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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ナッシュビル」:数多くのオリジナル曲をフィーチャー、建国200年前夜のアメリカを描いた群像劇は壮大な世界観を持つブラックコメディ

ナッシュビル」(原題:Nashville)は、1975年公開のアメリカのブラック・コメディ映画です。ロバート・アルトマン監督、24人のメインキャストらで、アメリカで最も保守的な町と言われ、カントリー&ウエスタンのメッカとして有名なテネシー州の州都ナッシュビルに集まった24人の登場人物たちが、5日間に織り成す人間模様を通してアメリカの素顔を描いています。「ナッシュビル」はアルトマンの最高傑作の一つとして知られ、数々の賞を受賞するとともに、またアメリカ国立フィルム登録簿に登録されている作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ロバート・アルトマン
脚本:ジョーン・テュークスベリー
出演:ディヴィッド・アーキン(ノーマン、自意識過剰の運転手)
   バーバラ・バクスレー (レディ・パール、ヘヴン・ハミルトンのパートナー)
   ネッド・ビーティ(デルバート・デル・リース、ヘヴン・ハミルトンの弁護士)
   カレン・ブラック(コニー・ホワイト、カントリー歌手、バーバラのライバル)
   ロニー・ブレイクリー(バーバラ・ジーン、ナッシュビルの象徴的な歌手)
   ティモシー・ブラウン(トミー・ブラウン、アフリカ系アメリカ人の歌手)
   キース・キャラダイン(トム・フランク、ビル・マリー&トムのメンバー、色男)
   ジェラルディン・チャップリンオパールBBCのラジオ・リポーターを自称)
   ロバート・ドクィ(ウェイド・クーリー、空港レストランの料理人)
   シェリー・デュヴァル(マーサ、ミスター・グリーンの姪)
   アレン・ガーフィールド(バーネット、バーバラ・ジーンの夫、マネージャー)
   ヘンリー・ギブソン(ヘヴン・ハミルトン、有名カントリー歌手、政界へ熱意)
   スコット・グレン(グレン・ケリー、バーバラ・ジーンを観るベトナム帰還兵)
   ジェフ・ゴールドブラム(無口なライダー、改造三輪バイクで乗りつける)
   バーバラ・ハリス(ウィニフレッド、シンガー・ソングライターを目指す)
   デヴィッド・ヘイワード(ケニー・フレイザー、ミスター・グリーンに間借)
   マイケル・マーフィー(ジョン・トリプレット、選挙キャンペーン主催者)
   アラン・ニコルズ(ビル、ビル・マリー&トムのメンバー、マリーの夫)
   デイヴ・ピール(バド・ハミルトン、ヘヴンの息子、ハーバード卒、父の片腕)
   クリスティナ・レインズ(マリー、ビル・マリー&トムのメンバー、ビルの妻)
   バート・レムゼン( スター、逃げた妻のウィニフレッドをひたすら追いかける)
   リリー・トムリン(リネア・リース、デルバートの妻、ゴスペル歌手、子二人)
   グウェン・ウェルズ(スーリーン・ゲイ、空港レストランのウェイトレス)
   キーナン・ウィン(ミスター・グリーン、マーサの叔父、妻が病気で入院)
   ほか

