夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「アニー・ホール」:女優を生かすその後のスタイルを決定づけたウディ・アレンの名作

アニー・ホール」(原題:Annie Hall)は、1977年公開のアメリカのロマッティック・コメディ映画です。ウディ・アレン監督、ウディ・アレン/マーシャル・ブリックマン共同脚本の、大都会ニューヨークに生きる男と女の出会いと別れをコミカルに描くラブ・ストーリーは、ウディ・アレン作品のなかで最も人気があるもののひとつです。ウディ・アレンはコメディ作家として知られていましたが、「アニー・ホール」の監督は彼にとって大きな転機となり、作品にまじめさが加わった他、長い会話や、長回し、陽気さと傷心にテーマをおくなどの、現在までに至るアレン映画のスタイルを確立した作品です。第50回アカデミー賞で作品賞、主演女優賞(ダイアン・キートン)、監督賞(ウディ・アレン)、脚本賞ウディ・アレン/マーシャル・ブリックマン)を受賞、主演男優賞ウディ・アレン)にノミネートされた作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン/マーシャル・ブリックマン
出演:ウディ・アレン(アルビー・シンガー)
   ダイアン・キートンアニー・ホール
   トニー・ロバーツ(ロブ )
   キャロル・ケイン(アリソン・ポーチニック)
   ポール・サイモン(トニー・レイシー)
   シェリー・デュヴァル(パム)
   ジャネット・マーゴリン(ロビン)
   コリーン・デューハースト(ミセス・ホール)
   ほか

あらすじ

ニューヨークに住むユダヤ系のアルビー(ウディ・アレン)のように大都会では少々変わり者でも生きていけます。彼はテレビやナイトクラブのトークショーで稼ぐ漫談芸人で、歳の頃は40、離婚歴1回のド近眼メガネ男です。風采の上がらない小男ですが、なぜか女の子には人気があり、彼の周りにはいつも女の子がウロチョロしています。そんな彼がある日、友人のTVディレクターのロブ(トニー・ロバーツ)達とテニスに行って、一人の美人と出会います。会話もユニークな彼女の名は、アニー・ホールダイアン・キートン)。屈託のない童女のような彼女に出会ってからアルビーが変わり、アニーとのデートが日課の一つになりました。同棲生活に入ったのはそれから間もなくです。アルビーは死に取りつかれていますが、明るい性格のアニー・ホールとの関係を保とうとします。二人の数年にわたる関係が語られ、それぞれの過去にあった様々な出来事を途中に挟みながら進行します(アニーはアルビーが子供のころの家族を「見る」ことができ、アルビーも同様にアニーの過去の恋人とのやりとりを観察します)。彼はブルックリンで育ち、彼の家はコニーアイランドのローラーコースターの下にあることがアルビーの回想場面からわかります。のぼせあがっていた二人も時がたつにつれて、お互いのアラが目についてきました。アルビーの周りには、あいかわらずTV局の女ロビン(ジャネット・マーゴリン)や、アリソン(キャロル・ケーン)がいて、アニーは気になり、アルビーもアニーのつかみどころのない生き方がわかりません。行きづまった二人は精神分析医の所に行き、溝は埋まったかに見えましたが、アニーがいつものようにクラブで歌っていると、プロ歌手トニー(ポール・サイモン)が彼女の歌をほめ、カリフォルニアに来るようにすすめます。彼女は有頂天になり、精神状態も全快へと向かいますが、アルビーは良くならず、アニーとトニー、果てはロブの仲まで疑い出します。口論と仲直りが何度も続き、自分たちは相性が悪いし、別れるだろうと二人は悟ります。二人は別居を決意し、アニーはカリフォルニアのトニーの元に引っ越してしまいます。一方、残されたアルビーは寂寥感に襲われ、未だに彼女を愛していることに気付きます。アルビーはアニーの後を追ってフォルニアに行き、ニューヨークの自分の元に戻ってくるよう説得しますが、失敗します。後に、彼らは友人として良好な関係で再会し、二人にはすでに別の恋人がいます。愛と人の関係はしばしば痛みをともない、複雑なものにもかかわらず、誰もが必要としているのだと思いを巡らせながら、アルビーの映画は終わります。

