夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「シェルタリング・スカイ」:北アフリカの美しさと日常の脆さ

シェルタリング・スカイ」は1990年公開のイギリスのドラマ映画です。ポール・ボウルズの小説「極地の空」を原作にベルナルド・ベルトルッチ/マーク・ペプローが脚色、ベルナルド・ベルトルッチ監督、ジョン・マルコヴィッチ、デボラ・ウィンガーら出演で、1947年の北アフリカを舞台に過酷な運命に弄ばれる倦怠期のアメリカ人夫婦を描いています。第48回ゴールデングローブ賞で、監督賞(ベルナルド・ベルトルッチ)、作曲賞(リチャード・ホロヴィッツ坂本龍一)にノミネートされ、作曲賞を受賞した作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ベルナルド・ベルトルッチ
脚本:ポール・ボウルズ/ベルナルド・ベルトルッチ/マーク・ペプロー
原作:ポール・ボウルズ「極地の空」
出演:デブラ・ウィンガー(キット・モレスビー)
   ジョン・マルコヴィッチ(ポート・モレスビー)
   キャンベル・スコット(ジョージ・タナー)
   ティモシー・スポール(エリック・ライル)
   ジル・ベネット(エリックの母)
   ベン・スマイル(スマイル)
   ニコレッタ・ブラスキ(フランス人女性)
   ポール・ボウルズ(語り)

   ほか

あらすじ

第二次世界大戦後まもない1947年の北アフリカ。ニューヨークからやって来た作曲家のポート・モレスビー(ジョン・マルコヴィッチ)とその妻で劇作家のキット(デブラ・ウィンガー)は、求めるべき夢さえ失なった彼らの深い喪失感を癒す為に、文明と隔絶し、あてどもない拡がりを持ったこの地を訪れます。

旅の道連れのポートの上流社会の友人、タナー(キャンベル・スコット)は、結婚して10年、夫との心のすれ違いを感じるキットにかねてより心を寄せており、この機会に彼女に接近します。次の目的地に向かう際、ポールはホテルで同宿だったイギリスの旅行ライター、ライル夫人(ジル・ベネット)とその息子のエリック(ティモシー・スポール)と同道しますが、キットとタナーは別行動をとり、一夜を共にします。

アフリカ奥地の風土に嫌気がさしたタナーは別の土地へ向かい、二人きりになったポートとキットは、彼らの心の虚無を象徴するかのようなアフリカの碧空の下で一時、愛を確認したかに見えましたが、それもつかの間、ポートのチフスにむしばまれ、医者もいない砂漠の最果ての街で息絶えます。

ついに一人きりになったキットは、何もない砂漠の荒寥を自らの内面と一体化したかのように、アラブ人の隊商の中に身を埋め、男と体を重ねます。そんな彼女の行方を探すタナーの手で、キットはようやく砂漠からタンジールへと連れ戻されます・・・。

レビュー・解説

会話が意味深で、また北アフリカの風景と音楽も美しく、思わず引き込まれてしまいますが、厳しい自然と異文化の中で人間存在の儚さ・脆さを感じさせるなど、深いものがあります。タイトルの「シェルタリング・スカイ」は、「その向こうにある暗い虚無から守ってくれる空」という意味ですが、二人は水道さえない地域に足を踏み込み、厳しい自然と異文化の中をさまようことになります。

 

原作の作者ボウルズは、語り部として映画にも出ており、最後に次のように語っています。 

Because we don't know when we will die, we get to think of life as an inexhaustible well, yet everything happens only a certain number of times, and a very small number, really. How many more times will you remember a certain afternoon of your childhood, some afternoon that's so deeply a part of your being that you can't even conceive of your life without it? Perhaps four or five times more, perhaps not even that. How many more times will you watch the full moon rise? Perhaps twenty. And yet it all seems limitless.

(訳)自分が何時死ぬかを知らないから、私たちは人生を枯れることのない井戸のように考えるようになる。しかしながら、何事もできる回数は有限であり、実際のところ、その回数はとても小さいものだ。幼い頃の昼下がりをあと何回、思い出すだろうか?それなしには自分の人生を考えられないほど深く自分の一部になっている、そんな昼下がりをだ。恐らく、四、五回、いや、それほど多くないかもしれない。のぼる満月を見るのは、あと何回だろうか? 恐らく二十回くらいだろう。それにもかかわらず、限りがないように思っている。

 

自然であれ、人であれ、素晴らしい出会いなんて、限りある人生に何度もあるものではないかもしれませんね。

 

主演のジョン・マルコヴィッチは評価の高い出演作が少なくないのですが、シリアスな演技のみならず、「マルコヴィッチの穴」や「REDリターンズ」でのコミカルな演技にも捨てがたいものがあります。

 

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関連作品 

シェルリング・スカイの原作本Amazon

  Paul Bowles 'The Sheltering Sky'(Amazon

 

ベルナルド・ベルトルッチ監督作品のDVD(Amazon

  「暗殺の森」(1970年)

  「ラスト・エンペラー」(1987年)

 

ジョン・マルコヴィッチ出演作品のDVD(Amazon

  「キリング・フィールド」(1984年)

  「プレイス・イン・ザ・ハート」(1984年)

  「ザ・シークレット・サービス」(1993年)

  「マルコヴィッチの穴」(1999年)

  「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(2000年)

  「家路」(2001年)

    「Disgrace」(2008年)・・・輸入版、日本語なし

  「RED/レッド」(2010年)

  「REDリターンズ」(2013年)

  「ウォーム・ボディーズ」(2013年)

  「バーニング・オーシャン」(2016年)

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