夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ファインディング・ドリー」:水中の風景が美しく、ユーモラスで感動的、そしてちょっと考えさせられる、「ニモ」の素晴らしい続編

ファインディング・ドリー」(原題:Finding Dory)は、2016年公開のアメリカのアニメーション映画です。カクレクマノミのニモと愉快な仲間たちによる冒険を描いた「ファインディング・ニモ」(2003年)の続編として、アンドリュー・スタントン/アンガス・マクレーン共同監督、アンドリュー・スタントン脚本で、前作から1年後の世界を舞台に、なんでもすぐに忘れてしまうドリーが唯一忘れなかった大事な家族を捜す為、様々なキャラクターとともに繰り広げる冒険の旅を描いています。ニモとマーリンの親子やカメのクラッシュなど「ファインディング・ニモ」でおなじみのキャラクターも登場します。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:アンドリュー・スタントン/アンガス・マクレー
脚本:アンドリュー・スタントン
制作:リンジー・コリンズ/ジョン・ラセター(総指揮)
出演:

  • ドリー
    ナンヨウハギの雌。主人公。記憶障害を持つが、知能が高く、人間やクジラの言葉も理解できる。はぐれた両親と再会する為に旅に出る。
  • マーリン
    カクレクマノミの雄。前作の冒険以降、無茶なことは極力避けるようになり、当初はドリーの両親を探す旅にも消極的だった。
  • ニモ
    マーリンの息子。ドリーの一番の理解者で、彼女が何か忘れてもすぐにフォローする。ドリーの両親を探す旅に協力する。
  • ハンク
    ミズダコの雄。脚が7本しかない。環境に合わせて体の色を変える能力を持つ。研究所に保護されたドリーと出会い、タグと引き換えに両親の捜索を手伝う。
  • デスティニー
    ジンベエザメの雌。水族館の水槽に住む。視力が弱く、よく水槽の壁にぶつかる。ドリーにに、「私のこと覚えてる?」と声をかける。
  • ベイリー
    シロイルカの雄。デスティニーの隣の水槽に住む。頭をぶつけた影響でエコロケーション(音の反響で周囲の状況を知ること)が出来なくなったと思い込む。
  • チャーリーとジェニー
    ナンヨウハギの夫婦。ドリーの両親。愛する一人娘とはぐれてしまい、ドリーの帰りを待ち、道標の貝殻を並べ続ける。
  • フルークとラダー
    岩の上で昼寝をするのが大好きなアシカのコンビ。大きくて黒い方がフルークで小さくて茶色い方がラダー。ジェラルドが岩の上に乗ろうとする度に追い払う。
  • ジェラルド
    太い繋がり眉毛が特徴のアシカ。よくフルーク&ラダーが昼寝している岩の上に乗ろうとしては追い払われる。
  • ベッキー
    フルーク&ラダーの相棒のアビ。普段から何も考えておらずで、肝心なところでなかなか役に立たない。

あらすじ

  • 子供の頃に両親とはぐれたことを思い出したドリーは、改めて両親を探すことを決心、唯一覚えていた「カリフォルニア・モロベイの宝石」という言葉を手掛かりに、ニモ、マーリンと共に両親を探す旅に出ます。
  • 3匹はモロベイに着きますが、ドリーが人間に捕まり、海洋生物研究所の隔離棟に連れて行かれます。隔離棟にいたミズダコのハンクよると、研究所の生き物は適切な処置を受けて自然へ還されるが、クリーヴランドの水族館に送られるものにはタグが付けられるといいます。自然界にいい思い出がないハンクは水族館での隠居を望み、ドリーのタグと引き換えに家族の元へ連れて行くことになります。
  • 途中、ジンベエザメのデスティニーとシロイルカのベイリーが、ドリーの家はオープン・オーシャンという展示水槽にあると教えます。「カリフォルニアモロ・ベイの宝石」は、ドリーが育った海洋生物研究所がある場所でした。ドリーはハンクにタグを渡してオープン・オーシャンに入り、ハンクは隔離棟へ戻ります。
  • 水底に並べられた貝殻を見たドリーは、それが家への道しるべとして両親が置いてくれたものであることを思い出し、実家にたどり着きますが、しかしそこはもぬけの殻でした。ナンヨウハギは全て隔離棟に移されたと聞いたドリーは、パイプを通って再び隔離棟へ向かいます。
  • ドリーはパイプの中でニモ、マーリンと再会、ハンクの助けを借りて隔離棟のナンヨウハギの水槽に入ります。ドリーの両親はかつてドリーを追って隔離棟へ行き戻らなかったことを知り、ドリーは動揺します。ハンクが3匹を水槽から出そうとした時に職員に見つかり、ドリーは海につながるパイプへ転落、水槽に残されたニモとマーリンはクリーヴランド行きのトラックに載せられてます・・・。

