夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「21グラム」:ある事故を機に交錯する男女三人の運命と生の重さ

「21グラム」(原題:21 Grams)は2003年公開のアメリカのドラマ映画です。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、ショーン・ペンナオミ・ワッツベニチオ・デル・トロらの出演で、ある事故をきっかけに交錯する三人の男女の運命を描きながら、生の重さを問いかけています。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:ギレルモ・アリアガ
出演:ショーン・ペン(ポール・リヴァース、大学教授。心臓病、余命1ヶ月)
   シャルロット・ゲンズブール(メアリー・リヴァース、ポールの妻)
   ナオミ・ワッツ(クリスティーナ・ペック、夫と2人の娘と暮らす女性)
   ダニー・ヒューストン(マイケル・ペック、クリスティーナの夫、37歳)
   クレア・デュヴァル(クローディア・ウィリアムズ、クリスティーナの妹)
   ベニチオ・デル・トロ(ジャック・ジョーダン、前科者、妻子と信仰が心の支え)
   メリッサ・レオ(マリアンヌ・ジョーダン、ジャックの妻)
   ほか

あらすじ

ニュー・メキシコの大学で数学を教えるポール(ショーン・ペン)は、余命1か月と宣告され心臓のドナーを待っています。家族と幸せに暮らしていたクリスティーナ(ナオミ・ワッツ)は、ある日、夫と娘をトラックに轢き逃げされ、悲しみのどん底でやめていたドラッグに手を出ます。ひき逃げしたのは、信仰を支えに人生をやり直そうとしていた前科者のジャック(ベニシオ・デル・トロ)で、とっさに逃げてしまったものの、妻マリアンヌ(メリッサ・レオ)の制止を振り切って警察に出頭します。クリスティーナの夫の心臓は、ドナーを待っていたポールに移植されますが、彼は妻メアリー(シャルロット・ゲンズブール)との溝が広がっていることを再確認します。ポールはドナーの身元を突き止め、クリスティーナに声をかけ、やがて心臓のことを告白します。クリスティーナは混乱しますが、ポールを愛し始め、ジャックへの復讐をポールに頼みます。ポールは証拠不十分で釈放されたジャックを探し出し、彼を殺したふりをしてクリスティーナの待つモーテルに戻りますが、自分の罪を責めるジャックがそこに現れます・・・。

レビュー・解説

ほとんどがハンディ・カメラで撮影されたというこの作品は、手触りが感じられるような質感のある映像と相まって、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの世界観がリアルに感じられます。

 

脚本家のギレルモ・アリアガは、2000年頃、自身の誕生パーティの為に自宅へ急ぐ途中、交通事故の現場に遭遇しました。30代の男が道路に横たわり、警官が男の身分証から取り出した妻と二人の子供の写真を見ていました。彼はふと、もし男と二人の娘をはねたのが自分だったらと考えました。その話を、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥにし、前作の「アモーレス・ペロス」同様、三つの話が同時進行、加えて時系列をシャッフルする手法を取り入れて映画にしたのが、この「21グラム」です。

 

タイトルの「21グラム」は、20世紀初期にアメリカの医師ダンカン・マクドゥーガルが行った、魂の重量を計測しようとした実験に由来します。21グラムと言えば、ニッケル硬貨5個分、チョコバー一個分、ハチドリ一羽分に過ぎませんが、夫を失ったクリスティーナにしてみれば、夫や娘の命の重さはそんなものでは済まないでしょう。一方、夫とその娘の命を奪ってしまったジャックが背負うものも、21グラムでは済みません。

 

復讐を頼まれたポールは、ひと芝居打った後、廃墟となったプールにたたずみます。かつて子供を失った時、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督も復讐を考えましたが、不毛である事に気づき、思いとどまったと語っています。このシーンは復讐の不毛さを表現したもので、エンディングにも使われていますが、9.11に対するアメリカの報復にも同じ事を感じたと語っています。

 

生きる意志があるならば、クリスティーナは家族を失った喪失感を、ジャックはクリスティーナの家族の命を奪った罪の重さを、背負って生きるしかありません。ジャックは、身を挺してそれを二人に伝えます。それでは身も蓋もないのではないか、それで何かが得られるのか、答えは各人各様かもしれませんが、

<オチバレ>

映画では、輸血の際の血液検査でクリスティーナは身ごもっていることを伝えられます。いたたまれなくなって家を出たジャックは、罪を正面から受止めて妻と子の元に戻ります(これに先駆けて、夫の病と夫婦関係の崩壊に苦しむポールの妻は、体外授精で子供を生むことを宣言、子供が希望である事を示唆しています)。続くエンド・クレジットで、

A María Eladia, pues cuando ardió la pérdida, reverdecieron los maizales

マリア・エラディア、枯れたトウモロコシ畑も、燃えたらまた緑になった

 

と、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の妻への献辞が表示されます。この映画は子供を失った彼ら自身の思いでもあることが示されます。

<オチバレ終わり>

 

前作の舞台はメキシコでしたが、「21グラム」では舞台をアメリカのニュー・メキシコ州に移し、オスカー俳優のショーン・ペンベニチオ・デル・トロメリッサ・レオ、本作でオスカーにノミネートされたナオミ・ワッツなど、国際的な実力派俳優の起用が可能になりました。本作での彼らの演技には鬼気迫るものがあります。ベニチオ・デル・トロは、緻密に練り込まれた演技で、オスカーの助演男優賞にノミネートされています。

 

序盤で、ナオミ・ワッツが演じるクリスティーナが夫と娘の死を知り泣き崩れるシーンは、派手さを抑えながらも、本当に大きな悲しみに泣き崩れているかのようです。ジャックへの怒りを激しくポールにぶちまけるシーンは、まるで火がついたかのようです。何も言わずに、目だけで語るシーンも見事です。演技の幅、質、どれをとってもオスカーものと思いますが、残念ながら本作ではノミネートだけで、オスカーは「モンスター」のシャーリーズ・セロンに行ってしまいました。

 

ナオミ・ワッツは、ニコール・キッドマンと同世代で、オーストラリア時代はルーム・メイトでした。ニコール・キッドマンが若くして注目され、上り詰めたのに対して、ナオミ・ワッツは不遇の時代が続き、2001年の「マルホランド・ドライブ」でようやく注目されました。本作のオスカー・ノミネートで名を得ましたが、彼女はハリウッド女優にしては地味です。単なる美人女優に飽きたらず大変身してオスカーを取りにいったシャーリーズ・セロンとは対照的ですが、そうした抑えが効いているところがナオミ・ワッツの良いところでもあります。

 

ショーン・ペン

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ナオミ・ワッツ

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ベニチオ・デル・トロ

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関連作品 

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督xナオミ・ワッツのコラボ作品の(Amazon

  「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)

 

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  「アモーレス・ペロス」(2000年)

  「バベル」(2006年)

  「BIUTIFUL ビューティフル」(2010年)

「レヴェナント: 蘇えりし者」(2015年)

 

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    「マルホランド・ドライブ」(2001年)

  「キング・コング」(2005年)

  「イースタン・プロミス」(2007年)

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「ヤング・アダルト・ニューヨーク」(2014年)

「ヴィンセントが教えてくれたこと」(2014年)

  「チャック 〜“ロッキー”になった男〜」(2016年)

 

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群像劇映画  

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21グラム (字幕版)