「おとなの恋には嘘がある」(原題:Enough Said)は2013年公開のアメリカのロマンティック・コメディ映画です。娘と2人暮らしのバツイチの中年女性エヴァが、パーティで出会った中年男性アルバートと惹かれ合うようになるものの、親友となったばかりの女性マリアンヌから散々悪口を聞かされていた元夫が実はアルバートであると知り、戸惑う姿をユーモラスに描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ニコール・ホロフセナー
脚本:ニコール・ホロフセナー
出演:ジュリア・ルイス=ドレイファス(エヴァ:バツイチのマッサージ師)
ジェームズ・ギャンドルフィーニ(アルバート:バツイチの巨漢)
トニ・コレット(サラ:エヴェの親友のセラピスト、部屋の模様替えが好き)
キャサリン・キーナー(マリアンヌ:著名な詩人、アルバートの元妻)
トレイシー・フェアラウェイ(エレン:エヴァとピーターの一人娘)
タヴィ・ゲヴィンソン(クロエ:エレンの親友、エヴァの家に入り浸り)
ベン・ファルコーン(ウィル:サラの夫 )
イヴ・ヒューソン (テス:アルバートとマリアンヌの一人娘、少々生意気)
アンジェラ・ジョンソン=レイエス(キャシー:サラの家の家政婦)
エイミー・ランデッカー(デビー:クロエの母親、派手)
トビー・ハス(ピーター:エヴァの元夫)
クリス・スミス(ハル:エヴァの常連客の1人、気が利かない)
キャスリーン・ローズ・パーキンス(フラン:ピーターの現在の妻)
レニー・ロフティン(マーティン:エヴァの常連客の1人、口臭が気になる)
ジェシカ・セント・クレア(シンシア:エヴァの常連客の1人、お喋り)
ほか
あらすじ
ボディ・セラピストのエヴァ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)は離婚して10年、仕事は充実、最愛の一人娘との生活が楽しく、本音で話せる親友もおり、恋人がいなくても幸せでしたが、娘が大学に合格して独り立ちすることになります。そんな中、友達のパーティでアルバート(ジェームズ・ガンドルフィーニ)と出会い、バツイチで娘一人という境遇も、ユーモアのセンスも同じアルバートの、おおらかで優しい人柄に惹かれていきます。新しく顧客になった詩人のマリアンヌ(キャサリン・キーナー)との間にも友情も芽生えます。魅力的なライフスタイルのマリアンヌでしたが、結婚だけは大失敗だったとエヴァに打ち明けます。エヴァは元夫のダメ人間ぶりに一緒になって眉をひそめますが、マリアンヌの元夫がアルバートであることに気づきます。真実を告げるチャンスを逃すうちに・・・。
レビュー解説
ライトなロマンティック・コメディで、気負うことなく楽しめます。主演のジュリア・ルイス=ドレイファスはコメディアンヌ出身で、撮影時51歳で、バツイチの庶民的なシングル・マザーを、その仕事ぶりや、娘、娘の友達、友人たちとの関係を含めて、さらりとコミカルに演じています。相手役のジェームズ・ギャンドルフィーニも同い年で、ジュリアの演じるシングル・マザーを、おおらかに優しく受止める役を演じています。
邦題の「おとなの恋には嘘がある」は、エヴァがアルバート、マリアンヌの両方の知り合いであることを隠していたことを意味すると思われますが、それを嘘というかどうかは別にして、大人のコメディには言えない事がないようです。例えば、出会って早々、
Eva: I could not believe what I was watching! No brains, and the fake cheekbones, and the fake boobs. Do you like fake boobs?
Albert: ...No. No, I like real boobs.
Eva: Yeah - I got real boobs.
Albert: ...That's workin' out for us then.エヴァ:テレビで観たのは、みんな馬鹿で、整形していて、偽物のおっぱいも・・・。偽物のおっぱいは好き?
