夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ロスト・イン・トランスレーション」:渋いビル・マーレイと初々しいスカーレットの爽やかな絡み

ロスト・イン・トランスレーション」(原題:Lost in Translation)は、2003年公開のアメリカの映画です。ソフィア・コッポラ監督・脚本の作品で、東京を舞台に倦怠期のハリウッド俳優と、孤独な若いアメリカ人妻の淡い出会いと別れを描いています。2004年のアカデミー賞で、主要4部門の作品賞、監督賞、主演男優賞オリジナル脚本賞にノミネートされ、脚本賞を受賞しました。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ソフィア・コッポラ
脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ(ボブ・ハリス、サントリーウイスキーのCM撮影の為に来日)
   スカーレット・ヨハンソン(シャーロット、ジョンの妻、夫が忙しく孤独)
   ジョバンニ・リビシ(シャーロットの夫、カメラマン、仕事で来日)
   アンナ・ファリス(ケリー、映画女優、新作映画の記者会見の為に来日)
   ほか

あらすじ

サントリーウイスキーのCMに出演するために来日した年配のハリウッド俳優、ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)は、慣れない国で言葉も通じず孤独を感じていました。ボブは25年の婚姻生活に疲れ、中年の危機を迎えていました。ホテルに到着した翌朝、ボブは若いアメリカ人女性、シャーロット(スカーレット・ジョハンソン)とエレベーターに乗り合わせます。同じホテルに滞在するシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)は大学を卒業して結婚したばかりでしたが、セレブ写真家の夫ジョン(ジョバンニ・リビシ)は仕事に忙しく、孤独を感じていました。ジョンは自分よりも女優ケリー(アンナ・ファリス)のようなセレブに興味があるのではないかと思い、シャーロットは不安を抱いていました。ある夜、ジョンや友人達とテーブル席にいたシャーロットは、長時間の撮影を終えホテルのバーで疲れを癒すボブに気がつき、ウエイターに日本酒を1杯渡してもらいます。二人はホテル内で顔を合わせるうちに親しくなり、シャーロットは日本の友人達とのパーティにボブを誘います。ボブは若作りして現れ、二人はカタコトの英語を話す若者たちとの会話を楽しみ、カラオケでマイクを握って歌い、東京に来て初めて開放的な気分になります。2人の間に友情が芽生え、日本とアメリカの文化の違いや世代間のギャップを戸惑いながらも東京で冒険を続けます。CM撮影が終了しましたが、急遽舞い込んだテレビ出演の話を承諾し、滞在を延ばすことにしたボブは、シャーロットと絆を深めていきます。彼が発つ前々夜、ボブはホテルのバーのバンドのヴォーカリストにアプローチされ、不覚にも一夜を共にしてしまいます。シャーロットがボブを朝食に誘うために部屋に行くが、女性が部屋にいることがわかり、二人の間の空気が悪くなります。その夜、ホテルの火災報知機が鳴り、外に避難した二人はそこで和解し、ホテルのバーで名残惜しい時を過ごします。翌朝、アメリカ行きの飛行機に乗るボブは、ホテルをチェックアウトする前にロビーでシャーロットに別れを告げ、彼女がエレベーターに戻るのを寂しげに見つめます。空港へ向かうタクシーの中から歩道の人ごみの中にシャーロットの姿を見つけたボブは、タクシーを降りて彼女を追います。ボブはシャーロットと抱き合い、涙ぐむ彼女の耳元で何かを囁きます。2人はキスをし、ボブは旅立ちます。

レビュー・解説 

倦怠期の俳優を演じるビル・マーレイの渋い演技と、孤独な若妻を演じる国際的ブレイク直前の初々しいスカーレット・ヨハンソンの爽やかな絡みが光ります。女優としては評判が惨憺たるものだった、フランシス・フォード・コッポラの娘、ソフィア・コッポラが、監督として頭角を現した作品でもあります。外国人から観た東京が新鮮です。

 

タイトルの「ロスト・イン・トランスレーション」は、直接的には、翻訳の際に意味が失われてしまうことで、映画の早い部分でサントリーのCM撮影の際に通訳が不十分な為、ディレクターの意図が俳優にうまく伝わらない様が描かれています。しかしこれは比喩的表現で、映画のテーマとしてはもっと幅が広く、孤独を感じる中、例えば米国の家族に電話しても、うまく言葉にならない、気持ちが伝わらないといったもどかしさを描いています。また、気持ちが伝わらない孤独感、不安感を表現するため、日本以外で上映する時も日本語に字幕をつけていません。

 

