夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ウォールフラワー」:愛する人たちと過ごす時間は無限

「ウォールフラワー」(原題: The Perks of Being a Wallflower)は、2012年公開のアメリカ映画です。スティーブン・チョボスキー著「ウォールフラワー」を原作とし、著者自身が監督を務め、周囲に馴染めず無為な日々を送る内気な高校生の青春が、一組の兄妹との出会いをきっかけに輝き始める様と、そのほろ苦い顛末を瑞々しも爽やかに綴っています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督: スティーブン・チョボスキー
脚本: スティーブン・チョボスキー
原作: スティーブン・チョボスキー「ウォールフラワー」
出演: ローガン・ラーマン(チャーリー 、トラウマを抱えた高校1年生)
    エマ・ワトソン(サム、最上級生、チャーリーの憧れの美少女)
    エズラ・ミラー(パトリック、最上級生、サムの義理の兄、ゲイ)
    メイ・ホイットマン(メアリー・エリザベス)
    (最上級生、チャーリーの初めての彼女)
    ポール・ラッド(アンダーソン先生、チャーリーの国語の教師、劇作家。
    ほか

あらすじ 

高校デビューに失敗し、友だちのいないまま灰色の高校生活を送る羽目になった内気な少年チャーリーは、パーティ会場でも一人で壁際に佇む「壁の花」状態でした。ある日、彼は勇気を出して、フットボールの観客席で隣に座る陽気な上級生パトリックに声を掛けると、意外にもパトリックは気さくに接してくれ、奔放な恋愛を重ねる義理の妹サムも紹介します。こうして彼らの仲間に迎えられたチャーリーは、それまでとは見違えるように充実した高校生活を送るようになりましたが・・・。

レビュー・解説 

J.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の再来と言われるこの物語は、若さが抱える様々な問題を描きながらも、瑞々しく爽やかな印象を残します。何らかの問題を抱え、傷ついてる彼らは、お互いを受け入れ、愛し合いながら、人生のいばらの道を進みます。しなやかな純粋さと共感の中で彼らは無限となり、それが成長の痛みを癒すさまに、大人の世界では感じ得ない爽やかさが感じるのかもしれません。

 

「つらい時期を経験し、自分自身のために答えが必要だった」という個人的な動機で書かれた原作は、1999年、チョボスキー監督が29歳のときに出版され、多くの人がそれに共感したことを彼はアマゾンのレビューで知りました。当初、ジョン・ヒューズ監督が映画化権を獲得し、自ら脚本を書き、チャーリーにシャイア・ラブーフ、サムにクリスティン・ダンスト、パトリックにパトリック・フュジットを起用して、ダーク・コメディに仕上げるつもりでしたが、ジョン・ヒューズ監督の急死によりプロジェクトが失速しました。彼の脚本が未完成だった為、インディペンデント系映画として原作者のスティーブン・チョボスキーが脚本と監督を務めることになりました。

 

「若いキャラクターの物語をつづるのには大人の視点が必要だった。言い換えれば、自分自身がハッピーエンドを見つけることができなければ、この映画をいい形で作ることができないと感じていた。僕は、妻と出会ったことでハッピーエンディングを迎えることができた。それに映画監督には、スタッフやキャストを引っ張っていくリーダーシップが求められる。だから、もう少し人として経験を積みたかった。」と、映画化まで13年かかった理由をスティーブン・チョボスキー監督は明かしています。問題を抱える若もの達を描きながらも、これをゆるく明るい光で照らすのは、監督の信念によるものでしょう。

 

スティーブン・チョボスキー監督のように、原作の小説を書き、脚本を書き、映画の監督を務めるのは珍しいケースです。よく、原作と映画の違いが議論になりますが、同一人物が執筆・監督した「ウォールフラワー」は議論するのに面白いケースになりそうです。スティーブン・チョボスキー監督も映像化に当たって、活字と映像の差を埋めることに苦労しています。「今回の物語はとてもエモーショナルな内容だ。実は、映画というのは本に比べて感情の限界が狭いんだ。つまり、観客は映像をダイレクトに感じることができてしまう。だから映画化には、小説に比べて抑えて表現していく必要があった。」と語っています。原作は一人称の手紙形式で映画とはだいぶ異なる印象ですが、映画製作に当たっては、プロットのみならず「映像がどう見えるのか」をかなり意識していることが随所に伺われます。

