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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

群像劇、グランドホテル方式、アンサンブル・プレイについて

その他

先の投稿、「やみつきになる群像劇映画のランキング・ベスト10」に関して、群像劇の定義があいまいとのご指摘を頂きました。私自身は「グランドホテル方式」という歴史を踏まえながらも、「アンサンブル・プレイ」のより幅広い解釈で群像劇を捉えていますが、これに関連し、分かる範囲内で調べた事を記述しておきます。

 

【結論】
日本では「グランドホテル方式」で知られる「群像劇」であるが、現在、英語圏では時代にマッチしたより包括的な「アンサンブル・プレイ」という用語が使われており、「グランドホテル方式」という用語はほとんど使われていない。日本ではその訳語として同じ「群像劇」が使われている為、若干の混乱があるようだ。「アンサンブル・プレイ」は「単一のスターではなく、複数の俳優が同等の重要性を持った役を演ずる演劇、映画」というより幅広い意味であるが、「群像劇」が「アンサンブル・プレイ」の訳語として浸透しつつある日本でも「群像劇」をより幅広く解釈し、「グランドホテル方式」はより限定的なものとして位置づけて良いのではないか?

 

 群像劇(アンサンブル・プレイ)を表現したカバー写真の例

(「ラブ・アクチュアリー」のDVD)

 

【用語】
群像劇(Wikipedia)

それぞれの物語を持った複数の登場人物によって進行していく創作作品の総称。グランドホテル方式は映画における群像劇の表現手法。

グランドホテル方式(Wikipedia

映画や小説、演劇における表現技法のことで、「ホテルのような一つの大きな場所に様々な人間模様を持った人々が集まって、そこから物語が展開する」方式。群集劇、群像劇、アンサンブル・プレイとも呼ばれる。

Grand Hotel Theme(Wikipedia

Any dramatic movie following the activities of various people in a large busy place, with some characters' lives overlapping in odd ways and some of them remaining unaware of one another's existence.
(大きく賑やかな場所での様々な人々の振る舞いを描く劇映画で、何人かの登場人物の人生が奇妙に重なるもの。登場人物がお互いにその存在に気づかない場合もある。)

Ensemble Play(Collins English Dictionary – Complete and Unabridged)

Theatre:involving no individual star but several actors whose roles are of equal importance.
Film:involving no individual star but several actors whose roles are of equal importance.
(単一のスターではなく、複数の俳優が同等の重要性を持った役を演ずる演劇、映画)


【解説】
「グランドホテル方式」が映画における群像劇の表現手法のひとつであることは間違いないが、原語である「Grand Hotel Theme」は英語圏では、既にほとんど使われておらず、「アンサンブル・プレイ」(Ensemble Play)が一般的に使われている用語である。しかしながら、「グランドホテル方式」が場所や描き方に関して映画「グランドホテル」の手法そのものを示唆するのに対して、「アンサンブル・プレイ」の視点は複数の俳優が同等の重要性を持った配役にあり、場所、描き方などの制約のない、より包括的な言葉となっている。現在、日本でも「アンサンブル・プレイ」の訳語には「群像劇」が使われており、「群像劇=アンサンブル・プレイ」に変化しつつある。

群像劇において、同等の重要性持つ俳優の人数に関する制約は特にないが、主要キャストが3人の「アモーレス・ペロス」のような作品は小規模な群像劇、時に20人以上にも及ぶロバート・アルトマン監督作品は大規模な群像劇として言及される。音楽用語でのアンサンブルは二人以上の演奏であるが、恋愛映画等、主要キャストが二人の作品を「群像劇」と言及するケースは見当たらない。また、「パルプ・フィクション」のように各編が交差・融合するオムニバス風の作品も群像劇として言及されるが、各編が完全に独立したオムニバス作品が群像劇として言及されるケースは見当たらない。

蛇足ながら、「アンサンブル・プレイ」と似た用語、「アンサンブル・キャスト」は同じ意味で使われることがある一方、「演劇用語でその他大勢、 特にミュージカル公演において主役級の演者に対して役名のない集団で踊ったり歌ったりする登場人物たち」という意味もある。日本のみならず、アメリカでも混用があるようだが、知っておくと便利かも。

 

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