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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「スター・トレック BEYOND」:早々に母艦が墜落する大胆なプロット、個性的な俳優、絶え間ないアクションが魅力の優れたリブート作品

スター・トレック BEYOND」(原題: Star Trek Beyond)は、2016年公開のアメリカのSF映画です。映画「スタートレック」シリーズの第13作、J・J・エイブラムスが製作を務める「ケルヴィン・タイムライン」シリーズの第3作である本作は、ジャスティン・リン監督、クリス・パインら出演で、宇宙船エンタープライズ号のキャプテン・カークとクルーたちが、宇宙の最果てにある未知の領域を探索し、自らや惑星連邦の存在意義の真価を問う新たな敵と遭遇する様を描いています。映画公開を目前に控えて亡くなったアントン・イェルチンの遺作となった作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ジャスティン・リン
脚本:サイモン・ペグ/ダグ・ユング
原作:ジーン・ロッデンベリ
出演:クリス・パイン(ジェームズ・T・カーク、エンタープライズ号の艦長)
   カール・アーバン(レナード・マッコイ、エンタープライズ号の船医)
   ゾーイ・サルダナ(ニヨータ・ウフーラ、エンタープライズ号の中心的クルー)
   サイモン・ペッグモンゴメリー・スコット、エンタープライズ号の機関主任)
   ジョン・チョー(ヒカル・スールー、エンタープライズ号の操舵手)
   アントン・イェルチン(パヴェル・チェコフ、エンタープライズ号の航海士)
   イドリス・エルバ(クラール、ヨークタウンへの攻撃を企てる異星人)
   ソフィア・ブテラ(ジェイラ、アルタミット星の住人)
   ジョー・タスリム(マナス、クラールの右腕)
   リディア・ウィルソン(カラーラ、保護された異星人)
   サラ・マリア・フォースバーグ(エイリアン原語部分の声)
   ディープ・ロイ(キーンザー、モンゴメリー・スコットの相方)
   メリッサ・ロクスバーグ(シル少尉、エンタープライズの乗組員)
   ショーレ・アグダシュルー(パリス准将、宇宙基地ヨークタウンの司令官)
   グレッグ・グランバーグ(フィネガン中佐、宇宙基地ヨークタウンの副官)
   ほか