あらすじ

物語はハル・フィリップ・ウォーカー候補の大統領予備選挙のキャンペーンまでの5日間を描いています。

  • 〜1日目〜
    国民の側に立った政治を目指すという大統領候補ハル・フィリップ・ウォーカーの声を大音量で流すキャンペーン・カーが、ムシ暑い初夏のナッシュビルを走り回る所から始まります。一流カントリー歌手のヘヴン・ハミルトン(ヘンリー・ギブソン)は、アメリカ建国200周年に向け愛国心を歌う曲を収録している最中に、スタジオのピアノ奏者のフロッグ(リチャード・バスキン)に対してのイライラが募ります。オパール(ジェラルディン・チャップリン)という英国人女性がスタジオに現れ、BBCのドキュメンタリーを作ると主張しますが、ヘヴンに追い出されます。連れて行かれた別のスタジオでは、白人ゴスペル歌手のリネア・リース(リリー・トムリン)が黒人コーラスたちと収録しています。
    売れっ子カントリー歌手のバーバラ・ジーン(ロニー・ブレイクリー)が火傷の治療後ナッシュビルに戻り、ヘヴン・ハミルトンや彼のパートナーのレディ・パール(バーバラ・バクスレー)など、ナッシュビル音楽界の精鋭たちが彼女を迎えるため空港に集まります。米軍兵のグレン・ケリー(スコット・グレン)や、アルバムのレコーディング中の人気フォーク・トリオのビル・マリー&トムらも空港にやって来ます。ビル(アラン・ニコルズ)とマリー(クリスティナ・レインズ)はあまり夫婦仲が良くありません。マリーはプレイボーイのトム(キース・キャラダイン)を愛しています。ミスター・グリーン(キーナン・ウィン)の妻エスターは入院中で、表向き見舞いに来たとする10代のミーハーな姪、L・A・ジョーンと名を変えたマーサ(シェリー・デュヴァル)を迎えに空港にやって来ます。しかしマーサは男性ミュージシャンを追いかけるのに忙しく、見舞いを何度も先延ばしにします。アフリカ系アメリカ人の料理人ウェイド・クーリー(ロバート・ドクィ)とカントリー歌手を目指すも芽が出ないウェイトレスのスーリーン・ゲイ(グウェン・ウェルズ)は空港のレストランで働いています。
    駐機場で群集に迎えられた後、バーバラ・ジーンは暑さにより倒れてしまい、短気な夫でありマネージャーのバーネット(アレン・ガーフィールド)と側近たちは彼女を大学病院へ連れて行きます。来場者は飛行場を後にし、ハイウェイで玉突き事故の渋滞に遭います。騒動の最中、カントリー歌手を目指すウィニフレッド(バーバラ・ハリス)は、グランド・オール・オープリーに行くことを許さない夫スター(バート・レムゼン)から逃げています。スターは、バイオリンのケースを持ってナッシュビルに着いたばかりのケニー・フレイザー(デヴィッド・ヘイワード)を乗せています。オパールはこの交通渋滞を利用してリネアと、オープリーで演奏するアフリカ系アメリカ人カントリー歌手のトミー・ブラウン(ティモシー・ブラウン)にインタビューを行います。トミーと仲間たちはレディ・パールのクラブへ行きますが、酔っ払って白人女性をナンパしようとしたウェイドがトミーを「白すぎる」と侮辱し、喧嘩になります。
    リネアの夫デル・リース(ネッド・ビーティ)は政治イベントを主催するジョン・トリプレット(マイケル・マーフィー)と仕事をしており、ウォーカーのキャンペーンのための資金集めと大きな野外コンサートを計画しています。歌唱力不足のスーリーンは露出の多い衣装で地元のクラブのアマチュア・ナイトに出演し、クラブのマネージャーのトラウト(メアル・キルゴア)は資金集めイベント出演者としてにトリプレットに彼女を薦めます。ウィニフレッドはトラウトのクラブでデモ・テープ作りのため演奏者を探しますが、スターに見つかり逃げます。デルはトリプレットをリネアと耳の聞こえない2人の子供の家族の夕食に招待します。リネアとデルはコミュニケーションに問題があり、彼女は夫よりも子供のことが気になっています。トムはリネアにデートの誘いの電話をしますが、断られた為、代わりにオパールを呼びます。米軍兵のケリーはバーバラ・ジーンの病室に忍び込み、椅子に座って一夜を過ごします。
  • 〜2日目〜
    トムはリネアに再度電話しますが、デルが子機で聞いているため、リネアは二度と電話しないようにトムに叫びます。ケニーはミスター・グリーンから間借りします。ヘヴン・ハミルトンは午後のグランド・オール・オープリー出演の前に自宅でパーティをします。パーティでトリプレットはヘヴンに、ウォーカーが当選したらヘヴンを州知事にすると言ってコンサート出演を要請します。ヘヴンはオープリー出演後に決めると答えます。
