「クライング・ゲーム」(原題:The Crying Game)は、1992年公開のイギリスのロマンティック・サスペンス&ドラマ映画です。ニール・ジョーダン監督・脚本、スティーブン・レイ、ジェイ・デイヴィッドソンらの出演で、元IRAの兵士彼が死に至らしめた男の恋人との、危険で甘く刺激的な愛を描いたサスペンスタッチのドラマです。第65回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞にノミネートされ、脚本賞を受賞した作品です。
目次
スタッフ・キャスト
監督:ニール・ジョーダン 脚本:ニール・ジョーダン
出演:スティーヴン・レイ(ファーガス)
ミランダ・リチャードソン(ジュード)
フォレスト・ウィテカー(ジョディ)
ジェイ・デヴィッドソン(ディル)
エイドリアン・ダンバー(マグワイア)
ジム・ブロードベント(コル)
ラルフ・ブラウン(デイヴ )
ブレッフィニ・マッケンナ(ティンカー )
ほか
あらすじ
晩秋のアイルランド。IRAの一団が、英国軍に捕らえられた仲間たちを釈放を交渉するための人質として、黒人兵士ジョディ(フォレスト・ウィテカー)を誘拐、アジトに幽閉したジョディをファーガス(スティーヴン・レイ)が見張ります。2人きりで過ごすうちに、いつしか彼らは親しくなります。ジョディはファーガスに、「あんたは親切だ。それはあんたの持って生まれたものなんだ」と語ります。ジョディは、自分が殺されたらロンドンにいる恋人ディルに会って「愛していた」と伝えて欲しいと頼みます。ところが、ジョディは救出にやって来た英国軍の装甲車にひかれて死亡し、アジトも軍の急襲を受けて炎に包まれます。かろうじて逃げ延びたファーガスはロンドンへと渡り、美容師のディル(ジェイ・デヴィッドソン)に会います。ファーガスは夜はバーで歌うディルの美しく不思議な魅力にひかれ、2人は急速に接近します・・・。
レビュー・解説
プロットの強烈なひねりで有名になった映画ですが、巧みなストーリー展開、強烈なひねりを支えるメインキャストの熱演が素晴しく、見応えのあるサスペンス&ドラマです。
名曲パーシー・スレッジの「男が女を愛する時」*1が流れる中、日陰の暗い鉄道橋を前景に橋桁の間から遠景のカーニバル会場を捉え、ゆっくりと回り込むようにトラックする、素晴しいオープニング・クレジットに目が釘付けになります。長い鉄道橋の手前に低い歩道橋があった為、この様なトラック撮影が可能になったわけですが、なかなか思いつかない発想です。
たまたま「ナイトクローラー」の後にこの映画を見たのですが、主人公のファーガスはサイコパス的な性格とは正反対の、共感性の高い優しい性格で、冷徹さが要求されるIRAの兵士など不向きです。ジョディは、サソリとカエルの例え話しながら、それはファーガスの「持って生まれたもの」と喝破します。強烈なひねりの含めてプロットは二転三転しますが、ファーガスの「持って生まれたもの」は不動の軸となります。
主演のスティーヴン・レイはファーガスが持って生まれた優しい顔、 IRA 兵士としての顔、時折見せるトボケた顔をうまく演じて、見事アカデミー主演男優賞にノミネートされました。ジェイ・デヴィッドソンも、映画初出演でアカデミー助演男優賞にノミネートされる大活躍です。他にもオスカー俳優のフォレスト・ウィテカー、オスカー候補のミランダ・リチャードソンと、粒ぞろいのキャスティングです。
この映画には、
- プロットのひねりがきつ過ぎる
- 性とテロリズムは相性が悪い
- ディルを演じられる役者がいない
といった理由でスタジオがつかず、インディーズとして制作されましたが、出来上がりを見たミラマックスが配給を決めました。ニューヨークで単館上映されたましたが、次第に話題となり拡大公開、当初、デメリットされた強烈なひねりが話題を呼ぶ形になりました。また、キャスティングできないと言われたディルを演じたミランダ・リチャードソン、ファーガソンの持って生まれた優しい顔と IRA 兵士としての顔をうまく演じたスティーヴン・レイのパフォーマンスも成功の大きな要因です。
スティーヴン・レイ(ファーガス、右)
ミランダ・リチャードソン(ジュード)
フォレスト・ウィテカー(ジョディ)
ジェイ・デヴィッドソン(ディル)
動画クリップ(YouTube)
オープニング・シーン〜「クライングゲーム」
サソリとカエルの話〜「クライングゲーム」
JODY: Ah, take the thing off, man.
