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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「デッドプール」:テンポ良く喜々として冒涜的、R指定で従来のヒーロー像を打破、X-MENスピンオフの情感豊かなアクション・コメディ

デッドプール」(原題:Deadpool)は、2016年公開のアメリカのアクション・コメディ映画です。マーベル・コミックの同名キャラクターを基に、ティム・ミラー監督、ライアン・レイノルズモリーナ・バッカリンら出演で、怪しい組織の人体実験によって不死の肉体を手に入れた型破りなスーパー・ヒーロー、デッドプールの活躍を、ユーモアたっぷりに描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ティム・ミラー
脚本:レット・リース/ポール・ワーニック
原作:ファビアン・ニシーザ/ロブ・ライフェルド
出演:

  • ライアン・レイノルズ
    ウェイド・ウィルソン / デッドプール、傷の治癒する能力を持つ
  • モリーナ・バッカリン
    ヴァネッサ、ウェイドのガールフレンド、ストリッパー
  • エド・スクライン
    フランシス・フリーマン/エイジャックス、人工のミュータントを製造
  • T・J・ミラー
    ウィーゼル、ウェイドの行きつけの酒場の店主
  • ジーナ・カラーノ
    エンジェル・ダスト、女性ミュータント、フランシスの側近
  • レスリー・アガムズ
    ブラインド・アル、盲目の老婆、コカインを常用、ウェイドと同居
  • ブリアナ・ヒルデブランド
    ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド、X-MENの訓練生
  • ステファン・カピチッチ
    コロッサス、X-MENのメンバー、デッドプールX-MENへ勧誘する
  • カラン・ソーニ
    ドーピンダー、タクシーの運転手、インド系
  • ジェド・リース
    リクルーター、エイジャックスの配下、ウェイドを実験に誘う
  • ロブ・ヘイター
    ボブ、ウェイドと旧知の傭兵、既婚者で子供がいる 

  ほか

あらすじ

  • 運転手に「デッドプール」と名乗った真っ赤なコスチュームの男が、タクシーで到着したのはハイウェイの上。デッドプールは、そこで宿敵への復讐を果たそうとします・・・。 その2年前、かつて特殊部隊の有能な傭兵だったウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は第一線を引退後、ニューヨークで好き勝手に悪い奴を懲らしめては、金を稼ぐというヒーロー気取りの生活を送っていました。そんなウェイドは高級娼婦のヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と出会い愛し合い結婚の約束をしますが、幸福な未来を夢見たのも束の間、原因不明の痛みに襲われたウェイドに医師が下した診断は、全身にガンが転移しているという事実でした。
  • 余命わずかとなり、激しく落ち込むウェイドは、酒場に来たリクルーターの男の誘いに乗り、がんの治療と引き換えに極秘の人体実験の被験者となることを決め、ヴァネッサの前から姿を消します。ウェイドは、余命宣告を受けた者たちに人体実験で肉体改造をを施し、戦闘マシンとして売り飛ばす施設に案内され、施設を仕切るエイジャックス(エド・スクライン)というミュータントの男に薬品を投与され、変異を誘発する為に拷問を受けます。ウェイドの細胞は変異し、どんな攻撃を受けても回復できる肉体を手に入れますが、引き換えに全身が爛れた醜い姿に変異します。
  • 怒りが収まらないウェイドは、エイジャックスとの激しい戦いの末、施設から逃亡しますが、ヴァネッサに素顔を見せる勇気がなく、再会を避けて盲目の老婆アル(レスリー・アガムズ)の家に居候します。ウェイドは自作のマスクで顔を隠し、「デッドプール」と名乗って、エイジャックスを探し始めます。元の肉体を手に入れ、もう一度、ヴァネッサと幸せな生活を送りたいという思いに突き動かされ、エイジャックスへの手がかりを見つけては、次々と敵を倒していきます・・・。