 あらすじ

  • ジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)は、エイリアンとの話し合いに出向き、エイリアンの遺物の平和利用を訴えますが、交渉は決裂します。カークはエイリアンたちに襲撃され、緊急転送でU.S.S.エンタープライズ NCC-1701に戻っります。遺物の破壊的利用を恐れたカークは、船内のセキュリティボックスに厳重に保管、ワープ航法でエイリアンたちの許を去ります。
  • エンタープライズがファイブイヤーズ・ミッションに就いて3年の月日が流れ、カーク率いるエンタープライズのクルー達は仲間としての絆を育み、エンタープライズは我が家と呼べる存在となっています。そんな中、エンタープライズは物資補給のために宇宙基地ヨークタウンに停泊します。
  • そこで、ヨークタウンに1機の脱出ポッドが到着します。ポッドにはカラーラ(リディア・ウィルソン)という異星人が乗っており、連邦の星図に登録されてない惑星、アルタミット星に、彼女の乗っていた宇宙船が墜落したと救援を求めてきます。救出任務としてエンタープライズはカラーラを乗せてアルタミットに向けて出撃しますが、到着するや否や、正体不明の無数の小型機の襲撃を受け、エンタープライズは大破、戦闘不能に追い込まれます。
  • クラール(イドリス・エルバ)が、エンタープライズに保管されている遺物を狙って艦内に侵入してきます。カークは遺物を乗組員のシル少尉(メリッサ・ロクスバーグ)に託し、総員退艦を命じます。乗組員は脱出しますが、カーク、スポック(ザカリー・クイント)、マッコイ(カール・アーバン)、スコット(サイモン・ペッグ)、チェコフ(アントン・イェルチン)、カラーラの6人を除いて、クラール一味に捕えられ、エンタープライズはアルタミット星に墜落します。
  • 単身でアルタミット星に着陸したスコットは、そこでジェイラ(ソフィア・ブテラ)という星の住人に出会います。クラール一味に家族を殺されていたジェイラは、スコットを自分が住んでいる場所に連れていくと、過去に調査任務で行方不明になっていた宇宙艦隊所属のU.S.SフランクリンNX326の修理を依頼します。
  • アルタミット星に不時着したカークはチェコフ、カラーラと合流しますが、カークはカラーラが自分たちに嘘をついて自分たちをここに連れてきたと察っします。実はカラーラはクラール一味の仲間で、墜落したエンタープライズの残骸から通信手段を確保しようとした際に襲い掛かってきます。カークとチェコフはカラーラを倒して乗組員の探索を続け、スコットとジェイラに合流、U.S.Sフランクリンの修理を進め、転送装置を復旧させて、マッコイと墜落時に重傷を負ったスポックを救出します。
  • 一方クラールは、ヒカル(ジョン・チョー)やウフーラ(ゾーイ・サルダナ)が発信した救難信号を利用してヨークタウンから艦隊を遠ざけ、シルより遺物を奪うと、それを自分たちの遺物と組み合わせ、アブロナスという兵器を完成させます。クラールは以前から連邦のデータベースにアクセスして情報収集を続けており、アブロナスを用いてヨークタウンを攻撃するのが彼の目的です。
  • カークはそれを阻止するべくジェイラ、スポック、マッコイらと共にクラールの基地を襲撃します。カークは乗組員らを救出しますが、クラールは一足先に大部隊を引き連れてヨークタウンへ向かいます。カークはU.S.Sフランクリンを復旧させて離陸、追撃します・・・。

レビュー・解説

宇宙大作戦」のキャラクターを踏襲、勧善懲悪のクラシカルな設定ながら、開始三十分で母艦が墜落するという大胆なプロットと、個性的なキャスト、息もつかせぬアクションの連続で、観る者を魅了する優れたリブート作品です。

 

カーク艦長を演じるクリス・パインのみならず、スポックを演じるザカリー・クイント、マッコイを演じるカール・アーバン、スコットを演じるサイモン・ペッグ、スールーを演じるジョン・チョーチェコフを演じるアントン・イェルチンと、個性的な面々で、観る者を退屈させません。本作ではあまり活躍の場はありませんが、ウフーラを演じるゾーイ・サルダナも存在感があります。

 

クリス・パイン(ジェームズ・T・カーク、エンタープライズ号の艦長)

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ザカリー・クイント(スポック、エンタープライズ号の副長)

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カール・アーバン(レナード・マッコイ、エンタープライズ号の船医)

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サイモン・ペッグモンゴメリー・スコット、エンタープライズ号の機関主任)

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ジョン・チョー(ヒカル・スールー、エンタープライズ号の操舵手)

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アントン・イェルチン(パヴェル・チェコフ、エンタープライズ号の航海士)

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ゾーイ・サルダナ(ニヨータ・ウフーラ、エンタープライズ号の中心的クルー)

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悪役のクラールなど、異星人のキャラクターも魅力的です。また、ウフーラを除いて鍵となる女性キャラがすべて異星人というのも、興味深い設定です。ジェイラを演じるソフィア・ブテラは、アルジェリア系フランス人のダンサー、モデル、女優です。アルジェリアに生まれ、5歳からクラシックバレエを習いはじめ、10歳でフランスに移住、新体操のフランス代表チームに所属していました。「ストリートダンス2」(2012年)に出演している他、「キングスマン」(2014年)では、両足が義足の殺し屋を演じています。本作では、高い身体能力を活かし、見事な表現力を見せています。

 

イドリス・エルバ(クラール、ヨークタウンへの攻撃を企てる異星人)

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ソフィア・ブテラ(ジェイラ、アルタミット星の住人)

