夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「フィクサー」:思うに任せない人生を送る揉み消し屋が、大企業の不正に遭遇、悪戦苦闘する様を描く

フィクサー」(原題:Michael Clayton)は、2007年公開のアメリカの社会派サスペンス映画です。トニー・ギルロイ監督・脚本、ジョージ・クルーニーらの出演で、社会の不正に直面した人間の姿を描いています。第80回アカデミー賞で作品賞を含む7部門にノミネートし、ティルダ・スウィントン助演女優賞を受賞しています。

 

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目次

スタッフ・キャスト  

監督:トニー・ギルロイ
脚本:トニー・ギルロイ
出演:ジョージ・クルーニー(マイケル.R.クレイトン、法律事務所K.B&L弁護士)
   トム・ウィルキンソン(アーサー・イーデンス、弁護士、マイケルの同僚)
   ティルダ・スウィントン(カレン・クラウダー、U・ノース社法務部)
   シドニー・ポラック(マーティ・バック、法律事務所 K.B&L 代表)
   マイケル・オキーフ(バリー・グリッソム、マイケルの同僚)
   ケン・ハワード(ドン・ジェフリーズ、U・ノース社のCEO)
   メリット・ウェヴァー(アナ、集団訴訟の原告の1人)
   オースティン・ウィリアムズ(ヘンリー・クレイトン、マイケルの息子)
   ショーン・カレン(ジーン・クレイトン、マイケルの弟、N.Y.市警の刑事)
   デイヴィッド・ランズベリー(ティミー・クレイトン、従弟)
   デイヴィッド・ザヤス(ダルベルト刑事)
   ロバート・プレスコット(ミスター・ヴァーン、U・ノース社が雇った男)
   テリー・セルピコ(ミスター・イケル、U・ノース社が雇った男)
   ビル・レイモンド(ゲイブ・ゼイベル)
   デニス・オヘア(ミスター・グリーア、事務所の顧客の富豪、ひき逃げする)
   ほか

あらすじ

ニューヨーク、マンハッタンにある大手弁護士事務所ケナー・バック&レディーンのフィクサー(揉み消し屋)であるマイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)は元検察官で、裏で仲介に立って交渉をまとめる「もみ消し屋」=「フィクサー」として長年にわたり活躍していました。しかし、最近の彼の身の回りでは、物事が思うに任せないでいました。別れた妻と親権を争う10歳の息子ヘンリーと会う時間もままならず、病気療養中の父親に面会する暇もありません。自らの仕事にも嫌気が差し、フィクサーの仕事から足を洗おうと考えて従兄弟とレストランを始めましたが、失敗、多額の負債を抱え、8万ドルの返済期限が一週間後に迫っていました。

その頃、マイケルが勤める弁護士事務所は、農薬関連の大企業U・ノース社の弁護士として大規模集団訴訟を抱えていました。訴訟が大詰めを迎えるさなか、主任弁護士で、事務所一の敏腕弁護士でもあるアーサー・イーデンス(トム・ウィルキンソン)が、突然全裸になり、走り回るという奇行に走ります。被告有利に進んでいた訴訟における突然の事態を収集するため、マイケルがすぐにニューヨークから派遣され、友人でもあるアーサーの起こした不始末の対応に走らされます。

アーサーは自分は正気だと主張しますが、誰にも信用してもらえず、留置所に送られます。躁鬱病の再発だと考えたマイケルは、ひとまず彼をホテルに軟禁しますが、アーサーは行方をくらましてしまいます。実は、アーサーは入手した機密文書を見て良心の呵責にあい、奇行に走って訴訟をかく乱、依頼人のU・ノース社を裏切って全てひっくり返そうとしていました。機密書類の存在に気付いた U・ノース社の法務部本部長カレン・クラウダー(ティルダ・スウィントン)は、秘密裏にアーサーを監視させます。弁護士事務所の対応を信用できなくなった彼女は、アーサーを始末する為に男達を雇います・・・。

