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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「真夜中のピアニスト」:リアルでスタイリッシュなハードボイルド風味のヒューマン・ドラマ

フランス映画

「真夜中のピアニスト」(原題: De battre mon cœur s'est arrêté、英題: The Beat That My Heart Skipped)は2005年公開のフランスのヒューマン・ドラマ映画です。1978年のアメリカ映画「マッド・フィンガーズ」のリメイクで、ジャック・オーディアール脚本・監督、ロマン・デュリスの出演により、現代のパリでピアニストになる夢を追う不動産ブローカーの青年をハードボイルド・タッチで描いています。31回セザール賞で最優秀作品賞、監督賞を含む8部門で受賞、第55回ベルリン国際映画祭アレクサンドル・デプラ銀熊賞(音楽賞)を受賞、第59回英国アカデミー賞では外国語作品賞を受賞した作品です。

  

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ジャック・オーディアール
脚本:ジャック・オーディアール/トニーノ・ブナキスタ
出演:ロマン・デュリス(トム・セール)
   ニエル・アレストリュプ(ロベール・セール)
   オーレ・アッティカ(アリーヌ)
   リン・ダン・ファン(ミャオリン)
   エマニュエル・ドゥヴォス(クリス)
   ジョナサン・ザッカイ(ファブリス)
   ジル・コーエン(サミ)
   ほか

あらすじ

28歳のトム(ロマン・デュリス)は、友人ファブリス(ジョナサン・ザッカイ)、サミ(ジル・コーエン)と組んで、不法選挙している住民を暴力で追い出し物件を転がす不動産ブローカーです。同業の父ロベール(ニール・アルストラップ)からは再婚する予定の若い恋人クリス(エマニュエル・ドゥヴォス)を紹介されますが、トムは素直に認められません。ある夜、亡き母のコンサート・マネージャーに再会したトムは、オーディションの機会を与えられ、ピアニストになるという昔の夢を思い出します。10年ぶりでピアノに向かったトムは、忘れていた音楽への愛と情熱を再認識します。いくつかの音楽学校を断られたあと、中国人ピアニストのミャオリン(リン・ダン・ファン)の元にレッスンに通うことになります。ファブリスからは浮気のアリバイ工作を頼まれ、父からは取り立てを催促され、現実に嫌気が差すトムは、どんどんピアノのレッスンにのめり込んでいきます。トムはさらに、ファブリスの妻(オーレ・アッティカ)、父から金を騙し取ったというロシア人のマフィア、ミンスコフ(アントン・ヤコフレフ)の若い愛人(メラニー・ロラン)とも関係を持ってしまいます。オーディション前夜、眠ろうとしたトムは物件の裏取引に連れ出されます・・・。

レビュー・解説 

「マッド・フィンガーズ」(1978年、アメリカ)のリメイクですが、ジャック・オーディアール監督らしいリアルでスタイリッシュな作品で、ロマン・デュリスの緊迫感のあるパフォーマンスも見逃せません。

 

「マッド・フィンガーズ」のリメイクに当り、舞台をニューヨークからパリに移すだけではなく、主人公の設定をマフィアから不動産業者に変更されています。バイオレンスや犯罪を扱う事の多いジャック・オーディアール監督ですが、極悪ではなく、現実の生活とぎりぎりリンクがある範囲で描くのが彼の作品の特徴で、これは彼の作風のリアリズムという点で非常に大きな意味を持っています。

 

ジャック・オーディアールは「この映画はフィルム・ノワールではない」と語っています。ハードボイルドでスタイリッシュなテイストを持ちながら、極悪なバイオレンスを避け、親子、男と女、移民など様々なテーマを折り込みつつ、主人の成長などかすかな希望を見せるのがジャック・オーディアールの作品の特徴で、虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画であるフィルム・ノワールとは、微妙に立ち位置が異なります。

 

ロマン・デュリスは、パリ出身のフランスの俳優で、セドリック・クラピッシュ作品のための俳優を探していたキャスティング・デレクターに街角でスカウトされるまでは、演技経験はなかったといいいます。その個性を生かして以後、クラピッシュ作品の常連となり、日本では「スパニッシュ・アパートメント」のグザヴィエ役で良く知られています。父は建築家で母は元バレリーナで今はカラーリスト、兄はデザイナーで姉はピアニストと、ロマン・デュリスの家庭は芸術一家で、本作では姉がロマン・デュリスにピアノ演奏の指導をしています。

 

キャリアを積むにつれて演技の幅が広がってきたロマン・デュリスですが、本作でのトムの役作りについて次のように語っています。

彼は、ずっと神経質でいらだっている感じで描かれているけど、それは彼が立ち止まると、自分には、なにも出来ないということに気付いてしまうから。ただ、自閉症的につっぱしるような雰囲気を作るようにしました。呼吸をしないで、海に潜りつづけるような感じです。撮影中の2か月間はそういった状態を保つようにしていました。たばこも病的にイライラしたように吸うのは、彼の性格や心のあり方と合うので、そのような演技を持続するように努力しました。

 

原題の「De battre mon cœur s'est arrêté」は「止まった僕の心臓の鼓動」という意味で、ジャック・デュトロンの「サンタクロースの娘」(La fille du père Noël)というロックの歌詞の一節です。朝、二日酔いで目覚めると、サンタの娘が暖炉の前に裸で立っていて、心臓が止まるほどびっくりした、というユーモラスな内容の歌です。ハードボイルでスタイリッシュな映画ですが、一方でヒューマン・ドラマであることを匂わせる、ユーモアの効いた良いタイトルです。

 

ロマン・デュリス(トム・セール) 

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ニエル・アレストリュプ(ロベール・セール、左) 

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オーレ・アッティカ(アリーヌ) 

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リン・ダン・ファン(ミャオリン) 

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エマニュエル・ドゥヴォス(クリス) 

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撮影地(グーグルマップ)

ロベールがトムを呼び出した店

ロベールが自ら借金回収に向かった店

 

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関連作品

ジャック・オーディアール監督作品のDVD(Amazon

  「リード・マイ・リップス」(2001年)

  「預言者」のDVD(2009年)

  「君と歩く世界」(2012年)

  「ディーパンの闘い」(2015年)

 

ロマン・デュリス出演作品のDVD(Amazon

  「スパニッシュ・アパートメント」(2002年)

  「ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者」(2010年)

  「彼は秘密の女ともだち」(2014年)

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