読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「PK ピーケイ」:宇宙人の目で宗教を風刺、恋あり人情あり、涙あり笑いあり、歌あり踊りあり、楽しさてんこ盛りの印度産SFコメディ

「PK ピーケイ」(原題:PK)は、2014年公開のインドのSFコメディ映画です。ラージクマール・ヒラーニ監督、アーミル・カーンアヌシュカ・シャルマら出演で、地球の調査を目的としてやってきて帰るすべを失った宇宙人が、女性ジャーナリストに出会い、自身の願いを聞き入れてくれる神を探す為にテレビ番組に出演、宗教やその伝道に関して疑問を抱きながら学んでいく様を、涙と笑いとともに描いてます。コメディやラブストーリーの要素を持ちながらも、宗教問題など世界に共通する社会問題を風刺し、全世界の興行収入は100億円を突破、インド映画歴代最高を記録する大ヒット作になった作品です。

 

 「PK ピーケイ」のDVD(Amazon

 

目次

スタッフ・キャスト

監督:ラージクマール・ヒラーニ
脚本:ラージクマール・ヒラーニ/アブヒアット・ジョシ
出演:アーミル・カーン(PK)
   アヌーシュカ・シャルマ(ジャグー)
   スシャント・シン・ラージプート(サルファラーズ)
   サンジャイ・ダット(バイロン
   ボーマン・イラニ(チェリー)
   サウラブ・シュクラ(タパスヴィー)
   ほか

あらすじ

  • 裸の人間の姿をした宇宙人(アーミル・カーン)が地球の調査の為に、インドのラージャスターンに到着しますが、宇宙船のリモコンを盗まれてしまいます。宇宙人は泥棒からカセットレコーダーを奪い取りますが、肝心のリモコンを取り戻すことができず、宇宙に帰れなくなります。
  • 同じ日、ベルギーのブルージュでは、留学生の女性ジャグー(アヌーシュカ・シャルマ)が、サルファラーズ(スシャント・シン・ラージプート)に出会い、恋に落ちます。しかし、熱心なヒンドゥー教徒であるジャグーの父(パリークシト・サーハニー)は、パキスタン人でムスリム教徒のサルファラーズとの交際に猛反対します。父が相談したヒンドゥー教の導師タパスヴィー(サウラブ・シュクラ)は、サルファラーズはジャグーを裏切るだろうと預言します。ジャグーは預言の嘘を証明すべくサルファラーズにプロポーズし成功しますが、結婚当日に文化の違うので結婚を取り消したいという手紙を受け取り、悲しみます。
  • 母国インドへ戻り、テレビの報道局で働くジャグーは、地下鉄の駅で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、様々な宗教の飾りをつけ、「神様が行方不明」と書かれたチラシを配る奇妙な男を見かけ、興味をそそられます。彼女は、男が賽銭箱から金を盗んで捕まりそうなところを助け、信頼を得ます。その男は、他の惑星から調査にやって来た科学者であり、自分の星の人間は服を着ることもなければ、宗教を信じることもないと、彼女に語ります。また、彼らは握手で意思疎通できるので、会話をすることもないといいます。
  • 彼は、カーセックスをしているカップルから衣服と金を盗んでは、人間社会に溶け込みます。うっかりトラックに轢かれた彼は、運転手の楽団長バイロン(サンジャイ・ダット)と仲良くなり、彼の楽団の元に連れて行かれます。宇宙人は街の人々の手を握り意思疎通を図りますが、変態と思われて追い払われます。楽団長に売春宿へ連れて行かれた宇宙人は、売春婦の手を6時間握り続け、ボージュプリー語を習得します。楽団長から泥棒はデリーにいるはずだと教えてもらった宇宙人は、デリーへ出発します。彼の奇妙なふるまいから、人々は彼のことを酔っ払いと思い込み、「PK」(ヒンディー語で酔っ払いの意味)と呼びます。
  • リモコンを見つける手助けができるのは神だけだという人々の言葉を真に受けたPKは、神を見つけるためにインドのあらゆる宗教を実践しますが、願いは叶いません。その後、彼は導師のタパスヴィーが自分のリモコンを持っているのを発見しますが、導師はそれを神からの贈り物であると主張し、返すことを拒みます。ジャグーは、リモコンを取り返し、彼の星へ帰らせてあげるとPKに約束します。
  • タパスヴィーら導師達は神と会話する際の番号の「かけ間違い」により、民衆を無意味な宗教儀式に巻き込んでいると、PKは推測します。ジャグーは、自分の局へ動画を送ることを民衆に促し、導師の「かけ間違い」を明らかにしようとします。この「かけ間違い」キャンペーンは民衆の間で一気に広がり、タパスヴィーは狼狽します。
  • 一方、泥棒を見つけ出した楽団長のバイロンは、泥棒がリモコンをタパスヴィーに売ったことをPKに伝え、PKはタパスヴィーが「かけ間違い」ではなく、人々を騙していることに気づきます。楽団長は泥棒を連れてデリーへ向かいますが、PKと再会する直前に、タパスヴィーの集団が彼らの神を守るために行ったテロ攻撃に遭い死亡してしまいます。導師のタパスヴィーは、PKとの対決を了承し、ついに二人は生放送の公開討論番組で直接対決することになります・・・。