 

ハリー・ポッター」シリーズ卒業後、最初の大きな役として注目されたエマ・ワトソンですが、スティーブン・チョボスキー監督は、2009年公開の「ハリーポッターと謎のプリンス」で、彼女がロンに失恋しハリーが慰めるシーンを観て、エマ・ワトソンをサム役に起用したいと思いました。「彼女は私の心を打ち砕いた。彼女が泣いているのを見て、エマ・ワトソンはサムが持つ弱さのすべてを持っていると感じた。」と、スティーブン・チョボスキー監督は語っています。エマ・ワトソンは、「あなたは、もっとも大切な役の一つを演ずるだけではなく、人生の夏を体験し、何人かの親友に出会うことになる。」とスティーブン・チョボスキー監督に言われ、実際にその通りになったと語っています。また、彼女はキスーシーンや下着姿のシーンも熱演していますが、自分ではとても観れないとも語っています。

 

「ウォールフラワー」は、最初「10代の若者による薬物摂取と飲酒、いくつかの性的言及」のため「R」に指定されましたが、のちに「大人向けの薬物摂取と飲酒、言葉による性的内容、および暴力的シーンが全て十代の若者によるもの」のため「PG-13」指定となりました。原作本では、パトリックとメアリー・エリザベスはチェーン・スモーカーで、チャーリーの喫煙シーンもありますが、映画ではすべて割愛されています。恐らく「PG-13」指定をスコアを稼ぐためと思われます。なお、原作本は、アメリカ図書館協会が選ぶ「2009年度最も推奨する本」でトップ10の中で第3位を獲得しています。推奨理由は書籍に込められた、薬物、同性愛、セックスと自殺に対する精神的療法の為です。

印象的なシーン

トンネルのシーン〜「ウォール・フラワー」

SAM: Welcome to the island of misfit toys.
SAM: My God. What is this song!?
PATRICK: Right? I have no idea.
SAM: Have you heard it before?
CHARLIE: Never.
SAM: Wait! Let's go through the tunnel!
PATRICK: Sam, it's freezing.
SAM: Patrick, it's the perfect song!
PATRICK: No. Mama Patrick says no.
SAM: Patrick, it's Sam. It's Sam talking to you, I'm begging you to drive me--
PATRICK: Alright! I concede!
CHARLIE: What is she doing?
PATRICK: Don't worry. She does it all the time.
SAM: Turn it up!
PATRICK: You got it, your highness.
PATRICK: What?
CHARLIE: I feel infinite.

サム:はみ出し者の島へようこそ。
サム:この曲、なに?
パトリック:知らない。
サム:聞いた事ある?
チャーリー:ない。
サム:トンネルを通って。
パトリック:寒いよ。
サム:完璧な曲よ。
パトリック:サムちゃん、ダメよ。
サム:パトリック。サムのお願い。
パトリック:負けた。
チャーリー:何事?
パトリック:大丈夫、いつもなんだ。
サム:音を大きくして。
パトリック:はい、お姫様。
パトリック:何だ?
チャーリー:無限を感じる。

流れている曲は、デビッド・ボウイの「ヒーロー」*3

♪We can be heroes just for one day 〜

♪誰だって、一日だけならヒーローになれる〜

 

なぜかいい恋人に恵まれないサムを不思議に思ったチャーリーは、恩師のアンダーソン先生に尋ねます。

 

CHARLIE: Mr. Anderson... can I ask you something?
BILL: Yeah.
CHARLIE: Why do nice people choose the wrong people to date?
BILL: Are we talking about anyone specific?
(Charlie nods.)
(Bill looks straight at him. Not preaching. Coming from a history of personal experience and pain. )
BILL: We accept the love we think we deserve.
CHARLIE: Can we make them know they deserve more?
BILL: We can try.
(Charlie smiles.)

