夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」:愛する人を失った悲しみを超えるものは?

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(原題: Extremely Loud & Incredibly Close)は、ジョナサン・サフラン・フォアによる同名小説に基づく、2011年公開のアメリカのドラマ映画です。

 

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監督: スティーブン・ダルドリー

脚本: エリック・ロス

原作: ジョナサン・サフラン・フォア

出演: トーマス・ホーン(オスカー・シェル)

    トム・ハンクス(トーマス・シェル)

    サンドラ・ブロック(リンダ・シェル)

    マックス・フォン・シドー(間借り人)ほか

 

宝石店を営むトーマス(トム・ハンクス)は、アスペルガー症候群の疑いのある11歳の息子オスカー(トーマス・ホーン)と一緒に調査探検という遊びをやり、オスカーに人と関わることを経験させていました。トーマスはニューヨークに幻の第6区があったとオスカーに話し、オスカーは手がかりの捜索を始めましたが、ニューヨークを襲った同時多発テロでトーマスを失い、ショックを受けたオスカーは調査探検を中断します。父の死から1年後、オスカーはクローゼットで父が遺した鍵を見つけ、封筒に書かれた「ブラック」という人物を探すため、ニューヨーク5区をまたぐ調査探検を再開しました・・・。

 

オスカーを演じたトーマス・ホーンの演技には目を見張ります。トム・ハンクスサンドラ・ブロックマックス・フォン・シドーも期待を裏切らず、大いに楽しめます。タイトル「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の意味は必ずしも明確ではではありませんが、アスペルガー症候群に不安を引き起こす雑音の暗喩と思われます。そんなオスカーの父母は、オスカーに道を示し、オスカーが歩むのを見守ります。オスカーは愛する人を失い深い悲しみに襲われますが、その悲しみを乗り越えさせるのも愛です。

 

9.11の扱いは微妙かもしれません。9.11で親を失った子供も少なくないのですが、それを描くのであればこの映画のように回りくどいことをせずに、もっとストレートに描いた方が良いのではないかという意見もあるようです。アメリカ国民にとって9.11は癒えることのない傷かもしれませんし、また、映画としても9.11に対する明確なスタンスを求められているのかもしれませんが、アスペルガー症候群や9.11をモチーフに家族や人々の愛を巧みに描いている点は評価されてしかるべきではないかと、私は考えています。

 

オスカーを演じたトーマス・ホーンは、クイズ番組に出演していたところをプロデューサーの目にとまり、抜擢されました。彼はそれまで、演技に興味も経験もありませんでした。トム・ハンクスサンドラ・ブロックのキャスティングは早々に決まりました。両名は「信頼できるセレブ」の1位、2位に選ばれるなど、アメリカの良き父母として好感度を得るには適切な配役だったのではないかと思います。

 

間借り人を演じたマックス・フォン・シドーに触れずにおくことはできません。彼は「人生はビギナーズ」の出演を辞退して、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」に臨み、82歳でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。最年長記録には50日ほど足りませんでしたが、それでも見事なものです。彼は、発話障害の老人の役でしたが、言葉ではなく、表情でもの言う、実に素晴らしい演技でした。

 

 マックス・フォン・シドー〜「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

 

ちなみに最初のシナリオでは老人の発話障害は直るとされていましたが、「これは老人ではなくオスカーの映画である」というマックス・フォン・シドーの提案により、シナリオが書き換えられています。「人生はビギナーズ」に出演したクリストファー・プラマーも同じ助演男優賞にノミネートされ、結局、賞はプラマーに行ってしまったのが残念ですが、プラマーもマックス・フォン・シドーと同じくらい高齢、いずれにせよ、立派としか言いようがありません。

 

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、9.11を扱ってアカデミー賞にノミネートされた2本目の映画です。1本目は2006年公開の「ユナイテッド93」でした。2006年公開の「ワールド・トレード・センター」と2002年公開の「11'09''01/セプテンバー11」はノミネートされませんでした。また、サンドラ・ブロックは、9.11当日に家族と一緒にニューヨークにおり、二機目のUA175便がワールド・トレード・センターに突っ込むのを目撃しています。スティーブン・ダルドリー監督は、映画の公開を10周年の2011年9月11日に合わせようとしましたが、これは実現しませんでした。

 

アメリカの9.11の傷が癒えるのはいつの日でしょうか?アメリカも、オスカーの様に誰かの愛を必要としているのかもしれません。

 

オスカーが何度が訪れるセントラルパーク(Google Street View)

 

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