レビュー・解説

スピーディで可笑しく、喜々として冒涜的、「デッドプール」は第四の壁とともに大人向けのエンタメでスーパーヒーローのステレオタイプを荒々しく打ち破る、エモーショナルなアクション・コメディです。

 

冒頭、高品質の3D-VFXによるストップ・モーションのアクション・シーンに、揶揄するかのようなクレジットが重なります。

  • some douchebag's film(お馬鹿映画、douchebagは原義が膣洗浄器の強烈な形容)
  • starring God's perfect idiot(主演:愚かなる神の申し子)
  • (背景に「ライアン・レイノルズ、世界一セクシーな男」という見出しのピープル・マガジン)
  • a hot chick(共演:熱いイイ女)
  • a British villain (共演:イギリス人の悪党) 
  • the comic relief(お笑い担当の男)
  • a moody teen(不機嫌なティーン)
  • a CGI character(CGキャラクター)
  • a gratuitous cameo(友情カメオ出演
  • produced by asshats(制作:間抜けども)
  • written by the real heroes here(脚本:本当のヒーローたち)
  • and directed by an overpaid tool(ギャラ貰いすぎの役立たず)
  • (背景に「Hi! I'm Deadpool.」(やあ、俺はデッドプール)という手書きの絵)

と出て、本編に突入しますが、本格的な3D-VFXアクション・シーンと何やら本音を晒すようで楽しげなこのクレジットの組み合わせに、思わず本編への期待が高まりますが、まさにこのオープニング・クレジットが本編の本格的アクションと強烈なユーモアを象徴しています。

 

加えて、背伸びしたスーパーヒーローの意識を持てない主人公の、時に冒涜なほどな正直な感情や言葉の発露がこの作品の特徴であり、アクション、ユーモア、感情がこの作品の三大要素だと、主演のライアン・レイノルズは語っています。

そこには、3つの重要な要素があると思ってる。まず素晴らしいアクションだね。他の映画に比べて洗練され過ぎていなくて、直感的でリアルなんだ。それと、とてもエモーショナルな作品だということも大事。だけど、映画を観た直後、観客はそういったことにすぐには気づかない。なぜなら、最高におかしいユーモアたっぷりの映画だからさ! この3つの要素(アクション、感情、ユーモア)が機能することで、正しい「デッドプール」が出来上がっているんだ。デッドプールを、観客が感情移入できる状況に置き、なぜ彼が追い詰められているかを観客が理解するようにすれば、彼はもっと自由になって、おかしいことをできるようになる。そうすればうまくいくんだ。映画としてハートを維持出来るしね。そういったことが観客に伝わったんだと思う。(ライアン・レイノルズ

 

また、オープニング・クレジットの最後の「Hi! I'm Deadpool.」(やあ、俺はデッドプール)という手書きの絵は、主人公のデッドプールが「第四の壁」を破って観客に話しかけて来ることを象徴しています。「第四の壁」は舞台用語で、フィクションである演劇内の世界と、観客のいる現実世界との境界を表します。通常、観客はこの第4の壁を通して演じられる世界を見ますが、デットプールはその「第四の壁」を越えて、現実世界の観客に話しかけてきます。本作では、オープニング・クレジットを含めて、その回数が26回にも及び、破天荒だが憎めない悪友のような、身近に感じられる効果を生み出しています。

 

主演のライアン・レイノルズバンクーバー出身のカナダ人俳優で、1993年に映画デビュー、「ラブ・ダイアリーズ」(2008年)、「アドベンチャーランドへようこそ」(2009年)、「[リミット]」(2010年)、「ワイルド・ギャンブル」(2015年)など、評価の高い作品への出演も多いのですが、

と、出演したアメコミ映画は不作続きでした。

 

彼と「デッドプール」の出会いは、2004年にまで遡ります。当時、「デッドプール」の権利を持っていたニューライン・シネマの重役たちが「知っておくべきだよ!君がデッドプールなんだから!」と言って送ってきたコミックの中に、「俺はライアン・レイノルズとシャー・ペイを混ぜたように見える」という、デッドプールのセリフがありました。コミックを読み続けていくうちに、デッドプールに感情移入してしまい、ただでもこの役をやりたいと思ったといいます。その後、リスクを避けるために、まず「ウルヴァリンX-MEN ZERO」に脇役でデッドプールを出してから、デッドプールの単独映画をやることになりました。

