「フランシス・ハ」(原題:Frances Ha)は、2012年公開のアメリカのヒューマン・ドラマ映画です。ノア・バームバック監督、ノア・バームバック/グレタ・ガーウィグ共同脚本、グレタ・ガーウィグ、アダム・ドライバーら出演で、ニューヨークを舞台に、モダンダンサーを目指すも芽が出ず大人にもなりきれない27歳の女性が、自分の居場所を探す試行錯誤を繰り返しながら自分の人生を見つめ直す姿を、モノクロ映像でユーモラスに描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ノア・バームバック
脚本:ノア・バームバック/グレタ・ガーウィグ
出演:グレタ・ガーウィグ(フランシス)
ミッキー・サムナー(ソフィ)
アダム・ドライバー(レヴ)
マイケル・エスパー(ダン)
マイケル・ゼゲン(ベンジー)
シャーロット・ダンバス(コリーン)
パトリック・ヒューシンガー(パッチ)
ほか
あらすじ
ニューヨーク市ブルックリンで、モダンダンサーとして大舞台に立つことを夢見るも芽が出ない27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)は、親友のソフィ(ミッキー・サムナー)とルームシェア、お金はないけど楽しく日々を過ごしていました。そんなソフィと一緒に過ごしたいが為に、一緒に住もうという恋人と別れたものの、ソフィが別の場所で他の友人と同居を始める為に出て行き、一人では家賃を払えないフランシスは住処をなくします。さらにフランシスはソフィーがパッチ(パトリック・ヒューシンガー)と婚約した事を知り、バレー・カンパニーからはもう芽が出ないと言い渡されます。周囲の人々が大人になっていくことに焦りを覚え、友人たちの間を転々としたり、故郷のサクラメントで両親とクリスマスを過ごしたり、パリへの短期旅行をしたり、試行錯誤しながら、フランシスは自分の人生について見つめ直し、ニューヨークに戻った彼女は振付師として人生の新たな一歩を踏み出します。
レビュー・解説
いつまでも気に入った仲間と面白可笑しく生活したいものですが、20代も後半ともなると世の厳しさもわかり始め、現実的な選択をして地に足がついた生活を考えなければならない時期にさしかかります。「フランシス・ハ」はそんな時期にさしかかった女性を、ユーモラスかつ爽やかに描いています。主演のグレタ・ガーウィグもちょうど、そんな時期でした。
(主人公の年齢が)27歳になったのは、当時のグレタと同じ年齢だったから。大学を卒業してしばらくたって、でもまだ30代でもないという、まさに宙ぶらりんな状態なんだけど、かといって遊んでいられるわけでもなく、大人の人生設計をしていかなければならない年齢なんだ。(ノア・バームバック監督)
主演のグレタ・ガーウィグは、アメリカの女優、映画監督、脚本家で、当初はマンブルコア映画(インディペンデント映画のジャンルのひとつで、低予算でアマチュア俳優を使い、普段の会話のようなでセリフで若者の日常をそのまま描くのが特徴)に携わり、知名度を上げました。「フランシス・ハ」では監督と共に脚本も担当していますが、自分は主演しないつもりで脚本に携わったと言われています。
ぼくは彼女以外の女優を最初から考えていなかったよ。彼女はおそらく脚本を書いている段階では、自分が俳優として参加するのを前提に取り組むんじゃなくて、あくまで脚本家の立場で客観的にアプローチしたかったんだと思う。(ノア・バームバック監督)
また、脚本には若者が好んで使いそうな「Undatable」(非モテ、恋愛対象外)といった造語など、若者の日常を描くマンブルコア映画的要素が取り入れられ、ヴィヴィッドなセリフが実現しています。
冒頭、フランシスとソフィーが少女の様に戯れるシーンが印象的です。フランシスは、傍目も気にせず全力投球の、子供のようにまっすぐな性格です。彼女が踊りながらニューヨークの街を駆け抜けるシーンがありますが、彼女のそんな性格を象徴しています。そんな彼女にも、大好きなルームメートが去り、ダンス・カンパニーからは、芽が出ないと言い渡される大ピンチが・・・。いわゆるアメリカン・ドリームものですと、そこで一念発起、友達の励ましを得て、栄光を掴むという展開になるのですが、この映画は違います。いろいろ抵抗するものの、結局フランシスは、ダンサーではなく、振り付け師になることを選びます。
<オチバレ>
エンディングは、振り付け師として自活できる様になったフランシスが一人で住む部屋を借りて、ポストに名札を入れるシーンです。彼女のフルネームはフランシス・ハラディというのですが、不器用な彼女が作った名札は大きすぎて、窓から「フランシス・ハ」までしか見えません。彼女のよちよち歩きのような独り立ちを象徴するエンディング、タイトルの由来でもあります。当初、タイトルはただの「フランシス」でしたが、同タイトルの映画があったため確定しないまま、エンディングが撮られ、そこから最終的なタイトルが決まりました。
<オチバレ終り>
ある意味、妥協を描いた映画でもあるのですが、多くの人にとって身近で避けられない妥協を、観客は映画で鑑賞しようとは思いません。そういう意味では、興行収入至上主義でリスクを冒しにくいメジャーでは扱いづらいテーマであり、インディーズならでは映画と言えます。わずか4館からスタートし、口コミで全米233館まで拡大公開となったのは、多くの人にとって身近で避けられない妥協をユーモラスに、爽やかに描いたことが共感を呼んだのではないかと思います。
ノア・バームバック監督や、主演のグレタ・ガーウィグはいわば、成功者ですが、これに関してノア・バームバック監督は面白い事を言っています。
映画製作の現場においても、たとえすべてが計画どおりに進んで、運さえ味方してくれたとしても、現実には妥協しなければいけないことの方が多いんだ。この作品を撮っていたころ、自分はすでに40代前半だったんだけど、ぼくだって27歳のフランシス同様にいろんな悩みを抱えていたよ。フランシスがこの映画で経験する旅は、置かれた状況に関係なく、誰の人生にだって起こりうることなんだ。人は誰だってある程度現実的な決断をしていかなければならないし、それとおなじように魔法みたいなことだって起きうるんだ。(ノア・バームバック監督)
成功している人さえ多くの妥協をしているのであるらば、我々凡人が悲観しながら妥協するのは損な気がします。現実的な選択をしながらも、悲観することなくチャンスを待つというのも、実は人生で成功する為の秘訣なのかもしれませんね。
サウンド・トラック
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Frances Ha (Music From The Motion Picture) OST(Amazonデジタルミュージック)
1.Camille by Georges Delerue 2.Chrome Sitar by T. Rex 3.King Of Hearts La Pavane Polka by Georges Delerue 4.L'Ecole Buissoniere by Jean Constantin 5.Blue Swayby Paul McCartney 6.Domicile Conjugalby Antoine Duhamel |
7.Modern Love by David Bowie 8.Million Dollar Doll by Dean & Britta 9.Everyone's A Winner by Hot Chocolate 10.Miss Butter's Lament by Harry Nilsson 11.Negresco's Waltz by Georges Delerue 12.King Of Hearts Le Repos by Georges Delerue |
動画クリップ(YouTube)
- フランシスとソフィが戯れるシーン
- フランシスが踊りながらニューヨークの街を駆け抜けるシーン
- (オチバレ)フランシスの独り立ちを象徴するようなエンディング
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