夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」:殺人、流血、恐怖の都市伝説を激しい憎悪と狂気のドラマに昇華したミュージカル

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(原題:Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street)は、2007年公開のイギリス・アメリカのミュージカル映画です。スティーヴン・ソンドハイム/ヒュー・ウィーラーが手掛けたブロードウェイの傑作ミュージカル「スウィーニー・トッド」の映画化作品で、ティム・バートン監督、 ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーターら出演で、実在したとも言われる怪奇小説の連続殺人犯、理髪師スウィーニー・トッドの復讐劇をスリリングに、時にコミカルに描いています。

 

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スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(Amazon

 

目次

スタッフ・キャスト

監督:ティム・バートン
脚本:ジョン・ローガン
原作:スティーヴン・ソンドハイム/ヒュー・ウィーラー
出演:ジョニー・デップスウィーニー・トッド/ベンジャミン・バーカー)
   ヘレナ・ボナム=カーター(ミセス・ラベット)
   アラン・リックマン(ターピン判事)
   ティモシー・スポール(役人バムフォード)
   サシャ・バロン・コーエン(アドルフォ・ピレリ/デイビー・コリンズ)
   エドワード・サンダース(トビー)
   ジェイミー・キャンベル・バウアー(アンソニー・ホープ
   ローラ・ミシェル・ケリー(ルーシー・バーカー/物乞いの女)
   ジェイン・ワイズナー(ジョアンナ・バーカー)
   ほか

あらすじ

19世紀のロンドン。フリート街にベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)が帰って来ます。かつて街の理髪師として妻と娘に囲まれ幸福な日々を過ごしていた彼は、妻に横恋慕した悪徳判事ターピン(アラン・リックマン)の陰謀によって無実の罪を着せられ流刑となります。命からがら脱獄し、アンソニーという船乗りに助けられた彼は、風貌を変えて「スウィーニー・トッド」と名乗り、15年ぶりに舞い戻ったのです。彼はかつて家族と共に暮らしていた家の大家で、通称「ロンドン一不味いパイ屋」の女主人ミセス・ラベット(ヘレナ・ボトム=カーター)と再会しますが、彼を待っていた事実は残酷でした。愛する妻は毒をあおり、娘はターピンの養女となって幽閉されているという、残された家族がたどった悲惨な運命を聞かされて怒り狂ったトッドは、ターピンへの復讐を誓います。ミセス・ラベットと手を組んだトッドは、再びパイ屋の2階に理髪店を開業します・・・。

レビュー・解説

カミソリによる殺人、流血のシーン、焼殺シーン、加えて食人に関する描写があるなど、下手をすればえげつない都市伝説ホラー劇になりかねませんが、ティム・バートン監督のアーティスティックな演出と、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーターらの卓越したパフォーマンスが、妻子を奪われた男の行き場を失った激しい憎悪と狂気の情念をドラマティックで芸術性の高いミュージカルに昇華させています。

 

スウィーニー・トッドは、大衆向け恐怖小説「The String of Pearls」を初めとする19世紀中頃のイギリスの様々な怪奇小説に登場する架空の連続殺人者で、ロンドンのフリート街に理髪店を構える理髪師です。トッドの理髪店の椅子には仕掛けがしてあり、剃刀で裕福な人物の喉を掻っ切り、地下に落として殺害、身に着けていた金品を奪い取ります。物語のバージョンによっては、パイ屋の女主人が死体を解体してトッドの犯罪を隠匿し、その肉をミートパイに混ぜて焼き、何も知らない客に売りさばきます。この話はヴィクトリア時代のメロドラマやロンドンの都市伝説の定番となり、語り継がれ、トニー賞を受賞したスティーヴン・ソンドハイム/ヒュー・ウィーラーのブロードウェイ・ミュージカルによって最も知られています。出所が明確な都市伝説ですが、トッドのモデルが実在したという説もあり、歴史研究家の間で議論されています。元々は冷酷な殺人鬼として描かれたスウィーニー・トッドですが、本作では人間的な側面から描かれています。

モンスターが出てくる映画のほとんどはホラー映画じゃないんだ。彼らは除け者なんだ。私は「フランケンシュタイン」や「キングコング」や「大アマゾンの半魚人」を悪者として見たことがない。彼らは悪者なんかじゃない。本当に悪いのは常に人間なんだ。着包みの彼らがB級映画で殺されるのを見る度に泣きそうになったよ。(ティム・バートン監督)