レビュー・解説 

「ボーン」シリーズで知られる脚本家トニー・ギルロイの初監督作品で、制作費も2000万ドルと低予算ですが、最後まで観客を惹き付けて離さない脚本はもとより、ジョージ・クルーニートム・ウィルキンソンティルダ・スウィントンシドニー・ポラックといった名俳優に恵まれ、第80回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞助演女優賞脚本賞、作曲賞の7部門にノミネートされるほど、クォリティの高い仕上がりになっています。脚本・監督一貫したことにより、トニー・ギルロイの魅力をフルに楽しむことができる作品です。

 

当初、主演のジョージ・クルーニーは、トニーの初監督に不安を感じ、出演を辞退したとも言われていますが、製作総指揮のスティーブン・ソダーバーグ、出演兼製作のシドニー・ポラック、出演兼製作総指揮のジョージ・クルーニーらの監督経験者が常に製作現場に加わるというサポーティブな環境で製作されています。また、ジョージの出演料はそれだけで制作費が吹っ飛んでしまうほど高額ですが、興行成績に応じて後払いという形で出演しているものと思われます。優秀な脚本家の監督デビューを後押し、ハイ・クォリティな作品に押し上げるハリウッドの人脈が見え隠れするようです。

 

一流弁護士事務所に所属する借金を背負ったフィクサーという微妙な設定を演じるジョージ・クルーニーも素晴しく、彼が演じるマイケル・R・クレイトンが、彼を殺そうとしたカレンに迫るシーンは、脚本の妙とともにジョージ・クルーニーの味が出ていて圧巻です。

MICHAEL: I'm not the guy that you kill. I'm the guy that you buy. Are you so fxxking blind you don't even see what I am? I'm the easiest part of your whole goddamn problem and you're gonna kill me? Don't you know who I am? I'm a fixer. I'm a bagman. I do everything from shoplifting housewives to bent congressmen ...and you're gonna kill me?

マイケル:俺は金で動く男だ。殺す必要はない。そんなことも分からないのか?金で動く男をあんたは殺すのか?俺はフィクサーだ。万引き主婦、変態議員、何でも受ける。その俺を殺すのか?

 

マイケルと対決することになるカレンの脚本設定も素晴しく、カレン役でアカデミー助演女優賞を受賞したティルダ・スウィントンは、次のように語っています。

脚本を読んだ時、悪役に対する考え方が私の考え方と同じだとわかったの。人間を非人間的な行為に走らせるものは何だろうと以前からずっと考えていたのだけれど、これはその問いを説明する脚本の一つだったの。非人間的決定の一つ一つを、人間的観点から描いているのよ。それにこの悪役を男性に置き換えることは簡単だけれども、「フィクサー」では女性で、トニーは私にその役を演じる機会を与えてくれた。興味深かったのは彼女が本当に良い子だという点ね。良い子になることに一生懸命で、ガラスの天井に突き当たることに意味を見出さない。ボスが望む通りの人物になろうとするのよ。それは間違っているんだけれどね。

 

ジョージ・クルーニー(マイケル.R.クレイトン)

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トム・ウィルキンソン(アーサー・イーデンス)

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ティルダ・スウィントン(カレン・クラウダー)

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シドニー・ポラック(マーティ・バック)

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関連作品 

トニー・ギルロイ脚本作品のDVD(Amazon

  「ボーン・アイデンティティー」(2002年)

  「ボーン・スプレマシー」(2004年)

  「ボーン・アルティメイタム」(2007年)

  「消されたヘッドライン」(2009年)

  「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(2016年)

  「ベイルート」(2018年)

 

ジョージ・クルーニーティルダ・スウィントン共演作品のDVD(Amazon

    「ヘイル、シーザー」(2016年)

 

ティルダ・スウィントントム・ウィルキンソン共演作品のDVD(Amazon

  「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)

 

ジョージ・クルーニー出演作品

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トム・ウィルキンソン出演作品のDVD(Amazon

  「いつか晴れた日に」(1995年)

  「フル・モンティ」(1997年)

  「恋におちたシェイクスピア」(1998年)

イン・ザ・ベッドルーム 」(2001年)

  「エターナル・サンシャイン」(2004年)

  「ゴーストライター」(2010年)

  「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011年)

  「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(2012年)

  「ベル-ある伯爵令嬢の恋-」(2013年)

  「グローリー/明日への行進」(2014年)

 

ティルダ・スウィントン出演作品

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フィクサー (字幕版)

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