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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「パリ警視庁:未成年保護部隊」:警察官たちの果てしない戦いを、時にシリアスに、時にユーモラスに、感情豊かに描く、フランス流群像劇

「パリ警視庁:未成年保護特別部隊」(原題:Polisse)は2011年のフランスの社会派ドラマ映画です。マイウェン監督、マイウェン/エマニュエル・ベルコ共同脚本、カリン・ヴィアールらの出演で、様々な犯罪から未成年を守るパリ警視庁未成年特別保護班の警官たちの姿を公私に渡ってリアルに描いています。第64回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、第37回セザール賞で作品賞をはじめとする13部門でノミネートされ、有望女優賞(ネドラ・アヤディ)と編集賞を受賞した作品です。日本では劇場未公開ですが、ソフトで視聴できます。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:マイウェン
脚本:マイウェン/エマニュエル・ベルコ
出演:カリン・ヴィアール(ナディーヌ・デル、警部補、夫と離婚)
   ジョーイ・スタール(フレッド、熱血漢の刑事、妻子と別居中)
   マリーナ・フォイス(イリス・ラングロワ、警部補、ナディーヌの相棒、潔癖)
   ニコラ・デュヴォシェル(マチュー、若手刑事、プレイボーイ)
   カロル・ロシェール(クリス、女性刑事、マチューの相棒、夫も刑事、妊娠中 )
   エマニュエル・ベルコ(スー・エレン、女性刑事)
   フレデリック・ピエロ(バルー 、未成年保護班リーダー、愛称「パパ」)
   アルノー・アンリエ(バマコ、中堅刑事)
   ネドラ・アヤディ(ノラ、イスラム系の女性刑事)
   ジェレミー・エルカイム(ガブリエル、若手刑事、少々理屈っぽい)
   ウラディミール・ヨルダノフ(ボーシャール、バルーの上司)
   アラン・アタル(マルク、ベテラン刑事、髭面)
   マイウェン(メリッサ・ザイア、未成年保護班に同行するカメラマン)
   リッカルド・スカマルチョ(フランチェスコ 、メリッサの双子の娘の父親
   サンドリーヌ・キベルラン(フーブレイス夫人、夫の娘への性的虐待を告発)
   ルー・ドワイヨン(メリッサの妹)
   ほか

あらすじ

未成年保護特別部隊は、児童性虐待者を連行したり、未成年のスリを補導したり、昼食時に男女問題を語ったり、虐待する親を尋問したり、子供達から事情聴取したり、ティーンエイジャーの行き過ぎた性に直面したり、仲間との連帯の確かめ合ったり、考えもつかぬ出来事に大笑いしたりするような毎日を過ごしています。尽きることのない犯罪の最悪部分に向き合いながら生きる彼らは、毎日直面する生々しい現実と私生活のバランスをとるのさえ、容易ではありません。そんな折、内務省から記録撮影の命を受けたカメラマン、メリッサが舞台に同行することになり、グループの切り札で熱血漢のフレッドの苛立ちは募ります・・・。

レビュー・解説

「パリ警視庁:未成年保護特別部隊」は、未成年がらみの犯罪と警察官たちの果てしない戦いを、実力派俳優が時にシリアスに、時にユーモラスに、感情豊かに描く、フランス流群像劇です。

 

未成年保護特別部隊が扱うのは虐待など、未成年がらみの犯罪です。麻薬犯罪の捜査など他の部署に比べて冷遇されていますが、業務は過酷で私生活とのバランスがとれず、離婚してしまう警察官も少なくありません。業務の多くは欧米では珍しいことではない私服で行われていますが、犯罪と真実を追求する眼差しは真剣です。この映画は、すべて実際にあったというケースを数多く扱うことにより青少年を取り囲む環境を浮かび上がらせるとともに、関わる警察官たちを時にシリアスに、時にユーモラスに、感情豊かに描くことにより、他に類を見ないフランス流群像劇に仕上がっています。

