夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ソリタリー・マン」:ピークを過ぎた男の身の堕とし方を円熟のマイケル・ダグラスが演じたダーク・コメディ

「ソリタリー・マン」(原題:Solitary Man)は2009年公開のアメリカのドラマ&ダーク・コメディ映画です。かつてセックス依存症と言われたマイケル・ダグラスが、まるで自虐パロディのように女たらしのダメ男をコミカルに演じています。

 

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監督: ブライアン・コッペルマン

    デヴィッド・レヴィーン

脚本: ブライアン・コッペルマン

出演: マイケル・ダグラス(ベン・カルメン:伝説的カーディーラー、女好き)

    スーザン・サランドン(ナンシー・カルメン:ベンの大学からの恋人、元妻)

    ダニー・デヴィート(ジミー・メリノ:ベンの大学からの友人。食堂を経営)

    メアリー=ルイーズ・パーカー(ジョーダン・カーシュ:ベンの恋人)

    ジェナ・フィッシャー(スーザン・ポーター:ベンとナンシーの娘、夫子有)

    イモージェン・プーツ(アリソン・カーシュ:ジョーダンの娘、大学に進む)

    ジェシー・アイゼンバーグ:(ダニエル・チェストン:ベンの母校の学生)

    リチャード・シフ(スティーヴ・ヘラー:ベンの取引相手で友人)

    ダグラス・マクグラス(エドワード・ギトルソン:ベンの母校の学部長)

    ほか

 

【あらすじ】

かつてはカーディーラーとして大成功していたが今は落ちぶれたもうすぐ60歳のニューヨーカー、ベン・カルメンマイケル・ダグラス)は、現在の恋人ジョーダン(メアリー=ルイーズ・パーカー)の父親である大手自動車メーカー役員のコネを利用して再起をはかろうとしますが、生来の女好きが災いし、ジョーダンの娘アリソンに手を出して仕事も生活を失います。欲望を抑えきれずにさらに娘の友人にまで手を出してしまったベンは、恋人のみならず家族からも見放されます。全てを失った上、ジョーダンの差し金で暴行を受けて大怪我をしたベンを元妻のナンシー(スーザン・サランドン)が迎えに来ますが・・・。

 

主人公のベンは反道徳的で不愉快な奴で、下手な役者が演ずると主人公が悪い!でおしまいになってしまいますが、マイケル・ダグラスはどこかしら憎めないように演じています。この効果は絶大で、じゃあ、主人公はどうすれば良いのか?と、逆に考えさせられてしまいます。

  • そもそも、心臓病の管理で不自由な生活をするよりも自由にやりたいと、一本、筋は通っている
  • 自由にやった結果として起きた事は、甘んじて受け入れている
  • 大怪我をしたベンを迎えに来た元妻は、あなた次第とベンに判断させる

タイトルの「ソリタリー・マン」は孤独な男という意味ですが、ベンは身勝手で愛する妻ともうまくやっていけないずに離婚しています。ベンは孫が可愛いくても、自分を律する事ができず、娘の家族と仲良く暮らしていくこともできません。そんなベンが自業自得で大怪我をした時に、何らかの形で手を貸したのは旧友のジミーと娘と元妻の三人でした。

 

無類の女好きという設定ですが、女好きに限らず、若い時や成功している時に通ったスタイルが、老いたり、落ち目になると通らなくなることは珍しくありません。また、特に年をとると、自分を変えるのが難しくなり、仕事一筋の男が定年退職後に妻との生活がうまくいかないという話もよく聞きます。そうした目で見てみると、無類の女好きというコミカルな設定とは裏腹に、意味深な映画でもあるような気がします。

 

往年のオスカー俳優のマイケル・ダグラスは円熟の演技で、シリアス物と異なった、コミカルなダメ男ぶりが素晴らしいです。セックス依存症と言われたマイケル・ダグラスの自虐映画ではないかという声もありますが、今年70歳の本人曰く、「性欲が衰えてから幸福になった」と。映画はともかくとして、一映画ファンとしては、実生活の奥様キャサリン・ゼタ=ジョーンズと仲良くやって欲しいです。