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リディア・ウィルソン(カラーラ、保護された異星人)

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メリッサ・ロクスバーグ(シル少尉、エンタープライズの乗組員)

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スタートレック」は、元々、アメリカのSFテレビドラマ・シリーズで、1966年の放映開始以来、これまでに5本のドラマ・シリーズ、1本のアニメ作品、13本の劇場映画版が制作されています。最初のシリーズである「宇宙大作戦」(1966年〜69年)から、理想の未来像を描きつつ様々な社会問題をSFの形で提示しています。「新スタートレック」(1987年〜94年)以降のシリーズでも、現実社会の複雑化を反映することにより、今日に至るヒットに結びつき、最新シーリズ「スタートレックディスカバリー」が、2017年5月から配信される予定という長寿シリーズです。

 

1977年に映画「スターウォーズ」がヒットし空前のSF映画ブームが到来した為、「宇宙大作戦」の直接的な続編として企画されていたテレビドラマ・シリーズの企画を急遽、劇場版に変更、公開されたのが「スタートレック」(1979年)です。以降、「宇宙大作戦」のメンバーが中心となった作品が計6本、公開されます。1994年には、「新スタートレック」のメンバーを中心とした「ジェネレーションズ」が公開され、以降、計4本が公開されます。その後、再び「宇宙大作戦」のメンバーが中心となった作品「スター・トレック」(2009年)、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(2013年)、「スター・トレック BEYOND」(2016年)が公開され、「ケルヴィン・タイムライン」シリーズと呼ばれています。

 

スター・トレック」、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は、J・J・エイブラムスが監督を手がけていましたが、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015年)の監督を務めた為に本作の監督に手が回らず、「ワイルド・スピード」シリーズでのアクションで話題を呼んだジャスティン・リン監督に依頼します。子どもの頃、小さなレストランを経営する両親が毎晩9時に閉店、10時に帰宅して家族揃って夕食を取り、11時からテレビで「スター・トレック」を観るのが生活の一部だったリン監督は、テレビ番組のエッセンスを取り入れつつ、新しい冒険を生み出そうと決意します。

 

エイブラムスに「君自身の作品を作ってほしい」、「思い切ってやれ」と言われたリン監督は、脚本のサイモン・ペッグとダグ・ユングに、「スタートレック脱構築(筆者注:古い構造を破壊し、新たな構造を生成すること)しよう、エンタープライズ号をバラバラにするんだ」と伝えます。かなり不満そうな顔をしたペグですが、話し合いを重ねていくうちに、ただ人を驚かせたくてエンタープライズ号を破壊するのではなく、「スタートレック」というものを本当に脱構築していくんだということを理解してくれたと言います。かくして、本作ではエンタープライズ号が開始三十分で墜落してしまいます。

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本作の公開一ヶ月前に、チェコフを演じたアントン・イェルチンが、ロサンゼルスの自宅で愛車と門に挟まれ、27歳という若さで事故死するという悲劇に見舞われてしまいます。「ケルヴィン・タイムライン」シリーズは4作目の制作が発表されていますが、プロデューサーのJ・J・エイブラムスは、今後のシリーズに関して、

彼の代わりはいない。代役は立てない。想像もつかないし、イェルチンは唯一無二だと思う。

と、語っています。

動画クリップ(YouTube

 

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関連作品

主な「スタートレック」シリーズ作品のDVD(Amazon

  「スタートレックII カーンの逆襲」(1982年)

  「スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!」(1984年)

  「スタートレックIV 故郷への長い道」(1986年)

  「スタートレックVI 未知の世界」(1991年)

  「ファーストコンタクト」(1996年)

 

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  「スター・トレック」(2009年)

  「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(2013年)

 

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  「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT 」(2006年)

  「ワイルド・スピード MAX」(2009年)

  「ワイルド・スピード MEGA MAX」(2011年)

  「ワイルド・スピード EURO MISSION」(2013年)

 

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  「アンストッパブル」(2010年)

  「最後の追跡」(2016年)

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