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夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「マン・オン・ワイヤー」:ワールド・トレード・センターのツインタワー間を綱渡りした男のドキュメンタリー

「マン・オン・ワイヤー」(原題: Man on Wire)は、2008年後悔のイギリスのドキュメンタリー映画です。1974年にワールド・トレード・センターのツインタワー間での危険な綱渡りを達成したフランスの大道芸人フィリップ・プティの挑戦を、本人や関係者の証言、当時のフィルムや再現ドラマによって紹介しています。第81回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ジェームズ・マーシュ
原作:フィリップ・プティ「マン・オン・ワイヤー」
出演:フィリップ・プティ
   ジャン=ルイ・ブロンデュー
   アニー・アリックス
   ジム・ムーア
   マーク・ルイス
   ジャン=フランソワ・ヘッケル
   バリー・グリーンハウス
   デヴィッド・フォアマン
   アラン・ウェルナー
   ほか

あらすじ

1974年8月7日、23歳のフランス人フィリップ・プティは、ワールド・トレード・センターのツインタワーの間に張られた地上411mの綱で綱渡りを披露します。遡ること6年、ツインタワー建設計画の新聞記事を目にした彼は、1971年6月、ジャン=ルイ・ブロンデューとジャン=フランソワ・ヘッケルに支えられ、パリのノートルダム大聖堂の2つの尖塔の間の綱渡りを行います。また1973年、オーストラリアの友人マーク・ルイの助けで、シドニーのハーバー・ブリッジ北側の鉄塔で、2度目の違法綱渡りを敢行します。1974年1月、ニューヨークにやってきたフィリップは、ジム・ムーアの協力を得て、何度もツインタワーを訪れます。ジャン=ルイ、マーク、恋人アニーが彼の仲間でした。計画の日、ワールド・トレード・センターの屋上は工事中でした。フィリップとジャン=フランソワは南タワーに、ジャン=ルイとアルバートは北タワーに、工事作業員とビジネスマンに変装して入るります。南タワーの82階にある保険会社で働くバリー・グリーンハウスが装置の運搬を許可し、さらに、エレベーター作業員のミスで104階まで上がることができました。フィリップたちは道具を隠し、自分たちも身を潜めました。闇夜の中、作業が始まります。ジャン=ルイはフィリップの合図で綱をつけた矢を放ちます。しかし重い鉄のワイヤーが、固定される前に落ちてしまいます。ジャン=ルイとアルバートは素手でケーブルを引っ張りますが、アルバートが途中で諦めて去ってしまいます。ジャン=ルイの尽力で何とか綱を固定することはできましたが、理想的ではありませんでした。それでもフィリップは綱の上に足を踏み出します。そして45分間8往復の綱渡りの後、フィリップは不法侵入と治安紊乱行為の罪で逮捕されます。しかしその後の裁判で、セントラルパークで子供たちにジャグリングを見せるという条件で容疑は撤回されます。港湾管理委員会はフィリップに、永遠に有効と記されたワールド・トレード・センター展望デッキへのVIP許可証を贈呈します。

レビュー・解説 

今は亡きワールド・トレード・センターがまだ工事中の頃、ツインタワーの間にワイヤーを張り、その上を歩いたフランス人の男とその仲間たちを描いたドキュメンタリーです。綱渡りと行っても、セキュリティーをかいくぐって機材を運び込み、411メートルに高さに長さ40メートル以上のワイヤーと揺れ止めを張って渡るのですから、周到な準備がいります。この映画は決行日の6年前、フィリップが新聞でツインタワーの模型の写真を見た時まで遡って、さながら銀行破りのように準備を進める様子も描いています。

 

ツインタワーが崩壊してしまった今、幼少の頃にいたずらをした故人のエピソードを聞いて懐かしむような気分にさせる映画です。日本だと新聞の片隅に載って忘れ去られる話でしようが、そこには彼だけではなく、彼を支えた恋人や仲間たちのドラマもありました。エンディングのエリックサティのジムノベティ1番が心に染みます。

 

監督したのは、後に「博士と彼女のセオリー」で名を知られるジェームズ・マーシュですが、捕まるのも厭わず411メートルの高さで綱渡りする芸術的確信犯のフィリップ・プティの扱いには苦労したようです。

ニューヨークの人々は、例え彼の曲芸を見なかったとしても、フィリップをおぼろげながら記憶しています。それはニューヨークの都市伝説のひとつです。私は2006年の春に、初めてフィリップに会いました。彼は、決して「いいよ、映画を取ろう」とは言いそうにありませんでした。まず、いくつかのテストに合格する必要がありました。彼の大きな関心は、「一緒にいたずらしてくれますか?」でした。私は彼が綱渡りを敢行したのと同様、反体制的で面白い映画にしたいと思っていました。彼は、決して協力的な人ではありません。彼は潔癖なほど緻密でした。強い意見を持った人と一緒に仕事をする事は、いつも楽しくて素敵だとは限りません。私たちは最終的に良い友達になりましたが、いつもそうだったわけではありません。(ジェームズ・マーシュ監督)

 

映画には9.11に似た構図があります。

基本的にツインタワーを攻略するプロットであり、攻略するのはすべて外国人です。彼らはツインタワーの周りをうろつき回り、ありとあらゆる写真を撮り、様々な会社で正式に働いている振りをして中に入ります。最も大きな違いは、結果が美しいことです。違法ですが、悪意のある不正ではありません。(ジェームズ・マーシュ監督)

 

映画は絶妙のタイミングで製作されています。

フィリップの本は、ツインタワーが崩壊してから完成しました。私はそれが実現のひとつの要素になったと思います。これがもし2002年か2003年ならば、破壊や殺人、テロ、憎悪に無縁な話に人々が興味を持つことができるか、私には自信がありません。これは芸術的犯罪への純粋な渇望の話なのです。ツインタワーの破壊と、描かれた生きて息をするビルとの間に少しばかりの距離がある今がベストだと思います。映画ではツインタワーが高くなっていき、倒れないのです。(ジェームズ・マーシュ監督)

 

ドキュメンタリーは綱渡りの準備と決行を描いていますが、観た後に思わずツインタワーに思いを馳せてしまう、そんな映画です。

 

ツインタワーの間を綱渡りするフィリップ

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歩くだけではなく、寝たり、踊ったり、跪いたりしながら、45分間に8往復した。

 

アカデミー賞受賞式でオスカー像を顎に乗せてバランスをとるフィリップ

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オスカー像は重さが4キロもあり、練習が必要だった。ウディ・アレンの家で実物を借りて1時間練習し、その後、レプリカを作って1週間練習、本番に臨んだ、根っからの大道芸人である。

撮影地(グーグルマップ) 

ワールドトレードセンター(跡地)

関連作品 

「マン・オン・ワイヤー」の原作本
   フィリップ・プティ著「マン・オン・ワイヤー」

 

ジェームズ・マーシュ監督作品

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