「メイジーの瞳」:両親の離婚に振り回される6歳の娘の選択を通して、子供にとって大切な事をさらりと描く
「メイジーの瞳」は、2013年公開のアメリカのヒューマン・ドラマ映画です。イギリスの文豪ヘンリー・ジェイムズの小説を基に、スコット・マクギー/デヴィッド・シーゲル監督、オナタ・アプリール、アレクサンダー・スカルスガルド、ジュリアン・ムーアらの出演で、離婚した両親に振り回される娘の姿を、娘の視線で描いています。
目次
スタッフ・キャスト
監督:スコット・マクギー/デヴィッド・シーゲル
脚本:ナンシー・ドイン /キャロル・カートライト
原作:ヘンリー・ジェイムズ著「メイジーの知ったこと」(What Maisie Knew)
出演:ジュリアン・ムーア(スザンナ)
アレキサンダー・スカルスガルド(リンカーン)
オナタ・アプリール(メイジー)
ジョアンナ・ヴァンダーハム(マーゴ)
スティーヴ・クーガン(ビール)
ほか
あらすじ
ニューヨークに住む6歳のメイジー(オナタ・アプリール)は、ロック歌手の母スザンナ(ジュリアン・ムーア)とアートディーラーの父ビール(スティーヴ・クーガン)の離婚を機に、二人の家を10日ごとに行き来することになります。ベビーシッターだったマーゴ(ジョアンナ・ヴァンダーハム)が父の新居にいることに戸惑いますが、メイジーは元々仲良しだった彼女にすぐに打ち解けます。一方、母が再婚した心優しいバーテンダーのリンカーン(アレキサンダー・スカルスガルド)も、メイジーの大切な友だちになります。自分のことに忙しいスザンナとビールは、次第にそれぞれのパートナーにメイジーの世話を押し付け始めます。そんなある日、彼らの気まぐれに我慢の限界を超えたマーゴとリンカーンは家から出て行くことを決意します。スザンナはツアーに出発し、メイジーは独り夜の街に置き去りにされてしまいます・・・。
レビュー・解説
6歳のメイジーを演じるオナタ・アプリールが健気でとても可愛らしいです。離婚した両親が彼女を押しつけ合う後半は思わずはらはらしてしまいますが、この映画の素晴しいのは子供の視点でライトに描いている点です。思わず、子供の頃を思い出しました。スコット・マクギー/デヴィッド・シーゲル監督の共感的な演出、オナタ・アプリールが演ずる健気で可愛らしい少女、そしてジュリアン・ムーア、スティーヴ・クーガンが演ずる仕事が忙しくて喧嘩の絶えない両親と、アレキサンダー・スカルスガルド、ジョアンナ・ヴァンダーハムが演じる子供に共感的な新しいパートナーの対比が、子供の視点のこの映画を強く支えています。
19世紀に書かれた原作は悲観的で、メイジーはシニカルな少女に成長していきますが、映画のプロットは原作と変わっており、より楽観的に捉えています。また、名作「キッズ・オーライト」(2010年)を制作したダニエラ・タップリン・ランドバーグ、リーヴァ・マーカーらのプロデュースであることから類似性も示唆されています。「キッズ・オーライト」ではレズビアン夫婦と人工授精で生まれた二人の子供の家族に生物学上の父が闖入するも、結局はレズビアンであれ苦楽を共にしてきた育ての親が選択されるという展開になっています。これに対して「メイジーの瞳」は仕事の都合を子供に強いる生物学上の両親と、血のつながりはないが親代わりになってくれる人を対比する形で描かれています。
この映画の良さは、新しい家族のあり方を追求するというよりも、子供にとって大切なことを、子供の視点を通してさらりと描いている点にあります。映画が暗くならない様に、メイジーの可愛いファッションや、お洒落なインテリア、色彩に工夫が凝らされており、そうした点も見どころのひとつですが、実は子供が求めているのは必ずしもたいそうなことではありません。仕事と子育ての両立に悩む世の親にとって、それさえ実現の難しいことかも知れず、全てを満たす事はできなまま、ともすれば親中心の考え方に陥ってしまいがちです。この映画を観て自分が子供だった頃を思い出したり、子供の視点に気づいたりできれば、それは制作者の喜びとなるところではないかと思います。
余談ですが、日本では既に気持ちが離れてしまっているのに、子供への悪影響や経済的理由で結婚を継続している夫婦が少なくないようです。女性の自立がより進み、個人主義的考え方が浸透すれば、アメリカのように離婚が増えるのかもしれませんが、子供の視点から見れば、日本的な考えもあながち悪くはないのかもしれませんね。
オナタ・アプリール(メイジー)
6歳のメイジーには親によるケアが必要不可欠です。メイジーを演じるオナタのおばあさんは日本人です。
ジュリアン・ムーア(スザンナ)
子供の面倒を見きれない親を、どこかしら憎みきれないように演じるのは、さすが大女優のなせる技です。
スティーヴ・クーガン(ビール)
海外出張など、仕事が忙しくて、子供の面倒を見切れません。
金儲けより協調性を重視して育てられたリンカーンは、子供の相手も上手です。撮影現場では、オナタはイケメン俳優のアレキサンダーに最もなついていました。
ジョアンナ・ヴァンダーハム(マーゴ)
子守りだけあって、マーゴは実の親より子供の相手が上手です。
親権争い
親権を争う両親は、子供の迎えでも、子供を奪い合います。
仕事場に連れて行ったりしますが・・・
親権を奪い合うものの、実際に子供の面倒を見るのは大変です。
一緒に人形劇を見てくれるのは・・・
大好きなマーゴ、リンカーンと一緒に人形劇を観るメイジーは楽しそうです。
動画クリップ(YouTube)
関連作品
Henry James "What Maisie Knew"
Henry James "What Maisie Knew"(Kindle版)
ダニエラ・タップリン・ランドバーグのプロデュース作品のDVD(Amazon)
「さよなら。いつかわかること」(2007年)
「キッズ・オールライト」(2010年)