ソフィア・コッポラは、主役にビル・マーレイを想定して脚本を書きました。もし、ビル・マーレイが出なければ、映画を止めるつもりでした。ビル・マーレイが折り返し電話をして出演について話し合うまで、彼女は何百回も留守電にメッセージを残したと言われています。出演は口約束で、撮影初日にビル・マーレイが現れるまで、ソフィア・コッポラは本当に出てくれるのか不安だったと語っています。

 

ソフィア・コッポラ自身、東京で過ごしたことがあり、この作品は半ば自伝的なものであると語っています。東京や日本での様々な発見や、体験がヴィヴィッドに描かれる一方で、シャーロットの夫、ジョンは、ソフィア・コッポラの前夫、スパイク・ジョーンズをなぞっており、新妻が感じる寂しさが描かれています。(ソフィア・コッポラは、1999年にスパイク・ジョーンズと結婚、「ジャッカス・ザ・ムービー」撮影の為、来日したスパイク・ジョーンズとともに日本を訪れています。その後、「ロスト・イン・トランスレーション」が公開された2003年に離婚しています。)夫の女友達で映画の女優のケリーのモデルは、スパイク・ジョーンズが監督した「マルコヴィッチの穴」に出演したキャメロン・ディアスではないかと噂されていますが、ソフィア・コッポラはこれを否定しています。

 

撮影時、スカーレット・ヨハンソンは17歳で、2003年に「真珠の首飾りの女」が公開され、様々な賞を総なめ、国際的評価が高まる直前でした。オープニングのタイトル・クレジットに透ける下着をはいたスカーレットのお尻のアップが映りますが、彼女はこれに抵抗がありました。ソフィア・コッポラ自身が、どう見えるのか身につけてみせて、スカーレットを納得させました。なお、このシーンのモチーフとなったのは、ジョン・カセールという画家の 「Jutta」という作品です。

 

撮影はパーク・ハイアット・東京で行われました。映画に何度か出てくるホテルの「ニューヨーク・バー」には、映画の撮影を記念して、L.I.T.(Lost In Translation の略)というオリジナル・カクテルのメニューがあります。

 

タイトルバック〜「ロスト・イン・トランスレーション

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タイトルバックのモチーフ(ジョン・カセール 「Jutta」)

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眠れぬ夜にホテルのプールで泳ぐシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション

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ホテルの窓から一人東京を眺めるシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション

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ゲーセンを探検するシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション」 

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カラオケで歌うシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション

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距離が近づくボブとシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション

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眠りこけたシャーロットを送るボブ〜「ロスト・イン・トランスレーション」 

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富士山に向かってドライバーを打つボブ〜「ロスト・イン・トランスレーション

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平等院でおみくじを結ぶシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション

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日本酒を酌み交わすボブとシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション

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ホテルの部屋で語り合うボブとシャーロット〜「ロスト・イン・トランスレーション

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帰りたくない、帰したくない二人〜「ロスト・イン・トランスレーション」 

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サウンドトラック

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ロスト・イン・トランスレーション オリジナル・サウンドトラック」(Amazon

1. INTRO/TOKYO
2. CITY GIRL / KEVIN SHIELDS
3. FANTINO / SEBASTIAN TELLIER
4. TOMMIB / SQUAREPUSHER
5. GIRLS / DEATH IN VEGAS
6. GOODBYE / KEVIN SHIELDS
7. TOO YOUNG / PHOENIX
8. 風をあつめて / はっぴいえんど
9. ON THE SUBWAY / BRIAN REITZELL
 & ROGER J MANNING JR
10. IKEBANA / KEVIN SHIELDS
11. SOMETIMES / MY BLOODY VALENTINE
12. ALONE IN KYOTO / AIR
13. SHIBUYA / BRIAN REITZELL
 & ROGER J MANNING JR

14. ARE YOU AWAKE? / KEVIN SHIELDS
15. JUST LIKE HONEY / THE JESUS
 & MARY CHAIN

16. 50 FLOORS UP / BRIAN REITZELL
& ROGER J MANNING JR (日本盤ボーナストラック)

 

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関連作品  

ソフィア・コッポラ脚本・監督作品

  「バージン・スーサイズ」のDVD(Amazon

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ビル・マーレイ出演作品のDVD(Amazon

  「トッツィー」(1982年)

  「ゴーストバスターズ」(1984年)

  「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」(1986年)

  「恋はデジャブ」(1993年)

  「エド・ウッド」(1994年)

  「天才マックスの世界」(1998年)

  「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001年)

  「ブロークン・フラワーズ」(2005年)

  「ムーンライズ・キングダム」(2012年)

   「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)

 

スカーレット・ヨハンソン出演作品

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