 

もともと、デッドプールは善悪に偏らない道化回し的なキャラクターで、自分がコミックのキャラクターだと認識しており、第四の壁を破って読者に語り掛けたり、編集部に文句を言ったりもするのですが、「ウルヴァリンX-MEN ZERO」のデッドプールは縫われた口が癒着、一言も喋れず、意識も奪われてパソコンからの指令に従って行動するというもので、レイノルズがやりたいものでも望むものでもありませんでした。この映画は他の「ウルヴァリン」シリーズをほど評判が良くなく、「デッドプール」の単独映画化も難しくしてしまいました。しかしながら、これまで40本以上の作品に出演、プロデューサーとしての手腕も持つレイノルズが根気よく説得した結果、ついにスタジオは「デッドプール」映画化のオーケーを出します。

スタジオは、それまでの10年間はずっと「ダメ」と言い続けて、多分あまりにも僕たちがしつこいんで根負けしたんだと思う(笑)「ぎりぎりの予算を出すから、映画を作って来い。もう我々をほっといてくれ」って感じでね。僕たちとしては大喜びさ。現場に誰も指図する人もいなかったし、規制する人もいなかった。(ライアン・レイノルズ) 

 

2億ドル近くとも言われるハリウッド産スーパーヒーロー映画と比べ、本作の制作費は約5,800万ドルという低予算でしたが、制作費のかなりの部分を占めるVFXについて、

  • 登場するX-MENのメンバーの数を絞る
  • 登場するX-MENの特殊能力はVFXのコストがかからないものにする
  • 上映時間を大作映画より20−30分短い105分に抑える

ことにより、クォリティを落とすことなく費用削減する一方で、主役のデッドプールの個性を徹底的に押しだし、R指定に臆することなく、暴力的、冒涜的、性的な表現も取り込んでいます。

デッドプールは冗談ばかり言ってるけど、どこか心に響くものもある。彼のユーモアは痛みを覆い隠すためのものなんだ。すごく大事に思ったのは、ヤツがただ可笑しいことを言ってるだけのキャラだと、映画としてまとまりがなくなってしまう。まずは現実に根ざした男にしたかったんだ。その後、解放して思いっきり自由にやらせるためにね。

普通、人間って酷いことを考えても、脳のどこかでフィルターにかけて「それは口に出して言ってはいけない」と規制しているんだ。でも、デッドプールはそれを完全に無視している。言いたいことは何でも言ってしまう。そこが爽快だね。あと、デッドプールアンチヒーローで、良いヤツではないけど、悪いヤツとも言えない。僕は道徳的に柔軟性があるキャラクターを演じるのが楽しかった。しかも、これは珍しいことだよね。コミックの世界、特にマーベル・コミック、X-MENの世界はみんな極端に良いヤツばかりだ。そんな世の中にデッドプールを送り出せたのは良かった。肝っ玉が据わったヤツがひとりくらい居てもいいんじゃない?

今作を初めて観たとき、僕は泣いてしまったよ。今までずっと思い続けていた、夢見ていたデッドプールだったからね。コミックからそのまんま抜け出してきたみたいだった。(ライアン・レイノルズ

 

アベンジャーズ・プロジェクトやX-MENシリーズなど大作映画は、出演するヒーローの数が多く、上映時間も長くなるため、費用を回収するためにより幅広く観客を集めようとR指定を避け、過激な表現を抑えます。「デッドプール」は、そんな大作映画の隙を突くことになりました。

今、ハリウッドでは実に多くのスーパーヒーロー映画が作られていて、(観客の)飽きがピークに達してきている。でも『デッドプール』はその手のジャンル映画やスーパーヒーローに比べて、少し変わった見方で作られていて新鮮だ。だから公開タイミングも、とてもラッキーだったね。(ライアン・レイノルズ

