夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど」:戦時下の爽快なメロドラマ

ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど」は、1979年の公開のアメリカの恋愛映画です。ピーター・ハイアムズ監督、ハリソン・フォードレスリー=アン・ダウンら出演で、1943年の戦火のロンドンを舞台にふと知り合った男と女の運命的な愛を描いています。 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ピーター・ハイアムズ
脚本:ピーター・ハイアムズ
出演:ハリソン・フォード(デイビット・ハロラン中尉)
   レスリー=アン・ダウン(マーガレット・セリンジャー)
   クリストファー・プラマー (ポール・セリンジャー)
   ほか

あらすじ

戦況が緊迫する1943年のロンドン、灰色一色に包まれる街の中で唯一の色どりをみせる赤い二階建てバスに、マーガレット・セリンジャー(レスリー・アン・ダウン)は行列を押しのけて乗ろうとします。バロラン中尉(ハリソン・フォード)がそんな彼女を押しやりバスの後部にしがみつくと、マーガレットはしゃがみ込み「赤ちゃんが…」と言って顔をゆがめます。あわてて飛び降りたハロラン中尉に向かってマーガレットは笑ってみせます。バロランは悲しげな笑いを残すと、片足を引きずりながら歩み去ります。マーガレットはハッとし青ざめた顔で謝りますが、そんな彼女の前で今度はハロランが元気よく飛び上がってみせます。

コーヒーを誘ったハロランに「紅茶なら」といたずらっぽく答えるマーガレットを見て、彼はその美しさに息を呑みます。木曜日に会ってくれと願うハロランに、悲しげな表情で名前も告げずに去ろとする彼女の左手の薬指に光る指輪を見て、ハロランは全てを理解します。「もう遅いわ」と叫ぶと、マーガレットは雑踏の中に消えます。

ルノアンの北々東にある敵軍貯蔵庫攻撃の旅から帰ったハロランは次の木曜日、ハノーバー・ストリートに向かいます。数時間が過ぎ、あきらめて立ち去ろうとするハロランの前にマーガレットが現われます。2人は言葉なしに郊外の静かなホテルに落ち着くと、激しく抱擁し合います。マーガレットの脳裏を、やさしい夫とかわいい娘の姿がよぎったが、ハロランとの逢い引きをやめることは出来ません。寛容な夫ポール(クリストファー・ブラマー)は、そんな妻の変化をすぐに感じとりますが、何も言わず、ひたすらやさしく振舞ます。

そんなある日、ポールは、危険にもドイツ軍の本部に乗り込み、金庫から重要書類を盗むという特殊任務を遂行するため、妻に内緒で旅立ちます。皮肉にも、ハロランが飛行機で彼をドイツ軍領内に送りこむことになります。2人はお互いを知りませんが、ドイツ軍に攻撃されて飛行機が炎上した為、協力しながら一緒にドイツ軍本部に乗り込むことになります。秘密金庫から重要書類を盗み出すことに成功したものの、執拗なドイツ軍の追跡を受けて、二人は死に直面します。そんな時、ポールがロケットの妻の写真をハロランに見せます・・・。

レビュー・解説

冒頭のクレジットタイトルが終わるのももどかしく、主演のハリソン・フォードレスリー=アン・ドーンの美男・美女カップルがいきなりのご発展。第二次世界大戦下のシリアスな映画と思いきや、メロドラマだったのか・・・。と、思うのもつかの間、後半はアクション映画顔負けの展開になります。

ちぐはぐな印象なきにしもあらずですが、さっぱりとした後味は悪くありません。レスリー=アン・ドーンのメイク、衣装や、様々なシーンと音楽(iTunesで聴く*3)で美しさを極める一方、ヒューマニズムと強引ながらもベタつかない展開で、一種、爽快な後味を残すのはアメリカ映画ならではでしょう。

 
ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど」は、ヴィヴィアン・リー主演の古典的メロドラマ「哀愁」をモチーフした作品と言われています。ハノーバー・ストリートは実在するロンドンの地名で、「哀愁」の原題「ウォータールー・ブリッジ」に倣い、ロンドン市街の地名をタイトルにしたものと思われます。但し、地下鉄のハノーバー・ストリート駅は架空のものです。

現在のハノーバー・ストリート近辺→ Google マップ - 地図検索

ハリソン・フォードが操縦するB−25爆撃機は、アメリカからイギリスのボヴィントン空軍基地に実物を空輸して撮影が行われました。当初、評論家から厳しい批評を受ける中、この映画は航空ファンに好評を博したとも言われています。

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レスリー=アン・ドーンは冒頭、赤十字の制服に身を包んで登場しますが、第二次世界大戦中は、イギリスで50万人、アメリカで20万人、その他の連合諸国でも数万人の女性たちが制服に身を包み、軍隊に勤務していたと言われています。
出典:第二次大戦の連合軍婦人部隊

 

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