 

マイケル・ダグラス〜「ソリタリー・マン」

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マイケル・ダグラス同様、往年のオスカー女優スーザン・サランドンが演じる、元夫の酸い甘いも知り尽くした元妻が素晴らしい。

 

スーザン・サランドン〜「ソリタリー・マン」

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ダニー・デヴィートは友達思いの食堂の親父を演じていますが、マイケル・ダグラスとの共演は1989年公開の「ローズ家の戦争」以来で、1960年代はルーム・メイトだったこともあってか、旧友の感じが良く出ています。

 

ダニー・デヴィート〜「ソリタリー・マン」

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「RED」シリーズで大活躍のメアリー=ルイーズ・パーカーは、権力を持ったセレブを演じていてちょっと怖いです。

 

メアリー=ルイーズ・パーカー〜「ソリタリー・マン」

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父と自分の夫・子供の間で悩む父親思いの娘を演じるジェナ・フィッシャーがリアルです。この映画を撮影した時はまだ子供がいませんでしたが、その後、子供が誕生しています。

 

ジェナ・フィッシャー〜「ソリタリー・マン」

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イモージェン・プーツは、好奇心旺盛で怖いものなし、美しくて危険な娘役です。絶妙なキャスティングです。

 

イモージェン・プーツ〜「ソリタリー・マン」

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ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグは真面目で聡明な学生を演じています。これも絶妙なキャスティングです。

 

ジェシー・アイゼンバーグ〜「ソリタリー・マン」

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ベンと迎えに来たナンシーの会話です。ナンシーは迎えに来たからと言って、復縁するということではない。しばらくしてベンは立ち上がりますが、車に乗ったかどうかは?車に乗れば万事解決ということではなく、要はベン自身がこれからの生き方をどうするか、考えなければならないというエンディングと解釈しました。

ベン:30年前の俺は皆の注目を浴びる存在だった。ビジネスにも成功し、CMにも出ていたからな。

ナンシー:私も撮影現場にいた。

ベン:みんなが畏怖の念を持って俺を見ていたよ。でも12年ほど前から、状況が変わった。俺の事を知っているのは年寄りだけ。まるで透明人間さ。

ナンシー:私には見えたわ。

ベン:きみは妻だから当然だ。

ナンシー:年を取ればだれでもそうなるのよ。

ベン:生物学的にはそうだろう。でも、俺には受け入れられず、心電図には問題があり、検査が必要と言われて怖くなった。怖じ気づいたのさ。頭では検査すべきと思ったが・・・。

ナンシー:実際には? ベン:バーに行って酒を飲み、気を落ち着かせてから、ナンパした女を連れてホテルに直行したよ。

ナンシー:どんな気分に?

ベン:聞きたいか?最高だった。君には見抜かれると思ったが、何も言わないから、そのままにした。それからオフィスに行って帳簿を見ながら、正直でいるのが馬鹿らしくなった。それに、誰も止めなかったからな。

ナンシー:そうは言っても、検査を受けて、確認しようとは思わなかったの? ベン:医者の指示に従いながら生活するなんて、俺には許せない。この年の患者に向かって医者が言える事は限られている。「生存率は高い」とか、「良性のガン」とか、あとは「早期発見」さ。そんなのはゴメンさ。どうせ、心臓薬を飲まされ、安静にしてろと言われるだけさ。それなら心臓が破裂するまで好きなことをするさ。

ナンシー:死をごまかすことは、誰にも出来ないわ。いくら若い娘と寝たって、変わらない。

ベン:俺もそれに気がついたよ。

ナンシー:車で来てるの。もしニューヨークに帰る準備ができているのなら、送っていくわ。時間をあげる。どうしたいか考えて。

 

ベンが頼った旧友の食堂(シティ・アイランド)

 

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