アルバート:いや。本物がいい。
エヴァ:私のは本物。
アルバート:そりゃ都合がいい。
なんて、会話をしています(さすがにアルバートは慎重に答えていますが)。若者向けの音楽がうるさいレストランでは、
Eva: Did they just turn the music louder.
Albert: No, I think you just got older.
とも。二人は、お互い面白いことを言おうと、ジョークの応酬をするのですが、そのうち、
Eva: I'm tired of being funny.
Albert: Me too.
極めつけは、エヴァを自宅でのブランチに招待したアルバートが、ラフな格好で迎えた時のこと。
EVA: Look, I can see your penis.
ALBERT: What?
EVA (looking away) I saw your penis. Your pajama thing is kind of open.
Albert instantly drops his hand to cover himself. He’s mortified. After a minute, he jokes.
ALBERT: Whaddya think?
EVA: I think you’re very... healthy.
ALBERT: Thank you.
EVA: Go change your pants, okay?
ALBERT: Be right back.エヴァ: ちょっと、ペニスが見えるわよ。
アルバート:えっ?
エヴァ:(目をそらし)ペニスが見えたの。あなたのパジャマみたいなの、開いてるの。
アルバート:(慌てて隠し、恥じ入るが、思い直して)で、どうだった?
エヴァ:ええ、とても・・・、健康的だと思うわ。
アルバート:ありがとう。
エヴァ:ズボンを変えてきてね。
アルバート:すぐに変えてくるよ。
娘が可愛くて可愛くてしょうがないないアルバートに、聞きかじった話をするエヴァ。
Eva: [Albert's daughter has just left with some friends] You think they have threesomes?
Albert: What? Why would you say that?
Eva: I know, but apparently, that's what they're doing these days. That's what I heard.エヴァ:(アルバートの娘達を見送りながら)彼ら、3Pをやっていると思う?
アルバート:えっ?なんでそんなことを言うんだ?
エヴァ:私、聞いたんだ。最近の若い人たちはそんなことをしてるんだって。
原題の「Enough Said」は、「よくわかった、もう言わなくてもいいよ」という意味です。アルバートも自分の欠点は良く知っていますが、マリアンヌからいろいろ聞かされたエヴァの言うことが、かつてマリアンヌからさんざん言われたことにだんだん似てきます。まさに、「Enough Said」。これで、二人は険悪になってしまいますが、二人はお互いを忘れることができません。自分でナイト・テーブルを買ってものを整理することさえ出来ないと、マリアンヌにこき降ろされていたアルバートが、
Albert: I should tell you... I bought some night tables.
Eva: You did?
Albert: No.
[Eva laughs]
Albert: No, I didn't.
Eva: OK, that's good.アルバート:言っておこう、ナイト・テーブルを買ったんだ。
エヴァ:買ったの?
アルバート:いや。買ってない。
エヴァ:(笑って)ええ、それでいいわ。
ナイト・テーブルの話もマリアンヌから吹き込まれているだろうと踏んだアルバートが、それを逆手に取ってジョークにしている訳ですが、アルバートも変わるつもりは無い、エヴァもそれで良いと言う、惹かれ合った二人がお互いをありまままで受けいれるところに、大人を感じます。
エヴァを演ずるジュリア・ルイス=ドレイファス(右)
少し変わっていて、少し高いところにいるマリアンヌは、キャサリン・キーナーのはまり役です。
エヴァの娘の友人を演じるタヴィ・ゲヴィンソンは、12歳の時に書いたファッション・ブログで有名になった雑誌ライター・編集者・女優で、撮影時16歳です。自分の家にいるよりいいとエヴァになつく素直な子を、ナチュラルに演じていて好感を持てました。
タヴィ・ゲヴィンソン
アルバートを演じたジェームズ・ギャンドルフィーニは本作が公開される前の2013年6月に心臓発作で亡くなってしまいました。とても味のある役者だけに残念です。
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