 

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」のポスター(Amazon

 

バートン監督は、同じ俳優を繰り返して起用する傾向があり、本作出演のジョニー・デップは8回、ヘレナ・ボナム=カーターは7回、彼の監督作品に出演しています。*3 ジョニー・デップは、テレビドラマシリーズ「21 ジャンプ・ストリート」(1987〜1990年)でアイドル俳優として有名になりました。メイクの濃いティム・バートン作品は、本人が嫌っていたアイドル俳優のイメージを払拭し、デップが「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(2003年)、「ネバーランド」(2004年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされるほどに成長するのに、大きな役割を果たしました。また、「鳩の翼」(1997年)でアカデミー主演女優賞に、「英国王のスピーチ」(2010年)でアカデミー助演女優賞にそれぞれノミネートされているヘレナ・ボナム=カーターは、確実に作品のクォリティを上げています。彼女は私生活でもバートン監督の良きパートナーであり、二人の間に一男一女をもうけていますが、残念ながら2014年に関係を解消しています。また、この二人のメインキャストだけではなく、アラン・リックマンティモシー・スポールサシャ・バロン・コーエンと言った強力な助演陣も本作の魅力となっています。

 

ジョニー・デップスウィーニー・トッド/ベンジャミン・バーカー)

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ヘレナ・ボナム=カーター(ミセス・ラベット)

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アラン・リックマン(ターピン判事)

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ティモシー・スポール(役人バムフォード)

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サシャ・バロン・コーエン(アドルフォ・ピレリ/デイビー・コリンズ)

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自ら手がけた舞台作品を守る傾向が強いことで有名な作曲者のスティーヴン・ソンドハイムは、作品の映画化に長く抵抗していましたが、ティム・バートン監督が興味を示した際に、監督の作品へのヴィジョンが気に入り、キャスティングの承認権を条件に態度を軟化しました。ジョニー・デップ以外の主役を考えていなかったバートン監督に対して、ソンドハイムはデップのヴォーカルは「ロック志向」ではないかと恐れましたが(デップはバンドで音楽活動をしている)、オーディションを経てソンドハイムはデップを承認しました。ボナム=カーターは、バートン監督の内輪びいきではないかという噂を払拭するかのように、1ダース以上のオーッディション・テープをソンドハイムに送り、彼女の歌に感銘を受けたソンドハイムは即座に承認を出したと言います。出演者の内、ミュージカルの経験がある者はごく一部でしたが、本作が見事にまとまっているのは、バートン監督の求心力と力量によるものでしょう。ソンドハイムは、本作が映画化を許した唯一の作品だったと後に語っています。

サウンドトラック

 ・・・リンク先で試聴できます。

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」のサウンドトラック(Amazon

1. オープニング・タイトル
2. ロンドンのような街はない
3. ロンドンで最悪のパイ
4. プアー・シング
5. 友だち
6. 緑の鳥
7. ジョアンナ
8. ピレリの万能薬
9. コンテスト
10. ウェイト
11. 美しい女たち
12. 救世主
13. リトル・プリースト
14. ジョアンナ
15. ゴッド、ザッツ・グッド!
16. 海辺にて
17. 僕がついている限り

撮影地(グーグルマップ)

撮影は、イギリスのパインウッド・スタジオで行われています。

 

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(Amazon

関連作品

ティム・バートン監督xジョニー・デップxヘレナ・ボナム=カーターのコラボ作品のDVD(Amazon

  「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)

  「ティム・バートンのコープスブライド」(2005年)

  「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(2007年)

    「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年)

  「ダーク・シャドウ」(2012年)

 

ティム・バートン監督作品 

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公開年 作品名 ジョニー
・デップ
ヘレナ・ボナム
=カーター
1990年 シザーハンズ  
1994年 エド・ウッド  
1999年 スリーピー・ホロウ  
2000年 PLANET OF THE APES 猿の惑星  
2003年 ビッグ・フィッシュ  
2005年 チャーリーとチョコレート工場
2005年 ティム・バートン
コープス・ブライド

(声の出演)

(声の出演)
2007年 ウィニー・トッド
フリート街の悪魔の理髪師
2010年 アリス・イン・ワンダーランド
2012年 ダーク・シャドウ