 

特に、序盤の三人の男に友人を襲わせた不良少女と警察官たちの激しい言葉の応酬や、終盤の女性を軽く見るイスラム教徒の男に同じくイスラム教徒の女性警官が怒りをぶちまけるシーンは圧巻です。これらのシーンに登場する女性警官を演じたネドラ・アヤディは、本作で第37回セザール賞有望女優賞を受賞しています。また、シリアスなシーンだけではなく、奪われた携帯電話を取り戻す為にフェ○○○をしたという少女を尋問しながら警官たちが思わず吹き出してしまうというユーモラスなシーンもあります。少女は至って真剣なのですが、笑いこける警察官たちが普段、悲惨なケースにどれだけ張り詰めて対応しているかを暗示するシーンでもあります。

 

監督、共同脚本、出演の三役を務めたマイウェンは、フランスの女優、映画監督、脚本家で、本作が監督3作目です。女優の母を持つ彼女は、5才で映画デビュー、人気子役・若手女優として活躍します。1991年にリュック・ベッソンと出会い、1女をもうけます。同監督の「レオン」(1994年)、「フィフス・エレメント」(1997年)に出演、ベッソンとの破局後はフランスに戻り女優活動を再開するとともに、映画監督や制作も手がけています。「カフェテアトル」(若手を中心とする、笑いとエスプリを効かした演劇で、才人が揃っており、映画界へ多くの俳優、監督、脚本家などを輩出している)の流れを汲む彼女は、伝統的な警察ドラマにヴィヴィッドな脚本と俳優の多様な個性を引き出す演出を取り入れることにより、ユニークで新鮮な作品に仕立て上げています。

 

カリン・ヴィアール、マリーナ・フォイスなど実力派女優はもとより、ジョーイ・スタールやネドラ・アヤディなど、光る俳優に見せ場が与えられているのも本作の特徴です。ジョーイ・スタールはもともとラッパーなのですが、映画の為に曲を作るうちに2008年頃から映画出演もするようになり、セザール賞にノミネートされるなど俳優としても才能を開花しています。本作ではカメラマンのメリッサとロマンスが芽生えますが、実生活でもメリッサを演じたメイウェンとロマンスが生まれました(残念ながらその後、別れたようですが)。

 

原題「Polisse」は一見、フランス語のようですが、実は警察はフランス語でも「Police」です。敢えてミススペルのタイトルを使用することにより、未成年を扱う映画であることを暗示しています。日本語にすると「警察」ではなく「ケーサツ」とでもいったニュアンスでしょうか?洒落たタイトルです。

 

カリン・ヴィアール(ナディーヌ・デル、警部補、夫と離婚)

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ジョーイ・スタール(フレッド、熱血漢の刑事、妻子と別居中)

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マリーナ・フォイス(右、イリス・ラングロワ、警部補、ナディーヌの相棒、潔癖)

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ニコラ・デュヴォシェル(左、マチュー、若手刑事、プレイボーイ)

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カロル・ロシェール(左、クリス、女性刑事、マチューの相棒、夫も刑事、妊娠中 )と
ジェレミー・エルカイム(右、ガブリエル、若手刑事、少々理屈っぽい)

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エマニュエル・ベルコ(右、スー・エレン、女性刑事)

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フレデリック・ピエロ(バルー 、未成年保護班リーダー、部下に「パパ」と呼ばれる)

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ネドラ・アヤディ(ノラ、イスラム系の女性刑事)

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ウラディミール・ヨルダノフ(ボーシャール、バルーの上司、未成年保護班を軽視?)

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マイウェン(メリッサ・ザイア、未成年保護班に同行するカメラマン)

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リッカルド・スカマルチョ(フランチェスコ 、メリッサの双子の娘の父、イタリア人)

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メリッサが使用するライカM8Amazon

 

動画クリップ(YouTube

撮影地(グーグルマップ)

 

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