友人であり、「ユージュアル・サスペクツ」、「X-メン」などを監督したブライアン・シンガーの目に止まり、一気に映画化の話が進みました。史実に基づいており、幾分地味な印象もありますが、ヒットラーに反逆した一人の青年将校を通して、史実に奥行きや広がりが感じられる映画です。

 

 

シュタウフェンベルク大佐を演ずるトム・クルーズ

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トレスコウ少将を演ずるケネス・ブラナー

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オルブリヒト将軍を演ずるビル・ナイ

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シュタウフェンベルク大佐の妻を演じるカリス・ファン・ハウテン

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ヒトラーのカリスマ性にも陰りが・・・

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