全世界興行収入は7億6,000万ドルを突破し、「X−MEN」シリーズ8作目にして歴代最高、さらにR指定作品としても「マトリックス・リローデッド」(2003年)を抜いて歴代1位のヒット作となりました。まさに絵に描いたように企画とタイミングのツボを押さえた作品と言えます。

 

ライアン・レイノルズ(ウェイド・ウィルソン / デッドプール

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オープニング・クレジットで「主演:愚かなる神の申し子」と紹介されている。背景に映る「ライアン・レイノルズ、世界一セクシーな男」という見出しのピープル・マガジンは、実際のもの。

 

デッド・プール(破天荒だが憎めないキャラクター)

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  • 忍者のように二刀流の刀を使う

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    ウェイドはデッドプールになる前、軍の特殊部隊で訓練を受け暗殺者となった。日本に渡り相撲部屋に入門したこともある。

  • 第4の壁を破る

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    デッドプールは第4の壁を破り、観客に話しかけてくる。

 

ウェイド・ウィルソン(デッドプールの素顔)

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原作コミックで「ライアン・レイノルズとシャー・ペイを混ぜたように見える」と表現されている。

今回のメイクデザインはオスカーも受賞しているアーティストのもので、彼は天才だ。でも最初に予定していたメイクよりは随分と抑えたものにした。これに関してはスタジオ側から「ちょっと顔が気持ち悪すぎる。」という意見が出たからなんだ。結果的には良かったと思う。人間らしさが崩れ、大切なものをすべて奪われて、二度と愛を取り戻せないと彼が感じるようにしたかった。顔のメイクだけでも4時間かかった。(ライアン・レイノルズ

  • シャー・ペイ
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モリーナ・バッカリン(ヴァネッサ、ウェイドのガールフレンド、ストリッパー)

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オープニング・クレジットで「共演:熱いイイ女」と紹介されている。原作コミックではヴァネッサもミュータントだが、本作では一般人。

 

エド・スクライン(フランシス・フリーマン/エイジャックス)

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オープニング・クレジットで「共演:イギリス人の悪党」と紹介されている。自らもミュータントになり、人工ミュータント製造施設を仕切っている。

T・J・ミラー(ウィーゼル、ウェイドが行きつけの酒場の店主)

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オープニング・クレジットで「お笑い担当の男」と紹介されている。

 

ブリアナ・ヒルデブランド(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド)

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オープニング・クレジットで不機嫌なティーンと紹介されているX-MENの訓練生。

 

ステファン・カピチッチ(コロッサス、X-MENのメンバー)

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オープニング・クレジットで「CGキャラクター」と紹介されている。デッドプールX-MENへ勧誘する。

 

ジーナ・カラーノ(エンジェル・ダスト、女性ミュータント、フランシスの側近)

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レスリー・アガムズ(ブラインド・アル、盲目の老婆)

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コカインを常用、ウェイドと同居している。

動画クリップ(YouTube

 

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撮影地(グーグルマップ) 

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関連作品

X-MEN」シリーズ(旧三部作)のDVD(Amazon) 

  「X-メン」(2000年)

  「X-MEN2」(2003年)

  「X-MEN: ファイナル ディシジョン 」(2006年)

  

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  「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」(2011年)

  「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014年)

     「X-MEN:アポカリプス」(2016年)

 

X-MEN」スピンオフ・シリーズのDVD(Amazon

  「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」(2009年)

  「ウルヴァリン: SAMURAI」(2013年)

  「デッドプール」(2016年)・・・本作

  「ウルヴァリン第3弾」(2017年公開予定)

 

ライアン・レイノルズ出演作品のDVD(Amazon

  「ラブ・ダイアリーズ」(2008年)

  「アドベンチャーランドへようこそ」(2009年)

  「[リミット]」(2010年)

  「ワイルド・ギャンブル」(2015年)

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