    その後、トミー・ブラウン、ヘヴン、コニー・ホワイト(カレン・ブラック)らがオープリーで歌います。コニーは入院したバーバラ・ジーンの代役です。ウィニフレッドは舞台裏に潜入しようとするが入れません。病院ではバーネットがバーバラ・ジーンの代役をしてくれたコニーに感謝の意を伝えるため打ち上げに参加すると言って、バーバラ・ジーンとバーネットが口論になります。バーバラ・ジーンは彼に行ってほしくありませんでしたが、彼は彼女の過去のことなどを持ち出して非難します。バーネットはバーバラ・ジーンを打ち負かして出て行きますが、コニーは彼に会ってもいい顔をしません。ヘヴンはトリプレットにバーバラ・ジーンとコニーは同じ舞台に立たないこと、バーバラ・ジーンが立つ舞台になら自分はどこにでも立つということを告げます。ビルは妻のマリーが現れないことにがっかりします。マリーはトムと寝ています。
  • 〜3日目〜
    日曜朝、登場人物たちは礼拝に訪れる。病院の教会ではミスター・グリーン、米軍兵のケリー、その他の人々が見守る中、バーバラ・ジーンが車椅子に乗ったまま賛美歌を歌います。ミスター・グリーンはケリーに第二次世界大戦で亡くなった息子の話をします。オパールは広大なスクラップ場で詩的なレポートを録音します。ヘヴン、トミー・ブラウン、彼らの家族はカーレースを観に行きます。ウィニフレッドは小さな舞台で歌いますが、車の騒音により誰にも聴こえません。ビルとマリーはホテルの室内で口論となりますが、トリプレットがウォーカーのコンサートに出演依頼しに来た為、中断します。トムは運転手のノーマン(ディヴィッド・アーキン)にギターを弾かせます。
  • 〜4日目〜
    オパールは広大なスクール・バスの駐車場でさらにおかしな観察記を録音します。退院するバーバラ・ジーンは、病気の妻の見舞いに来たミスター・グリーンに出会い、彼の妻の様子を訊ね、よろしく伝えるように言います。バーバラ・ジーンと側近が去った直後、看護士がミスター・グリーンに彼の妻が早朝亡くなったことを伝えます。ミスター・グリーンの家ではケニーのヴァイオリンを触ろうとしたマーサが、ケニーは怒られます。
    バーバラ・ジーンがオープリーランドで歌います。トリプレットとデルはバーネットに翌日のパルテノン神殿でのウォーカーのイベント・コンサートにバーバラに出演するよう説得してくれとバーネットに頼みますが、彼は断ります。バーバラ・ジーンは最初の2曲を歌いますが、次の曲になると彼女の子供時代のとりとめのない話をし始め、まともに歌えません。バーネットは彼女を舞台裏に連れ帰り、がっかりしている観衆に向けて、翌日のパルテノン神殿でのウォーカーの無料イベント・コンサートにバーバラ・ジーンが出ると言ってしまいます。
    トムはリネアに電話し、夜に出演するクラブに招待します。リネアが到着すると、マーサがトムを誘惑している様子だったのでリネアは一人で後方の席に座ります。マリーとビルも館内におり、オパールがいかにしてトムと寝ることになったのかを話始めたため、マリーはがっかりします。ウェイドがリネアを、ノーマンがオパールを誘惑しようとしますがうまくいかない。トムが「I'm Easy」を歌い、感動したリネアは彼の部屋で愛し合います。リネアが帰る為に着替え始めると、トムは他の女性に電話をしてロマンティックな会話を始めます。
    出席者が全員男性のウォーカーの資金集めパーティにスーリーンが出演しますが、歌が下手な上に服を脱がないことにブーイングが起きます。デルとトリプレットは彼らがストリップを期待していること、もし実行すれば翌日パルテノン神殿でバーバラ・ジーンと共に歌わせると言って説得します。スーリーンはいやいやながらもストリップをやります。資金集めパーティで歌いたかったウィンフレッドは、スーリーンの様子を見てカーテンの裏から出てきません。デルがスーリーンを車で送り、彼女に言い寄りますがウェイドが彼女を助けます。事の顛末を聞いたウェイドはスーリーンは歌えないこと、翌日共にデトロイトへ行こうと言います。バーバラ・ジーンとパルテノンで歌えると信じて疑わないスーリーンは断ります。
  • 〜5日目〜
    出演者、観客、そしてウォーカーとその側近がパルテノンのコンサートに到着します。顔ぶれはヘヴン、バーバラ・ジーン、リネアとコーラス隊、ビル・マリー&トム、スーリーンと、出演できる隙を伺うウィニフレッド。バーバラ・ジーンを政治に利用されたくないバーネットは、バーバラ・ジーンがウォーカーの大きな横断幕の前で歌うことに憤慨しますが、キャンセルすれば彼女のキャリアに傷がつく為、止むなく受け入れます。ミスター・グリーンとケニーはエスター・グリーンの葬式に出席します。ミスター・グリーンは、葬式に出席しなかったマーサに対し怒り、彼女を探しにパルテノン神殿に行きます・・・。

