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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

ケン・ローチ監督:市場経済の発展に伴い失業や格差が拡大する中、一貫して労働者階級を描き、リアルで自然主義的作風で知られる名監督

監督

ケン・ローチ (1936年〜) は、一貫して労働者階級に焦点を当てた作品を製作し続ける、イングランド生まれの映画監督・脚本家です。1967年に映画監督デビュー、第二作目の「ケス」(1969年)で英国アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされますが、社会問題への市民の関心の低さや政治的な検閲が原因となり、1970年代から1980年代にかけて長い不遇時代を過ごします。

 

SWEET SIXTEEN」(2002年)
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第二次世界大戦後のイギリスでは、主に労働党政権によっていわゆる「ゆりかごから墓場まで」と言われる高福祉政策がとられてきましたが、規制や国営企業による産業保護政策が国際競争力を低下させ、経済成長が停滞、「英国病」と呼ばれる状況に至ります。1979年にマーガレット・サッチャーを首班とする保守党政権が誕生すると、国営の水道、電気、ガス、通信、鉄道、航空などの事業を民営化、経済に対する規制緩和を進めます。これが、イギリスの不況の長期化と企業淘汰による失業率の上昇、格差拡大を招き、1979-1887年の雇用削減率は平均34%、鉄鋼では90%に達します。失業率は第二次世界大戦以降最悪を記録、1973年には3%台であった失業率は、1983年には11%台にまで悪化し、その後も高い値が続きました。格差も拡大し、サッチャーが政権についた時点で、平均所得の60%未満で生活する層は約13%、ジニ係数は約25でしたが、1990年には平均所得の60%未満の層は約22%、ジニ係数は約34まで上昇しました。同様の傾向は、フランス、イタリアなどヨーロッパ大陸にも見られ、失業率が高止まりし、格差が拡大しました。


そんな中、1990年代に入り、ケン・ローチ監督は労働者階級や移民を描いた作品を立て続けに発表、「ブラック・アジェンダ/隠された真相」(1990年)と「レイニング・ストーンズ」(1993年)がカンヌ国際映画祭審査員賞、「リフ・ラフ」(1991年)と「大地と自由」(1995年)がヨーロッパ映画賞作品賞を受賞し、国際的に評価されるようになります。2006年、「麦の穂をゆらす風」が第59回カンヌ国際映画祭に出品され、69歳、13回目の出品で初のパルム・ドールを受賞します。さらに2016年、第69回カンヌ国際映画祭で障害者差別を背景に雇用支援金(英国の障害年金に相当)の現状を描いた「わたしは、ダニエル・ブレイク」2度目のパルムドールを受賞しています。

ケン・ローチ監督は左翼を自認し、一貫して労働者階級や移民たちの日常を描きます。俳優の自然な演技を引き出し、リアルな状況を作り出すことを重視し、経験豊富な俳優よりも若い才能を好む傾向にあり、シーンは時系列で撮影、時には即興に委ねたり、脚本に意図的に結末を執筆しないなど、リアルで自然主義的な作風で知られています。 

 

主なケン・ローチ監督作品のDVD(Amazon

  「ケス」(1969年)

  「リフ・ラフ」(1991年)

  「カルラの歌」(1996年)

  「マイ・ネーム・イズ・ジョー」(1998年)

  「ナビゲーター ある鉄道員の物語」(2001年)

  「SWEET SIXTEEN」(2002年)

  「やさしくキスをして」(2004年)

  「麦の穂をゆらす風」(2006年)

  「この自由な世界で」(2007年)

  「エリックを探して」(2009年)

「天使の分け前」(2012年)

  「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2016年)

 

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