 チャーリー:先生、お聞きしてもいいですか?
ビル:うん。
チャーリー:何故、優しい人は間違った相手とデートするんですか?
ビル:特定の個人の話か?
(チャーリー、うなずく)
(ビル、チャーリーをまっすぐに見る、諭す口調ではなく、自分自身の経験と痛みを思い出すように)
ビル:自分に見合うのと思うからだ。
チャーリー:本人の価値を教えるには?
ビル:試せばいい。

 

後に、チャーリーは、同じ問いをサム自身から受けます。

 

SAM: I had lunch with Craig today.
Charlie: Yeah?
SAM: He said he was sorry, and that I was right to break up with him. But I'm driving away, and I just felt so small. Just asking myself why do I and everyone I love pick people who treat us like we're nothing?
CHARLIE: We accept the love we think we deserve.

サム:クレイグと会った。
チャーリー:ほんと?
サム:彼、謝っていた、「俺と分かれて正解だって。」私は帰り、運転しながら、情けなかった。自問したわ、何故、私や私の愛する人たちはひどい扱いをする人を選ぶの?
チャーリー:自分に見合うと思うから。

 

何気なく答えたチャーリですが、この後、話は思わぬ展開に・・・。

 

キスシーン〜「ウォール・フラワー」

SAM What's wrong, Charlie?
CHARLIE Oh, ah... nothing.

サム:どうしたの?
チャーリー:何でもない。

 

これはおまけ。

ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショーのシーン〜「ウォールフラワー」

 

最後に、この映画で最も印象に残ったシーンです。

 

僕らは無限〜「ウォールフラワー」

SAM: I found the tunnel song. Let's drive.'
CHARLIE: (Voice only)
I don't know if I will have the time to write any more letters because I might be too busy trying to participate. So, if this does end up being the last letter, I just want you to know that I was in a bad place before I started high school. And you helped me.
Even if you didn't know what I was talking about. Or know someone who's gone through it. It made me not feel alone.
Because I know there are people who say all of these things don't happen. And there are people who forget what it's like to be 16 when they turn 17.
I know these will all be stories someday. And our pictures will become old photographs. And we'll all become somebody's mom or dad. But right now, these moments are not stories.
This is happening. I am here. And I am looking at her. And she is so beautiful.
I can see it. This one moment when you know you're not a sad story. You are alive. And as you stand up and see the lights on buildings and everything that makes you wonder. And you are listening to that song on that drive with the people you love most in this world.
And in this moment, I swear...
... we are infinite.

サム:トンネルの歌を見つけたの。行きましょう。
チャーリー:(語り)
もう手紙は書けないかも、社会参加するのに忙しくなるから。だから、伝えておくよ。高校に入る直前、体調が悪かった僕は、君に救われた。
たとえ君が僕の話を理解できなかったとしても、一人じゃないと思えた。
世の中には僕の問題を仮病という人や、17歳になるってことがどんなか忘れた人もいる。
高校生活もいつか思い出に変わり、写真も色あせる。いつか、親にもなるだろう。でも今だけは、思い出じゃない現在進行形だ。
今、僕はここにいて彼女を見ている、美しい彼女を。
僕にはわかる。この瞬間だけは悲しみも消えて、僕は生きている。立ち上がり、ビルの明かりや心震えるものを眺めながら、世界で最も愛する人たちとあの曲を聞いている。
僕は誓って言う、この瞬間こそ・・・、
・・・僕らは無限だ。

サウンド・トラック 

ウォールフラワーのサウンドトラック盤(リンク先で試聴できます)

 
The Perks Of Being A Wallflower(Original Motion Picture Soundtrack)(Amazon 

関連作品 

ウォールフラワーの原作本

  スティーブン・チョボスキー著「ウォールフラワー」(Amazon

  The Perks of Being a Wallflower (英語版)

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ウォールフラワー(字幕版)

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