JODY: It's okay. I understand. Don't mind if I prattle on, do you?
JODY: I will take it by your silence that you don't.
JODY: Two types, Fergus. The scorpion and the frog. Ever heard of them?
JODY: Scorpion wants to cross a river, but he can't swim. Goes to the frog, who can, and asks for a ride. Frog says, "If I give you a ride on my back, you'll go and sting me." Scorpion replies, "It would not be in my interest to sting you since as I'll be on your back we both would drown." Frog thinks about this logic for a while and accepts the deal. Takes the scorpion on his back. Braves the waters. Halfway over feels a burning spear in his side and realizes the scorpion has stung him after all. And as they both sink beneath the waves the frog cries out, "Why did you sting me, Mr. Scorpion, for now we both will drown?" Scorpion replies, "I can't help it, it's in my nature."
FERGUS: So what's that supposed to mean?
JODY: Means what it says. The scorpion does what is in his nature. Take off the hood, man.
FERGUS: Why?
JODY: 'Cause you're kind. It's in your nature.
JODY: See? I was right about you.
FERGUS: Don't be so sure.
JODY: Jody's always right.ジョディ:こいつをとってくれ。
ジョディ:かまないさ。わかったよ。おれが喋り続けると気になるか?
ジョディ:黙っているから、気にしないってとるよ。
ジョディ:2種類あるんだ、ファーガス。サソリとカエルのね。聞いた事あるかい?
ジョディ:サソリは川を渡りたいんだが、泳げない。泳げるカエルのところに言って乗せてくれ言う。カエルは「もし、背中に乗せたら、俺を刺すだろう」と言う。サソリは、「もし刺したら、俺もお前も溺れちまうから、刺そうとは思わないよ。」と答える。カエルは、サソリの言い分をちょっと考えてから、取引に応じる。サソリを背に乗せ、川の水に立ち向かう。半ばまで来た時に脇腹に焼けた槍で刺すような痛みを感じて、結局、サソリが刺した事を知る。二人は波の下に沈み、カエルが叫ぶ。「サソリさん、何で刺したんだ、二人とも溺れてしまうのに?」サソリは答えます、「止められないんだ、俺が持って生まれたものなんだよ。」
ファーガス:何を言いたいんだ。
ジョディ:サソリの言う通りさ。持って生まれたものだよ。目隠しを取ってくれ。
ファーガス:なんで?
ジョディ:君は優しいんだ。持って生まれものだよ。
ファーガス:それはわからんよ。
ジョディ:ジョディに間違いはないさ。
撮影地(グーグルマップ)
- オープニングで前景に映る橋
新しく歩道橋ができて橋の向こうのカーニバル会場が見えなくなったのが残念。 - ディルが働いていた美容室
- ディルが歌っていたバー「メトロ・バー」
- ディルが住んでいたアパート(中央)
ディルはここの三階に住んでいた。
関連作品
ニール・ジョーダン監督 x スティーヴン・レイのコラボ作品のDVD(Amazon)
「マイケル・コリンズ」(1996年)
「父の祈りを」(1993年)
「マイケル・コリンズ」(1996年)
「麦の穂をゆらす風」(2006年)
「シャドー・ダンサー」(2011年)
「ベルファスト71」(2014年)
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