レビュー・解説

名作「ファインディング・ニモ」に続く「ファインディング・ドリー」は、水中の風景が美しく、ユーモラスで感動的、それでいてちょっと考えさせられる、前作に匹敵する傑作です。

 

最近のディズニー・アニメのヒット作、「ズートピア」では種族間の差別がひとつのテーマとなっていましたが、本作では障害やキャラクターが抱える様々な問題がひとつのテーマとなっています。もっとも明確に描かれているのがドリーの記憶障害ですが、本人のみならず、

  • ドリーの将来を心配する
  • ドリーに必要なスキルを教える
  • あるがままのドリーに愛情と喜びを示す

など、障害を持つ子の両親の言動まで丁寧に描いています。

 

その他のキャラクーも、問題を抱えています。

  • ミズダコのハンクは自然界にいい思い出がなく水族館で隠居したいと考えています
  • ジンベエザメのデスティニーは、視力が弱く、壁にぶつかってばかりいます
  • シロイルカのベイリーは、頭をぶつけたために、イルカの特技であるエコロケーション(音の反響で周囲の状況を知ること)ができなくなったと思い込んでいます
  • 仲間はずれにされているアシカのジェラルドは、暖かい岩の上に登ろうとする度に、同じアシカのフルークとラダーに追い払われてしまいます
  • 何も考えないアビのベッキーは、なかなか、人の役に立てません

 

ドリーが助けを求めても、救いの手を差し出さない生き物も少なくないのですが、これらの不完全な仲間たちが、少しずつ、直接、間接にドリーの両親を探す旅を後押しする形で、物語は進みます(一気にではなく、少しずつ、直接、間接にというのがリアル)。また、記憶障害はドリーの弱点ですが、余計なことを考えずに自然体で対処していくことが、彼女の強みとして描かれています(計算ずくでなくても良いことは起こる)。

 

なかなか良く出来たアニメで、主人公のドリーのみならず、ミズダコのハンクが活躍します。水族館内の案内、移動で活躍するだけではなく、エンド・クレジットでも数々の擬態の業を独演するという破格の取扱です。ドリーにフォーカスしすぎると話が教訓じみてしまいますが、ハンクが活躍することにより、可笑しさが倍増する仕掛けになっており、ハンクが主人公になってしまわないよう、ドリーとのバランスが巧みに調整されています。

 

幼いころのドリー

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ドリーの両親(チャーリー&ジェニー)

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ドリー(上)、ニモ(下)、マーリン(右)

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ミズダコのハンク

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ジンベエザメのデスティニー

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シロイルカのベイリー

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アシカのフルークとラダー

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アシカのジェラルド

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アビのベッキー

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1. ケルプケーキ
2. ファインディング・ドリー (メイン・タイトル)
3. ロスト・アット・シー
4. ワン・イヤー・レイター
5. ミグレーション・ソング
6. オ,ウィーアー・ゴーイング・ホーム
7. ジュエル・オブ・モロー・ベイ
8. ナーリー・チョップ
9. スクイッド・チェイス
10. シガニー・ウィーバー
11. ハンク
12. ノウバディーズ・ファイン
13. レベッカ・ダーリング
14. ミート・デスティニー
15. ジョーカー・アット・ワーク
16. ベッキー・フライズ
17. ハンズ
18. オールモスト・ホーム
19. オープン・オーシャン
20. トゥ・レフツ・アンド・ア・ライト
21. エヴリシング・アバウト・ユー
22. クアランティン
23. ワープ
24. オール・アローン
25. シェルズ
26. ノー・ウォールズ
27. オーケー・ウィズ・クレイジー
28. ハイド・アンド・シーク
29. クワイト・ア・ビュー
30. アンフォゲッタブル
31. スリー・ハーツ  (エンド・タイトル)
32. ルーン・チェーン
33. フィッシュ・フー・ワンダー
34. リリース
35. アンフォゲッタブル
 (日本盤ボーナストラック)

撮影地(グーグルマップ)

 

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エンド・クレジットが素晴らしい映画

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