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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「エヴァの告白」:1920年代、希望を胸にアメリカに移住するも、娼婦に身を落とし葛藤する敬虔な女性をマリオン・コティヤールが好演

エヴァの告白」(原題:The Immigrant)は、2013年公開のアメリカのヒューマンドラマ映画です。ジェームズ・グレイ監督・脚本・製作、マリオン・コティヤールホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナーらの出演で、1920年代に幸せを求めてアメリカへ移住した女性が娼婦に身を落としてまでも懸命に生きようとする姿と、彼女を翻弄する裏社会の男、彼女に思いを寄せるを男たちを描いています。主演のマリオン・コティヤールが、ニューヨーク、ボストン、全米、トロントの各映画批評家協会の主演女優賞を受賞した作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ジェームズ・グレイ
脚本:ジェームズ・グレイ/リチャード・メネッロ
出演:マリオン・コティヤールエヴァ・シブルスカ、ポーランド移民の女性)
   ホアキン・フェニックス(ブルーノ・ワイス、興行師、裏で売春を斡旋)
   ジェレミー・レナー(オーランド、マジシャン、ブルーノの従兄弟)
   エレーナ・ソロヴェイ(ロジー・ヘルツ、ショーパブ経営者、ブルーノの雇主)
   マヤ・ワンパブスキー(エディタ・ビストリッキー、エヴァの叔母)
   アンジェラ・サラフィアン(マグダ・シブルスカ 、エヴァの妹)
   ほか

あらすじ

1921年のニューヨーク。戦火のポーランドから移民としてアメリカに入国した敬虔なクリスチャンの女性エヴァマリオン・コティヤール)は、同行の妹マグダが入国審査で結核と診断されて収容され、ニューヨークの叔母からは迎えがなく、エヴァ自身も入国許可が下りずに強制送還されそうになります。彼女の美しさに心奪われたブルーノ(ホアキン・フェニックス)が彼女を救いますが、彼は移民の女たちを劇場で踊らせ、売春を斡旋する男でした。妹の治療費を稼ぐ必要のあったエヴァは、やがて売春婦に身を落しますが、ブルーノはエヴァに憎まれながらも彼女を愛するようになります。やがて、エヴァがブルーノの従兄弟でマジシャンのオーランド(ジェレミー・レナー)と互いに惹かれ合うようになると、かねてよりオーランドを毛嫌いしていたブルーノは激しく対立、遂には彼を刺し殺してしまいます。その様子を見ていたエヴァの売春仲間は、ブルーノに特別扱いされるエヴァへの憎しみから警察にエヴァによる犯行と密告します・・・。

レビュー・解説 

ゴッドファーザー・パート2」でヴィトー・コルレオーネがアメリカに移住した頃を彷彿とさせる美しい映像、インデペンデント映画で高い評価を得ているジェームズ・グレイ監督の確かな演出、「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(2007年)でアカデミー主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤール、アカデミー主演男優賞に二度ノミネートされているホアキン・フェニックスの好演が光り、移民の国、アメリカの光と陰を感じさせる作品です。

 

ニューヨークに到着した移民が入国審査を受けるエリス島は新天地アメリカの玄関口で、様々な理由を抱えてやって来た人々の想いが濃縮されるドラマティックな場所でした。序盤、ここでトラブルに遭遇したエヴァがブルーノに助けを懇願するのですが、エヴァを演じるマリオン・コティヤールの表情にはクラクラします。この表情だけで、この映画を観て良かったと思えるくらいです。

エリス島での撮影は、とても特別なことだったわ。驚くべきことよ。屋内で撮影したのはジェームズ・グレイ監督が初めてなの。かつてフランシス・フォード・コッポラ監督がやろうとしたけれど、外での撮影は許されても、建物の中は許可が下りなかった。ジェームズにとってエリス島での撮影は非常に大切なことだったから、彼は頼み込んだのよ。アメリカ人の多くはエリス島と関係があるともいえるわ。親類縁者や知人に、そこから入国してきた人がいるはずだから。エリス島は、特殊なエネルギーを感じる場所だった。希望と夢に満ちた人々が集まった場所だから。(マリオン・コティヤール

 

「裏切り者」(2000年)、「アンダーカヴァー」(2007年)、「トゥー・ラバーズ」(2008年)で、ホアキン・フェニックスとコラボしていたジェームズ・グレイ監督ですが、女性が主役の脚本を書いたのは本作が初めてでした。このいきさつについて、彼は次のように語っています。

僕はマリオン・コティアールを良く知らなかったんだ。彼女のパートナーと友達になり、パリで食事に行った時に初めて彼女に会ったんだ。僕と彼女は彼女が好きな俳優について議論を始めたんだが、僕は彼女の過大評価だと思った。そしたら、彼女は僕の顔にパンを投げつけたんだ。僕を馬鹿だと思うと彼女が言った時に、僕はいっぺんに彼女を好きになってしまったんだ。(中略)彼女は美しい顔をしていると思ったし、実際に美しいのだけれども、それは単に物理的に美しいだけではなく、サイレント映画の女優の様に眼に焼き付いては離れないような美しさなんだ。彼女は、レネ・ジャンヌ・ファルコネッティを思い出させる。セリフなしでも深く感情を表すのがとても得意な女優だ。それで、僕は彼女とホアキンの為に脚本を書いた。もし、彼らが乗り気にならなかったら、映画にしたかどうかわからない。

 

ジェームズ・グレイ監督の祖父母も1923年にエリス島から入国した移民ですが、死ぬまで英語を話さず、アメリカの文化に同化することはありませんでした。また、祖母の両親はコサック兵に斬首されたのですが、それでも祖父はロシアを去った事を寂しく思っており、移住は単純な話ではないとジェームズ・グレイ監督はかねてから思っていました。「エヴェの告白」という邦題ですが、原題は「The Immigrant」(移民の意)、同じタイトルの小説があった為に使えなかった当初の原題は「Lowlife」(下層階級、裏社会の人々という意)でした。ジェームズ・グレイ監督は、サイレント映画の時代である1920年代、アメリカの裏社会に移民の陰の部分を重ね合わせながら、見事にマリオン・コティヤールの美しさを浮かび上がらせています。

 

マリオン・コティヤールは、主人公のエヴァを「とても強い女性」と語っています。アメリカに新天地を求めた移民は恐らく、夢や希望だけではなく、様々な陰も背負っていたに違いなく、彼らがアメリカで生き残る為には並々ならぬ「強さ」が必要だったことは想像に難くありません。そういう意味では夢、希望とともに「強さ」が移民の国、アメリカを形作ってきたのでしょう。

 

マリオン・コティヤールエヴァ

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ホアキン・フェニックス(ブルーノ、右)

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ジェレミー・レナー(オーランド)

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撮影地(グーグルマップ) 

入国審査の撮影が行われたエリス島

 

エヴァが懺悔をした教会

 

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関連作品 

ジェームズ・グレイ監督作品のDVD(Amazon

  「トゥー・ラバーズ 」(2008年)

 

マリオン・コティヤール出演作品のDVD(Amazon

  「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」(2007年)

  「インセプション」(2010年)

  「コンテイジョン」(2011年)

  「ミッドナイト・イン・パリ」(2011年)

  「ダークナイト ライジング」(2012年)

  「君と歩く世界」(2012年)

  「エヴァの告白」(2013年)

  「サンドラの週末」(2014年)

  「ディオールと私」(2015年)

 

移民を描いた映画

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エヴァの告白(字幕版)

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