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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「その土曜日、7時58分」:資金繰りに困った兄弟の弱くて暗い部分をじわりと描く、緊張感にあふれたクライム・スリラー

その土曜日、7時58分」(原題:Before the Devil Knows You're Dead)は、2007年公開のアメリカのクライム・スリラー映画です。シドニー・ルメット監督、フィリップ・シーモア・ホフマンイーサン・ホークマリサ・トメイらの出演で、思わぬ誤算によって破滅していく兄弟とその両親の運命を、人間の心の弱くて暗い部分に焦点を当てながら描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:シドニー・ルメット
脚本:ケリー・マスターソン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン(アンディ・ハンソン)
   イーサン・ホーク(ハンク・ハンソン:アンディの弟)
   マリサ・トメイ(ジーナ・ハンソン:アンディの妻、ハンクと不倫している)
   アルバート・フィニー(チャールズ・ハンソン:アンディとハンクの父)
   ブライアン・F・オバーン(ボビー:ハンクが強盗の実行犯として雇った男)
   ローズマリー・ハリス(ナネット・ハンソン:アンディとハンクの母)
   マイケル・シャノン(デックス:ボビーの妻クリスの兄)
   マーサ・ハンソン(エイミー・ライアン:ハンクの元妻)
   サラ・リヴィングストン(ダニエル・ハンソン:ハンクとマーサの娘)
   アレクサ・パラディノ(クリス:ボビーの妻)
   ほか

あらすじ

  • ある会社の経理担当の重役アンディ・ハンソン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、近いうちに国税局の調査が入ることを知り、内心焦っていました。彼は会社から金を横領しており、それを隠すための資金繰りに困っていました。アンディの弟、ハンク(イーサン・ホーク)もまた、別れた妻が育てる娘の養育費と、娘が通っている私立学校の高額な授業料を払えずに金に困っていました。そんな最中、ハンクは夫婦生活に不満を抱くアンディの妻、ジーナ(マリサ・トメイ)と長きにわたって不倫の関係にありました。
  • 金に困り果てたアンディは、ハンクに、自分たちの両親が経営する宝石店に強盗に入るという提案をします。ハンクは嫌がりましたが、アンディの説得に負け、渋々承諾します。それは、アンディは近所に顔を知られている為、ハンク一人で実行に移すという驚くべき話でした。アンディが言うには、その日は両親が雇っているドーリスという老婆しか店にいない予定で、ハンク一人でも楽勝なはずだということ、また保険に入っているため両親には実質的には損害はないということで、ハンクも承諾します。かくして総額12万ドル、それぞれが6万ドルの財産が転がり込む予定の強盗計画が開始されます・・・。

レビュー・解説 

人の心の弱くて暗い部分をじわじわと描き出し、さもありなんと感じさせる、緊張感にあふれたクライム・スリラーです。往年の名監督シドニー・ルメットの復活と高く評価された作品です。

 

資金繰りに困った人のリアルな描き方には説得力があります。収入に見合った支出に押さえればいいのですが、一度、いい暮らしをしてしまうとなかなか節約できなかったり、子供にお金がかかったりで、ずるずるといくまままに感覚が麻痺してしまい、二進も三進もいかなくなります。追いつめられて一攫千金を夢見てしまうのが、あながち他人事ではないと思えるような説得力が、この映画にはあります。ちょっとした誤算から、強盗に失敗、負の連鎖を断ち切れずに身の破滅を招いていく、人の弱さ、ダークな部分の描き方も見事です。

 

シドニー・ルメットは、ニューヨークを舞台に硬派な社会派映画作品を撮り続けたアメリカの映画監督、演出家で、リアリズムに徹した骨太な演出が特徴的です。「十二人の怒れる男」(1958年)、「狼たちの午後」(1976年)、「ネットワーク」(1977年)、「プリンス・オブ・シティ」(1982年) 、「評決」(1983年)とアカデミー監督賞等に5回もノミネートされていますが、受賞に至らず、2005年にアカデミー名誉賞を授与されています。1980年代以降、作品に精彩を欠きましたが、本作のリアルで緊迫感の溢れる演出で見事に復活、絶賛されました。遺作となってしまったのが残念です。

 

フィリップ・シーモア・ホフマンは、内面に弱さを抱える不動産会社の経理担当重役アンディを好演しています。薬物依存で、VIP向けにディーラーに通いつめる為に会社の金を横領、妻ともうまくいっていません。国税の監査が入り、さらに彼は追いつめられていきます。フィリップ・シーモア・ホフマン自身も若い頃に薬物依存症になった事があり、迫真の演技ですが、皮肉な事にこの映画の数年後に再びヘロイン中毒になり、2014年に薬物の過剰摂取で亡くなってしまいました。薬物が原因で十年来のパートナーとうまく行かず、彼女と子供たちが住む時価4億円の自宅の近くのアパートで単身で生活していました。オスカー俳優として富と名声を手にしていただけに、彼の演ずるアンディと重なるものがあります。

 

アンディの気の弱い弟ハンクを演ずるイーサン・ホークもはまり役です。別れた妻に子供の学費や養育費を取り立てられながらも、気弱で悪人にもなりきれない臆病な男を好演しています。アンディの可愛らしく、色っぽい妻を演じるマリサ・トメイも魅力的です。

 

原題の「Before the Devil Knows You're Dead」は、アイルランド乾杯の音頭、

May you have food and raiment, a soft pillow for your head; may you be 40 years in heaven, before the devil knows you're dead. (食べ物と衣服と、そして頭の下には柔らかい枕があらんことを。死んだことを悪魔が知る前に、天国に40年間いられんことを。)

に由来します。アンディもハンクも弱い人間ですが、極悪人ではありません。せめて悪魔が気づく前に、天国に召されて欲しいものです。

 

フィリップ・シーモア・ホフマン(左:アンディ)とイーサン・ホーク(右:ハンク)

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マリサ・トメイ(ジーナ・ハンソン)

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撮影地(グーグルマップ) 

アンディが住んでいたマンション

 

ハンクが住んでいたアパート

 

アンディとハンクの父母が経営する宝石店のあった場所

 

 

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関連作品

シドニー・ルメット監督作品のDVD(Amazon

  「十二人の怒れる男」(1958年)

  「狼たちの午後」(1976年)

  「ネットワーク」(1977年)

  「評決」(1983年)

 

フィリップ・シーモア・ホフマン/マリサ・トメイ共演作品のDVD(Amazon

  「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」(2011年)

 

フィリップ・シーモア・ホフマン出演作品

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イーサン・ホーク出演作品のDVD(Amazon

  「恋人までの距離(ディスタンス)」(1995年)

  「ガタカ」(1997年)

  「ビフォア・サンセット」(2004年)

  「ビフォア・ミッドナイト」(2013年)

  「6才のボクが、大人になるまで。」(2014年)

  「プリデスティネーション」(2015年)

 

マリサ・トメイ出演作品

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