「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(原題:Tropic Thunder)は、2008年公開のアメリカのコメディ映画です。ベン・スティラー監督、ベン・スティラー、ジャック・ブラックら個性派俳優の共演、さらに演技派のロバート・ダウニー・Jr. ら大スターが加わり、戦争映画を撮影中の俳優たちが本当の戦闘に巻き込まれて奮闘する姿を描いています。第81回アカデミー賞で、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr. )にノミネートされた作品です。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ベン・スティラー
脚本:ベン・スティラー/ジャスティン・セロー/イータン・コーエン
原案:ベン・スティラー/ジャスティン・セロー
出演:ベン・スティラー(タグ・スピードマン、落ち目の俳優、最新作にかけている)
ジャック・ブラック(ジェフ・ポートノイ、喜劇役者、麻薬中毒)
ロバート・ダウニー・Jr.(カーク・ラザラス :オスカー俳優、役の為皮膚整形)
ブランドン・T・ジャクソン(アルパ・チーノ、人気黒人ラッパー)
ジェイ・バルチェル(ケヴィン・サンダスキー、無名俳優、新兵訓練に参加)
ダニー・マクブライド(コディ:火器、爆発等特殊効果担当、原作のファン)
スティーヴ・クーガン(デミアン・コックバーン;ひ弱な英国人映画監督)
ニック・ノルティ(ジョン「フォーリーフ」テイバック、新作の原作者、義手)
トム・クルーズ(レス・グロスマン、利益最優先のプロデューサー、利己的)
マシュー・マコノヒー(リック・ペック、タグのエージェント、唯一の友人)
ほか
あらすじ
ベトナム戦争を題材にした映画撮影の為に、三人のスターがベトナムのロケ地にやってきます。スピードマンは返り咲きのチャンスを賭ける落ち目のアクションスター、ポートノイは下品なコメディから芸域を広げたい人気の喜劇俳優、ラザラスは黒人軍曹役のために肌を黒くする手術まで受けるほどの役者馬鹿なオスカー俳優です。製作スタッフは、わがままな俳優達のせいで、撮影5日で予算を使い果たしてしまい、撮影中止の危機に陥ります。困った監督はリアリティを出すために彼らを東南アジアのジャングルに放り込み撮影を再開させますが、そこは本物の無法地帯でした・・・。
レビュー・解説
ベン・スティラーが監督、主演、脚本、原案、製作の5役を務め、メイン・キャラクターのジャック・ブラック、ロバート・ダウニー・Jr.の他にトム・クルーズ、マシュー・マコノヒーなど大スターが出演、1億ドル以上の制作費をかけた、豪華で強烈なコメディです。「プラトーン」や「ハンバーガーヒル」に出演する為にブートキャンプ(新兵強化訓練)や戦闘シミュレーションを経験した友人たちから「実際に兵士になった気がする」という話を聞いて面白いと思ったベン・スティラーが、ブート・キャンプを経験してPTSDになった俳優を描いたら面白いと思ったのが映画化の発端でした。製作に先立ち、ベン・スティラーは、
といった戦争映画を研究しており、本作にはこれらの作品を彷彿させる部分や、模したシーンがあります。
役作りの為、皮膚移植をして黒人になったカーク・ラザラスを演じるロバート・ダウニー・Jr は、ベン・スティラーが「ピーター・セラーズ(イギリスの伝説的コメディアン)の域に達していると思う」と絶賛するほど見事な演技で、本作で第81回アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされています。彼が扮するカーク・ラザラスはメソッド演技(役柄の内面に注目、感情を追体験することに行う、より自然でリアルな演技)を行いますが、ロバート・ダウニー・Jr.自身もメソッドで演技する俳優で、彼はメソッドで演技する役者をメソッドで演技するというややこしい事をしていたことになります。ダウニー・Jr.は、撮影の合間もカーク・ラザラスになりきったままでした。「DVDのコメンタリーが終わるまで、俺はキャラクターのままだ」というカーク・ラザラスのセリフが本作にありますが、ダウニー・Jr.は実際にカーク・ラザラスのキャラクターで本作のDVDのコメンタリーを行っています。
トム・クルーズ、マシュー・マコノヒーなど大スターが出演した理由について、「彼らに脚本を送って何をやろうとしているのか説明したら、面白いと言って参加してくれた」と、ベン・スティラーは語っています。こうした大スターは、常々、コメディをやりたいと思っているが、その機会がなかなかないという話を聞いたことがありますが、まさにその通りのようです。
マシュー・マコノヒーは熱血漢という彼が得意とする役回りですが、トム・クルーズは、一見して彼とはわからないようなメイクで、利己的で冷徹なプロデュサーを演じています。この役は、映画の製作現場のパロディなのにスタジオのお偉方のパロディがないじゃないかと、脚本を読んだトム・クルーズに言われて作られた役で、彼は顔と頭のメイク、胸の腕の付け毛に加えて、彼自身の発案で大きな人造の手をつけて演技しています。
トム・クルーズはこの扮装で、見事なダンスを披露しています。このダンスも脚本にはなく、たまたまメイク・テストをしている時に、彼が「こいつ(彼が演ずるレス・グロスマン)と踊ってみたい」と言い出し、撮影してみたら良かったので、脚本を書き直して実現したものです。このダンスは、ソロでエンディングにも使われるという破格の取り扱いでしたが、映画公開後に注目されてレス・グロスマンのキャラクターとともにスピン・オフ、2010年のMTVアワードではレス・グロスマンに扮したトム・クルーズとジェニファー・ロペスのダンス・パフォーマンスも披露されました。
この映画は、偽の予告編から始まるという凝った作りになっていますが、これにはユニヴァーサルをはじめ実際のメジャースタジオのロゴが映し出されており、ついつい本物の予告編と勘違いし、チャプターを飛ばしそうになってしまいます。実際、上映に当たっては「映写技師の方は、そこでカットしないでください」と、注意が促されました。これらの偽の予告編はCMを入れた四部構成で、いずれも晴らしい出来です。
- ラップ歌手アルパ・チーノ(ブランドン・T・ジャクソン)出演のエナジー・ドリンクのCM
- タグ・スピードマン(ベン・スティラー)主演「Scoacher」の予告編
- ジェフ・ポートノイ(ジャック・ブラック)主演「The Fatties」の予告編
- カーク・ラザラス(ロバート・ダウニー・Jr)、トビー・マグワイア(本人)主演「Satan's Alley」の予告編
偽の予告編は、各メインキャラクターの俳優としての活動を紹介する導入になっており、偽の公式サイトまで作られました。また、CMのエナジー・ドリンク「Booty Sweat」は、米アマゾンで期間限定販売されました。
さらに、終盤には偽のアカデミー賞授賞式が挿入されており、偽の予告編のトビー・マグクワイアに加えて、トム・ハンクス(写真)、ジェニファー・ヒューイット・ラブがカメオ出演しています。
プラトーンを模したシーン
動画クリップ(YouTube)
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関連作品
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「ディア・ハンター」(1978年)
「地獄の黙示録」(1979年)
「フルメタル・ジャケット」(1979年)
「プラトーン」(1986年)
「アメリカの災難」(1996年)
「メリーに首ったけ」のDVD(1998年)