マリサ・トメイ(1964年〜)は、ニューヨーク出身のアメリカの女優です。ブルックリンにに住む弁護士の父、教師の母のイタリア系アメリカ人の両親の元に生まれ、両親が演劇好きだった為、早い時期から女優になることを目指し、1984年に映画デビュー、1986年にオフ・ブロードウェイ・デビューします。
マリサ・トメイ〜「いとこのビニー」(1992年)
1992年に「いとこのビニー」でジョー・ペシの恋人役を演じ、アカデミー助演女優賞を受賞、一躍有名になります。車にメチャクチャ詳しい女性が、裁判の証言で専門家を凹まし、恋人の従兄弟の窮地を救うという役をキュートに演じたのですが、一部の評論家が彼女の受賞に異論を唱えた為に、「プレゼンターが名前を間違えた」という都市伝説ができてしまいました。因みに、この年の助演女優賞の他の候補者は、
- ジュディ・デイヴィス (「夫たち、妻たち」)
- ジョーン・プロウライト (「魅せられて四月」)
- ヴァネッサ・レッドグレイヴ (「ハワーズ・エンド」)
- ミランダ・リチャードソン(「ダメージ」)
という、イギリス、オーストラリアの強面の実力派女優です。こうした候補者を差し置いて、キュートな女性を演じた若輩の彼女が受賞してしまったので、疑念が挟まれたのでしょう。アカデミーは、「間違いではない、アカデミーは間違いならばステージに上がって訂正する」とまで発表したのですが、その後、トメイの低迷が続いた為、「やはり、間違いだった」と何度も噂されることになり、トメイはいたく傷ついたと言います。
しかし、2001年公開の「イン・ザ・ベッドルーム」でこれまでとは違ったシリアスな役を演じたトメイは、この作品でアカデミー助演女優賞にノミネートされます。さらに、2008年公開の「レスラー」でもアカデミー助演女優賞にノミネートされ、名実ともに実力派女優であることを証明します。また、今般の第89回アカデミー賞で作品賞受賞者が誤ってコールされ、直ちに訂正されたことから、訂正されなかったかつてのトメイの受賞は間違いではなかったことが実証された形になりました。今一度、「いとこのビニー」に立ち返り、彼女のパフォーマンスを再評価する動きさえあります。舞台にも取り組んでいる彼女は、「いとこのビニー」で長台詞を通る声でまくし立て、観るものを惹きつけて場を支配するということを、さらに可愛らしく、コミカルにやってしまっているのです。コメディでアカデミー賞を受賞するのは難しいと言われますが、並み居るシリアスドラマのライバルを差し置いて選ばれるほどの圧倒的な技量を、彼女はこの作品で見せているのです。
裁判の証言シーンの一部〜「いとこのビニー」(YouTube)
その後、彼女は路線を少し軌道修正したようにも見えますが、憎めない可愛らしさや、ネアカな楽天性、純粋さといったものをいくつになっても演じることができるのが、トメイの魅力のひとつではないかと思います。これは、「いとこのビニー」から一貫している、彼女の持ち味のひとつでしょう。既に50代ですが、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)、「スパイダーマン:ホームカミング」(2017年)と、依然として大作への出演が目白押しで、勢いに衰えを感じられず、まだまだ活躍が期待される女優です。
「イン・ザ・ベッドルーム 」(2001年)
「その土曜日、7時58分」(2007年)
「リンカーン弁護士」(2011年)
「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」(2011年)
「ラブ・アゲイン」(2011年)
「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)
「スパイダーマン・ホームカミング」(2017年)
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