レビュー・解説 

ウディ・アレン扮するアルビーの屁理屈は横に置いて、何よりも、ダイアン・キートン演ずるアニーの屈託のない魅力が炸裂する映画です(特にロブスターのシーンなどとても演技と思えず、ウディ・アレンダイアン・キートンが楽しんでいるかのように見えます)。名作と言われる映画でプロットもしっかりしており、安心して観ることができます。タイトル「アニー・ホール」のホールは、ダイアン・キートンの本名の姓、アニーはダイアンの愛称で、まさにダイアン・キートンの為の映画と言っても良いかという印象です。

 

かつてウディ・アレンダイアン・キートンは交際していたことから、この映画は二人のプライベートな関係の顛末に基づいたものかと思いましたが、ウディ・アレンはこれを否定しています。当初、この映画は、殺人事件のミステリー映画として考えられ、ロマンスはサブ・プロットでしたが、脚本の改版を重ねる中で、ウディ・アレンは殺人事件の部分もボツにし、ロマンス一本に絞り込みました(殺人ミステリー部分は後に「マンハッタン殺人ミステリー」として、ダイアン・キートンの主演で公開されました)。タイトルも、当初は「アンヘドニア」(anhedonia:無快楽症)でしたが、わかりにくいことからボツになり、第二選択で「アニー・ホール」となりました。

 

ダイアン・キートンウディ・アレンに初めて会ったのは1968年後半で、もともとウディ・アレンのファンだったというダイアン・キートンは、

すぐに好きになってしまったの。何とかして彼を落とそうとした。魅力的な女性だと思われたくて努力したわ。

と当時を振り返って語っています。ウディ・アレンダイアン・キートンに恋して、交際は5年ほど続きました。

 

この映画を製作した頃は二人の関係は既に終わっていたのですが、ウディ・アレンは、

それまではいつも男性の視点で脚本を書いていた。だがダイアン・キートンに出会い、彼女の目を通してさまざまな発見があった。女性のために書き始めたら女性ならではの視点を学ぶことができ、やがてその方が面白く感じるようになったんだ。

と語っており、また、彼女の私服を持ち込んでの撮影にも、

彼女の好きにさせて。彼女は天才なんだから。

ダイアン・キートンに全幅の信頼を寄せ、本作はファッション史にも残る名作となりました。ウディ・アレン扮するアルビーの屁理屈が伴奏のようになり、ダイアン・キートン扮するアニーの屈託のない旋律が自由に踊るかの印象は、こうしたウディ・アレンのスタンスの反映と思われます。

 

アニー・ホール」以降も、ウディ・アレンダイアン・キートンは、「インテリア」(1978)、「マンハッタン」(1979)、「ラジオ・デイズ」(1987)、「マンハッタン殺人ミステリー」(1993)とタッグを組んでおり、ダイアン・キートン

世界で最も魅力的な179人の女優がウディ・アレン作品に出演したのは、彼女たちがそうしたいと望んだからです。ウディが描く女性はカテゴリーで分けることなどできないのです。

と女優にとってウディ・アレンとの仕事がいかに魅力的であるかを力説しています。また近年、ウディの「養女性的虐待スキャンダル」が再燃した際も、

わたしの人生を見てもらえればわかるけれど、彼はわたしにチャンスを与えてくれた。それはウディ・アレンだからこそできたこと。彼は天才よ。

ウディ・アレンを擁護しています。

 

ウディ・アレンが言う様に「アニー・ホール」が彼とダイアン・キートンのプライベートな出来事の顛末に基づいてものではないにせよ、アルビーがウディ・アレンの分身であると同様、アニーがダイアン・キートンの分身であることは疑う余地がなく、そして何よりも「アニー・ホール」が二人の過去ではなく、信頼に基づいた二人の将来の関係のあり方を決定づけたことは賞賛に値します。

動画クリップ(YouTube

ロブスターのシーン〜「アニー・ホール

 

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関連作品 

ウディ・アレンの作品、人物像を描いたドキュメンタリーのDVD(Amazon

「映画と恋とウディ・アレン」(2011年)

 

ウィディ・アレン監督作品

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