 

レビュー・解説

カントリー&ウエスタンのメッカ、ナッシュビルを舞台に、カントリー&ウエスタン、ゴスペル、フォークなど数多くのオリジナル曲をフィーチャー、音楽業界を通して建国200年前夜のアメリカを描いた群像劇は、アメリカの未来をも予感させる、壮大な世界観を持ったブラックコメディです。

 

オープニングで大統領候補のキャンペーン・カーがナッシュビルの街に繰り出し、

  • 国民の誰しもが政治に深く関わっている
  • 国民には大きな力がある

と宣伝します。続いて、

  • 「我々はこの200年間、正しく生きてきた!」という「200 Years」と、
  • 「神を信じますか?もちろん!」という「Yes, I Do」

という意味ありげな曲のスタジオ収録風景が流れ、ただならぬ映画が始まることを予感させます。ここは、ミュージック・シティと呼ばれるナッシュビルです。

 

ナッシュビルは、アメリカ南部テネシー州の州都で、アメリカ人の心の故郷、カントリー&ウェスタンの聖地と言われています。1925年、ナッシュビルのラジオ局が、土曜日の夜カントリーの曲を流す番組「グランド・オール・オープリー」を始め、1943年から収録舞台をライマン公会堂に移し、公開生中継を始めました。ラジオ放送を通じてナッシュビル・サウンドは全米に広まり、ナッシュビルはカントリー&ウェスタンの音楽の代名詞となりました。さらに1960年代には、レコード会社と録音スタジオが次々とオープン、カントリー&ウェスタンをはじめ、いろいろなジャンルのレコードが生まれ、ナッシュビルは「ミュージック・シティ」と呼ばれるようになります。劇中、グランド・オール・オープリーに出演するというのは、この番組の公開収録に出演するという意味です。

 

劇中、数多くのスターが登場しますが、これらは実在の歌手を参考にしています。

 登場人物      俳優         実在の歌手
 バーバラ・ジーン  ロニー・ブレイクリー ロレッタ・リン
 ヘヴン・ハミルトン ヘンリー・ギブソン  ハンク・スノウ/ロイ・エイカフ
 トミー・ブラウン  ティモシー・ブラウン チャーレイ・プライド
 レイディ・パール  バーバラ・バクスレイ ミニー・パール
 コニー・ホワイト  カレン・ブラック   タミー・ウィネット