レビュー・解説

宇宙人の目で宗教を風刺するインドのSFコメディですが、風刺のみならず、ラブストーリーあり、涙あり笑いあり、歌あり踊りありと、映画の楽しさてんこ盛りの娯楽作品に仕上がっています。

 

ラージクマール・ヒラーニ 監督は、子供の頃から、人間はどこから来たのか、死んだらどこに行くのか、我々の存在意義は何なのかといった疑問をずっと持っていました。答えを求めようとすると、神にたどり着きますが、では神はどこにいるのか?という新たな疑問が生まれたといいます。如何に生き、行動すべきかは、人間から伝え聞くことはあっても、神から直接、答えを聞くことはできず、宗教によっても答えが異なります。彼はそこがよく理解できず、いつか映画にしたいと思ってたそうです。

人々が語る神の存在、神のあるべき姿というものに対して、ちょっと違うのでは?と自分の中で違和感を抱いていて、それを映画にしてみようかなと思ったのが、この「PK ピーケイ」です。たとえば、ヒンズー教の家庭に生まれればヒンズー教の神を信仰し、キリスト教であればキリスト教を崇めるというように、それぞれ違いがありますよね。「神」という存在は一緒なのに、その違いがあること自体がおかしいのでは?と、昔から不思議に思っていたことがテーマなんです。(ラージクマール・ヒラーニ 監督) 

 

主人公の宇宙人PKは、子供のように純粋です。宇宙船のリモコンを探す彼は、神に聞くように教わりますが、事情がよくわかっていない彼は、人々に神とは何かと問い正すことをしません。言われるままに神を探していく中で、宗教について不思議なこと、おかしなことに、彼が気づいていく形で物語は展開します。さらに、ラブストーリーあり、涙あり笑いあり、歌あり踊りありと、楽しさてんこ盛りに仕上げているところが、この作品を見応えのあるものにしています。メッセージを強調しすぎると固くなり、足りないと中身がなくなるのでバランスが難しいところですが、ここにはフィクションを作る限りは観客を笑わせたいという監督の思いが込められています。また、メインのストーリーで様々な寺院をロケするだけでなく、サブとなるジャグーのラブストーリーではベルギーの美しい街並みのロケ映像をふんだんに映し出し、旅心も満たしてくれます。

 

インドは非常に多様な国です。北はヒマラヤ山脈、ヒンズークシ山脈を抱え、カシミール州ではマイナス40度を超える極寒の気候ですが、中部のデカン高原は半乾燥地帯で極めて暑く気温は50度にも達します。古代からインドに定住していたと考えられているのはドラヴィダ人ですが、BC1500年前後にイラン高原からアーリア人たちが移住、ドラヴィダ人は次第に南に追いやられます。ドラヴィダ人アーリア人より色が黒く、背は低いが手足が長い身体的特徴がありますが、ボリウッド俳優には色白のアーリア系インド人が多いようです。また、東からアジア人、モンゴロイド人が入っているインドは、多くの少数民族を抱えています。言語の面でも極めて多様で、連邦レベルの準公用語である英語を話すのは知識人を中心に約2割程度です。公用語ヒンドゥー語で、憲法ではアッサム語、ベンガル語、クジャラート語、パンジャーブ語、タミル語テルグ語など、州レベルの公用語としてそれぞれ全く異なる21の言語が公認されています。この他にも、500万人を超える話者が存在する言語が14、方言を加えると200余りの言語があると言われています。こうした民族的な複雑さは宗教の多様性にも反映されており、

といった人口構成になっています。

 

