夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「から騒ぎ」:表情豊かなセリフや掛け合いなどシェイクスピア劇の魅力と、スペクタクルな映画の魅力を融合したロマンティック・コメディ

「から騒ぎ」(原題: Much Ado About Nothing)は、1993年公開のアメリカ・イギリス合作のコメディ映画です。シェイクスピアの戯曲「空騒ぎ」を原作に、ケネス・ブラナー監督・脚本、エマ・トンプソンデンゼル・ワシントンら出演で、中世のイタリアを舞台に二組の男女の恋の行方を陽気に明るく描いた作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ケネス・ブラナー
脚本:ケネス・ブラナー
原作:ウィリアム・シェイクスピア「から騒ぎ」
出演:ケネス・ブラナー(ベネディック)
   エマ・トンプソン(ベアトリス)
   デンゼル・ワシントン(ドン・ペドロ)
   ロバート・ショーン・レナード(クローディオ)
   キアヌ・リーヴスドン・ジョン
   ケイト・ベッキンセイル(ヒーロー)
   リチャード・ブライアーズ(レオナート)
   ブライアン・ブレスド(アントニオ)
   マイケル・キートン(ドグベリー)
   イメルダ・スタウントン(マーガレット)
   ジェラルド・ホラン(ボラチオ )
   リチャード・クリフォード(コンラード)
   ジミー・ユール(フランシス修道士)
   ベン・エルトン(ヴァージス)
   パトリック・ドイルバルサザール)
   ほか

あらすじ

  • イタリアの田園の地メシーナを治めるレオナート(リチャード・ブライアース)の一家は、陽光の降り注ぐ中、なごやかにピクニックを楽しんでいます。弟のアントニオ(ブライアン・ブレスド)、美しい娘ヒーロー(ケイト・ベッキンセイル)、侍女のアーシュラ(フィリダ・ロウ)とマーガレット(イメルダ・スタウントン)らは、姪でヒーローの従姉妹に当たる陽気で勝気な娘、ベアトリス(エマ・トンプソン)が朗読する詩に耳を傾けています。そこへ、急ぎの従者がアラゴンの領主ドン・ペドロ(デンゼル・ワシントン)がメシーナへ凱旋することを、知らせにやって来ます。レオナートたちは歓喜し、一家は大騒ぎになります。
  • 若くハンサムなクローディオ(ロバート・S・レナード)、独身主義者のベネディック(ケネス・ブラナー)、ペドロの異母弟ドン・ジョンキアヌ・リーヴス)らの一行はレオナートの館に到着し、ペドロは一家と再会します。クローディオとヒーローは好意を寄せ合い、ベネディックとベアトリスは減らず口を叩き合います。兄ペドロを疎ましく思っているドン・ジョンは、ただ一人、不服そうです。ヒーローに心ひかれたクローディオは、ペドロの計らいで彼女の気持ちを知り、両家の間で婚礼の話がまとまります。挙式の準備が進む中、レオナートとペドロは、顔を合わせれば口論ばかりしているベネディックとベアトリスのことが気になります。レオナートとペドロは、彼らがお互いに愛していることを知るよう、芝居を仕掛けます。
  • 周りの幸せなムードが気に入らないドン・ジョンは、挙式の前夜、手下を使って悪巧みを巡らせ、ペドロとクローディオにヒーローが不貞を犯したと思い込ませます。挙式当日、クローディオはヒーローを不貞の女と罵り、婚礼はなかったことにすると怒ります。ドン・ペドロとクローディオが去った後、神父は「これは何かの間違いだ。ヒーローは悲しみのあまり死んでしまったことにして、身を隠しなさい」と助言します・・・。

レビュー・解説

シェイクスピアの舞台劇「空騒ぎ」を脚色、スペクタクルな映画の魅力を巧みに取り入れた本作は、ケネス・プラナーの舞台俳優ならでは表情豊かな口調や、エマ・トンプソンとのテンポの良いセリフの応酬など、シェイクスピア劇の魅力を手軽に楽しめる優れた作品で、ロマンティック・コメディの名作でもあります。

 

舞台と映画は、似ているようで異なります。最も大きな違いは、舞台にはカメラワークも構図もなく、観客の目線そのものがカメラワークで、構図を決めるのは観客自身です。広い舞台に立つ俳優は、全身で感情を表現し、注目を集めなければならず、また、言葉でより強く感情を表現する必要がある為、シェークスピア劇では壮大で芸術的なセリフが展開されます。これが舞台劇ならではの迫力を生むわけですが、同じ演技を映画でやると強烈なものになってしまいます。そこで映画化する際の、脚色、演技、演出といったさじ加減が重要になってきます。本作は原作の「空騒ぎ」と同じ中世のイタリアを舞台に、セリフなどシェイクスピア劇の魅力を残しながらも、

  • アメリカ人俳優を積極的に起用
  • 陽光溢れるイタリアの田園でのピクニックシーン
  • 「荒野の七人」を思わせるドン・ペドロ一行の騎行シーン
  • 邸宅の裏庭、中庭、前庭をぶち抜く、長回しによる見事な舞踏シーン

など、映画ならではの魅力を取り入れ、幅広い層が楽しめる内容となっています。

 

オープニングの騎行シーン

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舞台劇にはないスペクタクルな迫力が演出されており、本作の怒涛のような展開を予見させる。

 

本作の最大の見所は、ケネス・ブラナーのパフォーマンスでしょう。彼は、ローレンス・オリヴィエの再来と言われ、シェイクスピア俳優として名を成したイギリスの俳優で、本作ではその魅力を強く放っています。特に、表情豊かな声の調子は舞台俳優ならではのもので、思わず引き込まれます。

 

ケネス・ブラナー(ベネディック)

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ケネス・ブラナー(1960年〜)は、イギリスの俳優・映画監督・脚本家・プロデューサー。「ローレンス・オリヴィエの再来」と呼ばれ、シェイクスピア俳優として有名。

もうひとつの見所は、ケネス・ブラナー(ベネディック)とエマ・トンプソン(ベアトリス)のテンポの良いセリフの応酬で、これはシェイクスピア劇の醍醐味です。本作には二組の男女が登場し、そのウェイティングはほぼ同等なのですが、この二人が実質主役とされているのも、劇の見せ場となる二人の掛け合いが随所に挿入されているからでしょう。エマ・トンプソンは、最も成功したイギリス女優のひとりと言われるオスカー女優で、本作はケネス・ブラナーと夫婦で出演しています(後に離婚)。彼女は文芸作品などで控えめな女性を演じる事が多いのですが、本作では強気な女性を演じ、ケネス・プラナーと見事な掛け合いを見せています。

 

エマ・トンプソン(ベアトリス)

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エマ・トンプソンは、1959年生まれの女優、喜劇役者、脚本家で、最も成功したイギリス女優のひとりと言われている。文芸作品などで皮肉な状況下にある控えめな女性を演じる事が多く、品があって芯の強いイギリス女性らしさを感じさせる一方で、優しげで、どことなくユーモラスな印象もある。俳優の両親の元に生まれ、1989年に映画デビュー、1992年に「ハワーズ・エンド」でアカデミー主演女優賞、1993年には「いつか晴れた日に」(主演女優賞)、「父の祈りを」(助演女優賞)でアカデミー賞にダブル・ノミネートされ、名実ともにイギリスのトップ女優となった。「いつか晴れた日に」(1995年)では脚本家としてアカデミー脚色賞も受賞している。彼女の演技は年齢、経験とともに円熟し、第二次世界大戦前のイギリス映画の様な抑制された感情を、知性で表現できる数少ない女優のひとりと言われている。

 

リチャード・ブライアーズ(レオナート)は、映画・テレビ・舞台と幅広く活躍するイギリスの俳優で、本作では舞台となるレオナート家の当主を演じています。この役は、舞台狭しと暴れまわる個性豊かな登場人物たちの流れを方向づける重要な役割で、メリハリを効かしながら、かつ前に出過ぎること無く、老練に演じています。

 

リチャード・ブライアーズ(レオナート)

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リチャード・ブライアーズ(1934年 - 2013年)は、イングランド出身の俳優で、映画・テレビ・舞台と幅広く活躍。1989年に大英帝国勲章OBEを、2003年にはCBEを授与されている。2013年、肺気腫の為、逝去。

 

もう一人、見逃せないのが、マイケル・キートン(ドグベリー)です。マイケル・キートンはアメリカの俳優で、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされるほどの演技派俳優ですが、本作でもアクの強い道化役を見事に演じており、ケネス・ブラナー監督も絶賛しています。

 

マイケル・キートン(左、ドグベリー)

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マイケル・キートン(1951年 - )は、ペンシルベニア州出身のアメリカの俳優。スタンダップ・コメディアンとしてキャリアを始め、芸名のキートンはコメディアンの「バスター・キートン」に由来する 。1982年に映画デビュー、ティム・バートン監督の「ビートルジュース」(1988年)で、ハイテンションな霊界のバイオ・エクソシストを演じ、人気を得ると同時に映画俳優としても知られるようになる。さらにバートン監督の「バットマン」(1989年)で初代ブルース・ウェイン役を演じ、演技派俳優としての人気を不動のものにする。「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)で、アカデミー主演男優賞にもノミネートされている。

その他、デンゼル・ワシントン(ドン・ペドロ)、ロバート・ショーン・レナード(クローディオ)、キアヌ・リーヴスドン・ジョン)、ケイト・ベッキンセイル(ヒーロー)といった若々しい大スターが出演しているのも本作の魅力です。デンゼル・ワシントンキアヌ・リーヴスが違和感なく、シェイクスピア劇に溶け込んでいるのが愉快です。これは、二人の類まれなる才能と、ケネス・ブラナー監督の巧みな演出によるものでしょう。ケイト・ベッキンセイルはこれが長編デビュー作で、あまりに初々しく、一瞬、誰かわかりませんでした。

 

デンゼル・ワシントン(ドン・ペドロ)

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デンゼル・ワシントン(1954年 - )は、ニューヨーク州出身のアメリカの俳優、映画監督、映画プロデューサー。これまでに2回アカデミー賞を受賞するなど、アメリカを代表する映画俳優のひとり。官僚、将校、ジャーナリストなど、硬派なインテリで真面目な性格の人物を演じることが多い。1989年、「グローリー」で、アカデミー助演男優賞を受賞、2002年に「トレーニングデイ」で、アフリカ系アメリカ人ではシドニー・ポワチエに続いて2人目となるアカデミー主演男優賞を受賞している。

 

ロバート・ショーン・レナード(右、クローディオ)

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ロバート・ショーン・レナード(1969年〜)はニュージャージー州出身のアメリカの俳優。映画・舞台・テレビと幅広く活躍していたが、最近は舞台が注力している模様。

 

キアヌ・リーヴスドン・ジョン

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キアヌ・リーヴス(1964年 - )は、レバノン出生の多国籍の俳優・ミュージシャン。1994年の映画「スピード」の大ヒットにより国際的スターとなる。1999年の映画「マトリックス」が世界的に大ヒット、3部作に主演し、不動の人気を得た。

 

ケイト・ベッキンセイル(ヒーロー)

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ケイト・ベッキンセイル(1973年 - )は、イギリスの女優。両親ともに俳優で、曽祖父がミャンマー系。オックスフォード大学で仏・露文学を学ぶ。在学中に本作のオーディションに受かり、映画デビュー。イギリス系とアジア系の血が混じった美貌は「絶世の美女」、「ポスト・イングリッド・バーグマン」とも呼ばれ、注目を集め続けている。米国の映画専門サイト「インディペンデント・クリティクス」の「最も美しい顔100人」に15年連続ランクイン。また、2009年に「エクスワイア」誌で「最もセクシーな女性」に選ばれている。「アンダーワールド」シリーズ(2003年〜)などのヒット作に出演する他、「アビエイター」(2004年)や「ザ・クリミナル 合衆国の陰謀」(2008年)など、評価の高い作品にも出演しているが、演技よりも容姿に注目されることが多い。幼い頃から読書好きで、16歳でイギリスの若手作家のコンテストで2年連続優勝したことがある。

 

シェイクスピア劇を舞台で観るとなると機会も限られますが、映画のスペクタクルな魅力をふんだんに取り入れた本作は、第一級の舞台俳優らによるセリフの応酬など、シェイクスピア劇を手軽に楽しめるのが魅力です。

 

エンディングの舞踏シーン

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撮影地(グーグルマップ)

 

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関連作品

「から騒ぎ」の原作本Amazon)

  ウィリアム・シェイクスピア「から騒ぎ」

 

映画化されたシェイクスピアのDVD(Amazon

  「ハムレット」(1948年)ローレンス・オリビエ監督・主演

  「ジュリアス・シーザー」(1953年)ジョセフ・L・マンキウィッツ監督

  「禁断の惑星」(1956年)テンペスト」翻案

  「ウエスト・サイド物語」(1961年)ロミオとジュリエット」翻案

  「ロミオとジュリエット」(1968年) フランコ・ゼフィレッリ監督

  「乱」(1985年)リア王」翻案 黒澤明監督、仲代達矢主演

  「ヘンリー五世」(1989年)ケネス・ブラナー監督・主演

     「ハムレット」(1996年)ケネス・ブラナー監督・主演

  「リチャード三世」(1996年)

       リチャード・ロンクレイン監督、イアン・マッケラン主演

  「恋に落ちたシェイクスピア」(1998年)

       ロミオとジュリエット」、「十二夜」翻案

  「英雄の証明」(2011年)コリオレイナス」翻案レイフ・ファインズ監督・主演

 

ケネス・ブラナー監督/出演作品のDVD(Amazon

  「愛と死の間で」(1991年) 監督・主演

  「ヘンリー五世」(1989年)監督・主演

     「ハムレット」(1996年)監督・主演

  「裸足の1500マイル」(2002年)出演

  「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(2002年)出演

  「マリリン 7日間の恋」(2011年)出演

  「シンデレラ 」(2015年) 監督

 

エマ・トンプソン出演作品 

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ロマンティック・コメディの名作

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