 

劇中、1時間以上が歌に費やされ、ミュージカルに近いドラマとなっています。すべての曲は生で歌われ、バックは当時のナッシュビルのミュージシャンが務めています。またリアリティを高める為、多くの俳優が劇中で歌う曲を書いています。

 俳優         曲名
 ヘンリー・ギブソン  200 Years、Keep A'Goin
 リリー・トムリン   Yes I Do
 ロニー・ブレイクリー Down to the River、Bluebird、Tapedeck in His Tractor、
            Dues、My Idaho Home
 デイヴ・ピール    The Heart of a Gentle Woman
 キース・キャレダイン Honey、I'm Easy、It Don't Worry Me
 アラン・ニコルズ   Rose's Cafe
 カレン・ブラック   Memphis、Rolling Stone、I Don't Know If I Found It In You

ロニー・ブレイクリーが多くの曲を書いていますが、実は彼女はバックコーラスと作詞、作曲の為に雇われていました。予定していた女優が辞退をした為、止むなく彼女をバーバラ・ジーン役に抜擢したのですが、映画初出演でアカデミー助演女優賞にノミネートされるという、シンデレラ・ガールになりました。

 

1960年代のアメリカでは、それ以前の社会的規範と保守主義や、ベトナム戦争や冷戦の拡大に異論を唱えられる様になり、より自由な社会が生まれました。公民権運動が拡大、フェミニズム環境保護運動に加えて性の革命も拡大し、平和、愛および自由を強調したヒッピー文化が台頭しました。フォークロックなどの当時の音楽は、世代の声を音楽で代表する重要な役割を果たしました。こうしたカウンターカルチャー革命は、1969年に開催されたウッドストック・フェスティバルでピークを迎え、その後衰退していきます。カウンター・カルチャーを毛嫌いする中道アメリカ人の「沈黙する多数」の支持を受けたリチャード・ニクソンが1969年に大統領に就任、現実主義者として手腕を発揮して、ベトナムからの撤退、中国との国交樹立、金本位制の停止などを行ないますが、1974年にウォーターゲート事件民主党本部盗聴事件)で辞任に追い込まれます。そんな混沌とした時代を背景に、映画には

 1963年 J・F・ケネディ大統領暗殺
 1968年 ロバート・ケネディ上院議員暗殺
 1973年 オイルショック

などの話題も織り込まれています。

 

そんな建国200年前夜のナッシュビルが舞台というだけでワクワクしますが、映画にはなんと24人ものメイン・キャラクターが登場、ロバート・アルトマン監督の十八番である群像劇の形式で、物語は進行します。ナッシュビルは保守的な土地柄ですが、映画の登場人物の中には1960年代のカウンター・カルチャーの影響を受けた人も多く、アメリカの縮図となっています。撮影期間中、俳優たちは役になりきって過ごし、ほぼ時系列に撮影された映画は、脚本をガイドに俳優たちが即興で演じています。

 

<ネタバレ>

ウォーカーのイベントはヘヴンとバーバラ・ジーンのデュエットから始まり、続いてバーバラ・ジーンのソロになります。曲が終わるとケニーはヴァイオリンのケースから銃を取り出し、ヘヴンとバーバラ・ジーンを撃ちます。近くにいた米軍兵のケリーはケニーを取り押さえます。白いドレスを鮮血に染めたバーバラ・ジーンは、舞台から運び出されます。傷の手当てのため舞台から連れて行かれるヘヴンは、観客を落ち着かせる為に誰かに歌わせようとします。彼は手に持っていたマイクを歌う隙をうかがっていたウィニフレッドの渡し、ウィニフレッドはゴスペルのコーラスと共に「It Don't Worry Me」を歌います。

 