インドの人々は信心深く、神の存在や伝道のあり方を疑問視する本作は受け入れがたいと思いきや、インド国内で記録的な大ヒットとなりました。経済発展に伴い、一般レベルで宗教の世俗化が進みつつあることが伺われます。その一方で、ヒンドゥー教の一部宗派が映画の公開差し止めの訴えるなどの激しいバッシングがあり、大ヒットにもかかわらずインド社会には刺激が強い題材であることに変わりはなく、同じテーマの続編制作は難しいようです。他方、中国や日本など信仰心の薄い地域でもヒットしており、イスラム過激派によるテロなど宗教がらみの問題が世界的な課題になっていること、コメディとして語り口が面白いことなどが評価されているようです。なかなか一筋縄ではいかないものの、内部に多様性を抱えることは多様な外部世界に対峙する強みにもなりうるもので、多様な中で進化しつつあるインドのパワーを感じさせる作品です。

 

アーミル・カーン(PK)

f:id:DaysLikeMosaic:20170418183002j:plain

「きっと、うまくいく」(2009年)に続くヒラーニ監督とのコラボ作品。目を見開きまばたきをしない純粋な宇宙人の役柄に誠実に取り組んでいる。鍛えられた肉体と、とても50代の俳優とは思えない若々しいパフォーマンスを見せている。

 

アヌーシュカ・シャルマ(ジャグー)

f:id:DaysLikeMosaic:20170418183031j:plain

「命ある限り」(2012年)で準主役の現代的で活発な若いインドの女性ジャーナリストを演じ、素晴らしい存在感を示したが、本作ではジャーナリストのヒロイン役を見事に演じている。モデルか、ジャーナリストになりたかったという彼女には、いずれもはまり役だ。当初、女優になるつもりはなかったが、モデル業の為に演技を勉強するうちに、押しも押されぬボリウッドのスター女優になった。

 

スシャント・シン・ラージプート(サルファラーズ)

f:id:DaysLikeMosaic:20170418183054j:plain

 

サンジャイ・ダット(バイロン

f:id:DaysLikeMosaic:20170418183105j:plain

 

ボーマン・イラニ(チェリー)

f:id:DaysLikeMosaic:20170418183118j:plain

 

サウラブ・シュクラ(タパスヴィー)

f:id:DaysLikeMosaic:20170418183128j:plain

 

PKが作った尋ね人ならぬ「尋ね神」のチラシ

f:id:DaysLikeMosaic:20170419000210j:plain

f:id:DaysLikeMosaic:20170419000147j:plain

f:id:DaysLikeMosaic:20170419000125j:plain

 

因みに、現在のインドの人口は12億人強と中国より約1億人 少ない状態ですが、2020〜25年にはこれが逆転し、インドが世界一の人口大国になると予測されています。2050年の時点では、インドの人口は16億6000万人、 中国の人口は14億1000万人と推定されています。また、今後、高齢化が予想される中国と異なり、インドの人口構成は極めて若く、現状で25歳以下の人口が50%を超えている為、今後、7~8%の経済成長を維持し、2050年にはGDPで中国、アメリカに次いで世界第3位になると予測されています。映画をのみならず、様々な分野で今後の活躍が期待される国です。

サウンドトラック

  PK Soundtrack(Amazon MP3)・・・リンク先で試聴可

1 Tharki Chokro by Swaroop Khan
2 Nanga Punga Dost by Shreya Ghoshal
3 Chaar Kadam by Shaan; Shreya Ghoshal
4 Love Is A Waste Of Time
  by Sonu Nigam; Shreya Ghoshal
5 Bhagwan Hai Kahan Re Tu by Sonu Nigam
6 Pk Dance Theme(Instrumental)
7 Dil Darbadar by Ankit Tiwari


動画クリップ(YouTube

撮影地(グーグルマップ)

 

 「PK ピーケイ」のDVD(Amazon

関連作品

ラージクマール・ヒラーニ監督xアーミル・カーンコラボ作品のDVD(Amazon

   「きっと、うまくいく」(2009年)

 

おすすめインド映画のDVD(Amazon

  「マダム・イン・ニューヨーク」(2010年)

  「マイネーム・イズ・ハーン」(2010年)

  「神様がくれた娘」(2011年)

  「スタンリーのお弁当箱」(2011年)

  「バルフィ!人生に唄えば」(2012年)

  「命ある限り」(2012年)

  「マッキー」(2012年)

  「めぐり逢わせのお弁当」(2014年)

関連記事

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp