夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「シンデレラ」:従来のお姫さま物語パターンを超えた、感動のロマンティック・ファンタジー

「シンデレラ」(原題:Cinderella)は、2015年公開のディズニーによるロマンティックSFファンタジー映画です。シャルル・ペローの童話「シンデレラ」を原作とし、1950年公開のディズニー不朽の名作アニメ映画を実写化したもので、ガラスの靴やカボチャの馬車といったアイテムなど魔法の力と、勇気とやさしさで運命の人と結ばれるヒロインの姿を描いています。ヒロインと王子役に大ヒットTVシリーズで活躍中の新進気鋭、リリー・ジェームズリチャード・マッデンを起用、継母役のケイト・ブランシェット、フェアリー・ゴッドマザー役のヘレナ・ボナム=カーターなど実力派が脇を固めています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ケネス・ブラナー
脚本:クリス・ワイツ
原作:シャルル・ペロー「シンデレラ」
美術:ダンテ・フェリッティ
衣装:サンディ・パウエル
出演;リリー・ジェームズ(エラ、シンデレラ)
   リチャード・マッデン(王子)
   ケイト・ブランシェット(まま母)
   ヘレナ・ボナム=カーター(フェアリー・ゴッドマザー)
   ホリデイ・グレインジャー(アナスタシア)
   ソフィー・マクシェラ(ドリゼラ)
   デレク・ジャコビ(国王)
   ステラン・スカルスガルド(大公)
   ノンソー・アノジー(大佐)
   ベン・チャップリン(エラの父)
   ヘイリー・アトウェル(エラの母)
   ほか

あらすじ

エラ(リリー・ジェームズ)は貿易商の父(ベン・チャップリン)と優しく美しい母(ヘイリー・アトウェル)の愛情を一身に受け、幸せな子ども時代を過ごしてました。母が病に倒れこの世を去り、悲しみにくれながらも母の「辛いことがあっても勇気と優しさを忘れないで」という教えを守り、純粋な心を持つ女性に成長しました。仕事で長旅が多い父は、エラをひとりで家に残すことを忍びなく思い、再婚を決意、エラは継母(ケイト・ブランシェット)とその連れ子の娘、ドリゼラ(ソフィー・マクシェラ)とアナスタシア(ホリデイ・グレインジャー)を快く迎え入れます。しかし、継母は夫がエラにかける愛情に嫉妬し、エラの若さや美しさを不愉快に思っていました。そんな折、旅先で父までもが突然帰らぬ人となってしまいます。すると、継母と娘姉妹はエラに辛くあたるようになり、エラに山のような仕事を言いつけ、屋根裏部屋に追いやられたエラは召使い同然の扱いを受けるようになります。寒さに耐えられない夜、ぬくもりの残る居間の暖炉の前で眠り、翌朝、顔に暖炉の灰をつけたまま働くエラを、姉妹は「灰まみれのエラ=シンデレラ」と呼び、大笑いします。じっと耐え続けてきたエラでしたが、涙を抑えきれず家を飛び出し、森に馬を走らせます。そんなエラに、城で働いているという「キット」(リチャード・マッデン)と名乗る青年が声をかけてきます。彼と話すうちにエラはいつのまにか笑顔を取り戻し、キットに好意を抱き始めます。彼は「また会おう」と言い残し、城へ帰っていきます。城で息子のキットを待ち構えていた国王(デレク・ジャコビ)は国と息子の将来を案じ、政略結婚を勧めますが、キットはエラのことが忘れられません。そこでエラを探すために国中のあらゆる未婚女子を招待して舞踏会を開き、そこから妃を選ぶことを約束します。招待状はエラの家にも届き、「キットに会えるかもしれない」と考えたエラは、亡き母のドレスを着て自分も連れて行って欲しいと頼みますが、継母と姉妹はエラのドレスを引きちぎり、彼女を置いて舞踏会へ出かけていきます。希望を失いかけていたエラの前に、みすぼらしい身なりをした老女が現れ、エラがミルクを差し出すと、老女は夢を叶えてくれる妖精フェアリー・ゴッドマザー(ヘレナ・ボナム=カーター)に姿を変えます。彼女が魔法の杖を振ると、魔法の杖を振るいカボチャを馬車に、ネズミを馬に、トカゲを御者に、ガチョウを御者に仕立て、エラの破れたドレスを美しいドレス変え、光り輝くガラスの靴ができます。「魔法が続くのは12時まで。さあ、楽しんでおいで」城に到着したエラは、そこで初めてキットが王子であることを知ります。夢のようなひとときを過ごし、お互いの気持ちを確かめ合う二人でしたが、そのとき12時を告げる鐘の音が響きます・・・。

レビュー・解説 

ロマンスを描いたディズニー作品が観客を魅了する時代は終わったという考えを覆し、伝統のディズニー・マジックが健在であること示した、画期的な作品です。

 

ディズニーは、2007年公開の「魔法にかけられて」で数々のおとぎ話を自らパロディ化しました。さらに2011年には、ディズニー・アニメの看板として愛されてきた伝統の「お姫さまアニメ」の製作打ち切りを発表しました。この背景には、ディズニー作品全体で人気を集めていたのは、ピクサー・アニメの「トイ・ストーリー」や、「パイレーツ・オブ・カリビアン」など男性の支持も得られる作品ばかりであり、「ディズニー=女の子のファンタジーの世界」という認識は過去のもので「お姫さまと白馬にまたがった王子とが結ばれる、ひたすらロマンスに終始する作品が観客を魅了する時代は終わった」との判断がありました。復活の為には、「王子とお姫さまは幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし・・・」といった紋切り型のワンパターンに尽きるお姫さまアニメに「斬新な切り口の語り方」を見い出いだす必要があるとしていました。そして2013年公開の「アナと雪の女王」で、白馬に乗った王子をものの見事に否定、姉妹愛を通して愛の本質は愛される事ではなく、愛する事にあるという強いメッセージを発し、空前のヒット作となりました。

 

この実写版「シンデレラ」では、「アナと雪の女王」ほど極端な転換をすることなく、核となるストーリーを踏襲、見せ場である魔法のシーンや舞踏会のシーンには贅を尽くす一方で、シンデレラと王子それぞれの親子愛や継母のいじめの背景を描き、物語に深みを与えています。さらに王子が乗るのは白馬ではなく、また父の仕事の見習い中という設定で、政略結婚ではなく自分が愛する人と結婚し、勇気と優しさで国を守りたいと考えていることを浮き彫りにしています。シンデレラは、母親の教えである「勇気と優しさ」を守り、いじめに耐えるだけではなく、葦毛の裸馬で森を駆ける逞しさも持つという設定で、森の中で出会った相手が王子と知らずに恋に落ちるシーンもビビッドに描いています。

 

二人は舞踏会の前に出会い、魔法の力を借りて二人の恋は舞踏会で燃え上がりますが、ガラスの靴を持って王子が尋ねた来た際に、果たして自分は王子にふさわしいのか、魔法には頼れない、ありのままの自分が見られる、(たまたま恋した相手が王子だった為に)恋の成就にリスクがあると、シンデレラは認識します。母の教え「勇気と優しさを忘れずに」を胸に、王子と再会、「私は王女でもなく、馬車も持っていません。両親も失い、持参金もありません。靴が合えば、ありのままの私を選んでくれますか?あなたを愛する正直な田舎娘を。」と問います。これは、決して棚からボタモチ、王子と結ばれめでたし、めでたしではない。相手が誰であろうと、恋にリスクはつきもの。恋するが故、リスクに対峙するせざるを得ない女性の普遍的な気持ちを描いています。

 

「シンデレラ」はアメリカ製作の映画ですが、監督のケネス・ブラナー、衣装のサンディ・パウエル、出演のリリー・ジェームズリチャード・マッデン、ヘレナ・ボナム=カーターはイギリス人、ケイト・ブランシェットはオーストラリア人、美術のダンテ・フェリッティはイタリア人と、メインのスタッフ、キャストはすべて、アメリカ人以外で、撮影もイギリスで行っています。ディズニーの伝統を生かしながら現代に蘇らせる為には、長い伝統を受け継いできた国の人々の力が必要だったのかもしれません。

 

アナと雪の女王」のような斬新なディズニー作品も良いですが、恋が人間の本能であり、決して消え去る物ではない事を考えれば、この実写版「シンデレラ」や、フランス映画の実写版「美女と野獣」のようにロマンスを描いたディズニー作品を今後も期待したいところです。

 

裸馬で森を駆けるシンデレラ

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動画クリップ(YouTube

王子との出会い

王子:大丈夫?
シンデレラ:彼を怖がらせたわね。
王子:彼?
シンデレラ:シカよ。シカに何の恨みが?
王子:狩りをしていただけさ。君の友達?
シンデレラ:そうよ。今、出会ったの。見つめ合って、彼を死なせてはいけないと感じたわ。
王子:君の名前は?
シンデレラ:聞かないで。
王子:森の奥は危険だ。
シンデレラ:あなたがいるから大丈夫。名前は?
王子:僕を知らない?名前は・・、キットだ。父は機嫌いいとそう呼ぶ。
シンデレラ:それで、家はどこ?
王子:宮殿で父からあれこれ習っている。
シンデレラ:見習い?
王子:まあね。
シンデレラ:お城の人たちは親切?
王子:必要以上にね。君は?
シンデレラ:なんとか耐えているわ。
王子:気の毒に。
シンデレラ:気にしないで。
王子:でも辛いんだろ?
シンデレラ:でもないわ。もっと不幸な人がいるし、だから、勇気と優しさを忘れたくないの。
王子:そうだね。その通りだ。僕もそう思う。
シンデレラ:シカを殺さないで。
王子:でも動物を殺すのが狩りだ。
シンデレラ:決まり事が正しいの?
王子:言う通りだ。

 

魔法で変身

ゴッドマザー:これでよし。どこまで、話を?
シンデレラ:そんな。
ゴッドマザー:そうだわ。馬車に似たものを見つけなくちゃ。
シンデレラ:木のおけは?
ゴッドマザー:馬車とは大違い。果物か、野菜がいいわ。スイカはある?
シンデレラ:いえ。
ゴッドマザー:メロン。
シンデレラ:それは何?
ゴッドマザー:アンティチョーク?キンカン?トマト?
シンデレラ:カボチャなら。
ゴッドマザー:カボチャは初めてだけど、面白そう。潰れやすくて面倒だけど。あれがいいわ。ナイフ!
シンデレラ:どうぞ。
ゴッドマザー:ありがとう。カボチャさん、つるから切り離すわよ。よし。重いわね。どいて。ここでやりましょ。
シンデレラ:何をするの?
ゴッドマザー:馬車に変えるの。気が散るわ。
シンデレラ:目を閉じる?
ゴッドマザー:そうね。試してみるわ。手応えありね。コツは忘れたわ。
シンデレラ:かぼちゃが大きくなりすぎたら?危ない。これが魔法?
ゴッドマザー:効きすぎたわ。逃げて!
ゴッドマザー:馬車の出来上がり。
シンデレラ:本当にゴッドマザーなのね。
ゴッドマザー:誰にでも魔法を使う訳じゃないのよ。ネズミたちは?
シンデレラ:ネズミ?
ゴッドマザー:いたわ。ビビディ・バビディ・ブー!4頭の白馬よ。
シンデレラ:ガス、大変身ね。凄いわ。
ゴッドマザー:お次は?馬車と馬、従者。
シンデレラ:従者?
ゴッドマザー:トカゲさん、ビビディ・バビディ・ブー!
ミスタートカゲ:僕に用?
ゴッドマザー:御者も必要ね。
シンデレラ:御者?
ゴッドマザー:ガチョウがいいわ。
ミスターガチョウ:やったことないよ。
ゴッドマザー:急いで!早く持ち場について。急いで。
シンデレラ:フェアリーゴッドマザー?
ゴッドマザー:何なの?
シンデレラ:こんなドレスじゃ無理よ。直していい?
ゴッドマザー:直す?新品に変える。
シンデレラ:それは駄目。母のドレスなの。これを来て王宮へ、母と一緒のつもりで。
ゴッドマザー:わかるわ。ちょっぴり変えていい?ブルーは嫌い?
シンデレラ:素敵。
ゴッドマザー:どう?
シンデレラ:綺麗。母も気に入るわ。
ゴッドマザー:さあ、早く行って。遅れるわ。
ミスターガチョウ:馬は始めてだ。ヒヤヒヤだ。
ゴッドマザー:そこの馬車、止まって!
シンデレラ:ありがとう。
ゴッドマザー:待って。その靴しかない?
シンデレラ:どうせ見えないわ。
ゴッドマザー:おめかししても、靴で台無し。早く脱いで。新しいのを出すわ。靴の魔法は得意なの。
シンデレラ:ガラスの靴?
ゴッドマザー:そうよ。履き心地もいいわ。早く行きなさい。
シンデレラ:ゴッドマザー。
ゴッドマザー:何?
シンデレラ:新しい母と姉は?
ゴッドマザー:大丈夫。あなたとは気づかないわ。さあ、舞踏会へ行ってらっしゃい。
ミスタートカゲ:凄い魔法ですね。
ゴッドマザー:お黙り。
ゴッドマザー:忘れてた。いいこと?魔法は長く続かないの。真夜中の12時の鐘が鳴り終わると、魔法は解けて元に戻ってしまうわ。
シンデレラ:真夜中ね。
ゴッドマザー:12時よ。
シンデレラ:時間は十分にあるわ。
行って。
シンデレラ:本当にありがとう。
ゴッドマザー:ガチョウさん、出発!

 

舞踏会のシーン

 

エンディング・シーン

王子である事を知ったシンデレラは、もしガラスの靴が合ったなら、王子を愛するありのままの自分を愛してくれるか、ガラスの靴を試着する前に王子に尋ねます。

ゴッドマザー(声のみ):果たして自分は王子にふさわしいのか、魔法には頼れません。最大の難関です。ありのままの自分が見られるのです。

母(声のみ):勇気と優しさを忘れずに。
王子:君は?
シンデレラ:シンデレラです。陛下、私は王女でもなく、馬車も持っていません。両親も失い、持参金もありません。靴が合うかどうかわかりませんが、もし合えば、ありのままの私を選んでくれますか?あなたを愛する正直な田舎娘を。
王子:もちろんだ。ありのままの僕で良ければ。

 

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関連作品

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ケネス・ブラナー監督/出演作品のDVD(Amazon

  「愛と死の間で」(1991年) 監督・主演

  「ヘンリー五世」(1989年)監督・主演

  「から騒ぎ」(1993年)監督・主演

     「ハムレット」(1996年)監督・主演

  「裸足の1500マイル」(2002年)出演

  「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(2002年)出演

  「マリリン 7日間の恋」(2011年)出演

  「シンデレラ 」(2015年) 監督

 

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  「理想の結婚」(1999年)

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  「ロード・オブ・ザ・リング」三部作(2001年-2003年)

  「アビエイター」(2004年)

  「あるスキャンダルの覚え書き」(2006年)

  「ブルージャスミン」(2013年)

  「キャロル」(2015年)

  「マイティ・ソー バトルロイヤル」(2017年)

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