劇中、語られるケネディ暗殺事件は、エンディングのバーバラ・ジーンへの銃撃の伏線となっています。この映画の登場人物たちは微妙に噛み合わず、すれ違い、空回りしながら、物語は進みます。誰かが倒れても、また誰かがマイクを受け取り、歌を続ける様は、悪戦苦闘しながらに回り続けるアメリカを象徴しているようでもあります。パルテノン神殿で白いドレスを鮮血に染めるバーバラ・ジーンは、次世代のアメリカの為に捧げられた生贄のようでもあります。「自由がなくても、私は平気〜♪」とウィニフレッドが歌う「It Don't Worry Me」が強烈です。ステージを見る子供たちのアップが映し出され、パルテノン神殿から空に向けてカメラがゆっくりとティルト・アップして、映画は終わります。

 

映画「ディア・ハンター」(1978年)のエンディングで友人達が歌う「ゴッド・ブレス・アメリカ」は、アメリカに対する痛烈な皮肉という解釈と、例えボロボロになってもアメリカを愛するという解釈のふたつがあります。どちらが正しいのか定かではありませんが、ひとつだけ言えるのは、ロシアからの移民の末裔である彼らは善くも悪しくもアメリカで生きていくしかないということです。「ナッシュビル」のエンディングで、「自由がなくても、私は平気〜♪」とウィニフレッドが歌う「It Don't Worry Me」をバックに映し出される子供たちも、同様、善くも悪しくもそんなアメリカで生きていくしかないということを感じさせるエンディングです。

<ネタバレ終り>

 

ヘンリー・ギブソン(ヘヴン・ハミルトン、有名カントリー歌手、政界へ熱意を持つ)

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ロニー・ブレイクリー(バーバラ・ジーン、ナッシュビルの象徴的カントリー歌手)

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リリー・トムリン(リネア・リース、デルバートの妻、ゴスペル歌手、障害児の母)

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バーバラ・ハリス(ウィニフレッド、夫から逃げシンガー・ソングライターを目指す)

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キース・キャラダイン(トム・フランク、ビル・マリー&トムのメンバー、遊び人)

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アラン・ニコルズ(右、ビル、ビル・マリー&トムのメンバー、マリーの夫)と
クリスティナ・レインズ(左、マリー、ビル・マリー&トムのメンバー、ビルの妻)

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カレン・ブラック(コニー・ホワイト、カントリー歌手、バーバラ・ジーンの宿敵)

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グウェン・ウェルズ(スーリーン・ゲイ、空港レストランのウェイトレス、歌手志望)

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アレン・ガーフィールド(左、バーネット、バーバラ・ジーンの夫、マネージャー)と
バーバラ・バクスレー (右、レディ・パール、ヘヴン・ハミルトンのパートナー)

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デイヴ・ピール(左、バド・ハミルトン、ヘヴンの息子、ハーバード卒、父の片腕)
ジェラルディン・チャップリン(右、オパールBBCのラジオ・リポーターを自称)

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ネッド・ビーティ(右から二人目、デルバート・デル・リース、ヘヴンの弁護士)

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デヴィッド・ヘイワード(ケニー・フレイザー、ミスター・グリーンに間借)

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スコット・グレン(左、グレン・ケリー、バーバラ・ジーン目当てのベトナム帰還兵)
キーナン・ウィン(右、ミスター・グリーン、マーサの叔父、妻が病気で入院中)

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サウンドトラック 

ナッシュビル」のサウンドトラック(Amazon)・・・リンク先で試聴できます

 Nashville: The Original Motion Picture Soundtrack

撮影地(グーグルマップ)

 

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  「M★A★S★H マッシュ」(1970年)

  「ナッシュビル」(1975年)

  「ザ・プレイヤー」(1992年)

  「ショート・カッツ」(1994年)

  「クッキー・フォーチュン」(1999年)

  「ゴスフォード・パーク」(2001年)

  「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年)

 

群像劇映画

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