夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「フューリー」:デヴィッド・エアー監督の過激な演出とブラッド・ピットの深み

「フューリー」(原題:Fury)は、2014年公開のアメリカの戦争ドラマ映画です。第二次世界大戦時代に、たった一台の戦車で300人ものドイツ軍に戦いを挑んだ5人の男たちを描いています。

 

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監督: デヴィッド・エアー
脚本: デヴィッド・エアー
出演: ブラッド・ピット(ドン「ウォーダディー」コリアー )
    シャイア・ラブーフ(ボイド「バイブル」スワン)
    ローガン・ラーマン(ノーマン「マシン」エリソン)
    マイケル・ペーニャ(トリニ「ゴルド」ガルシア)
    ジョン・バーンサル(グレイディ「クーンアス」トラビス)
    アナマリア・マリンカ(イルマ)
    アリシア・フォン・リットベルク(エマ )
    ほか

 

【あらすじ】

1945年4月、連合国ナチス・ドイツに最後の攻勢をかけようとしていました。ドン「ウォーダディー」コリアー(ブラッド・ピット)が車長を務めるM4A3E8シャーマン「フューリー」号には、

が乗り組んでいました。長年の戦場での経験を持ち、戦車部隊のリーダー格存在であるウォーダディーは、デポで武装ナチス親衛隊に対して憎しみを顕わにします。「フューリー」号の副操縦手は戦闘で死亡し、補充として新兵でタイピストのノーマン・エリソン(ローガン・ラーマン)が配属されますが、ノーマンは戦車の中を見たことも無く、ましてや戦闘に参加したことありませんでした。ノーマン以外のクルーは北アフリカ戦役からの歴戦の猛者で、戦闘経験が無くドイツ兵を殺すのに怖じ気づくノーマンを過小評価します。戦車小隊が縦列で行軍中、ノーマンは敵の少年兵を見つけますが発砲をためらった為、先頭を走るパーカー中尉の戦車が少年兵の攻撃によって破壊されます。ウォーダディーは怒り狂い、戦争の現実を「教育」する為にノーマンに力ずくで銃を持たせ、捕虜を射殺させます。小さな町の制圧を通じて絆が深まったウォーダディーとノーマンは、民家に入り、ドイツ人女性のイルマ(アナマリア・マリンカ)とそのいとこエマ(アリシア・フォン・リットベルク)に出会います。ノーマンとエマはベッドを共にし、続いて4人で朝食を楽しもうとしましたが、他のクルーが押し入って緊張を引き起こします。伝令がやってきてウォーダディー達は任務に戻りますが、そこにドイツ軍の砲撃が行われ、砲弾がイルマの家を直撃、エマは死亡します。後退するドイツ軍が防衛戦に参加しない市民を殺害してその遺体を見せしめにする様子や、自らの町を燃やす様子を見て、ノーマンはドイツ兵に対する憎悪を燃やしていきます。ウォーダディーの率いる戦車小隊は、ドイツ軍は通過して攻撃してくるであろう十字路の確保を命じられます。部隊は途中、ドイツのティーガー戦車と遭遇、戦闘の末、ティーガーの撃破に成功するものの、その過程で4両の内3両が撃破され、残ったのは「フューリー」のみとなります。「フューリー」は単独で交差点まで進みますが、監視ポイントへ移動しようとした時に対戦車地雷を踏んで走行不能となり、交差点上で立ち往生します。ウォーダディーらは戦車を降りて、周囲を警戒、偵察をしていたノーマンは約300名からなる武装ナチス親衛隊の大隊を発見します。クルーは戦車を放棄して森へ逃げることを主張しますが、ウォーダディーはこれを拒否、1人で戦おうとします。初めは気が進まなかったクルーも、最終的に待ち伏せ攻撃を行うこと決意します。圧倒的な数の差にも関わらず、ウォーダディーとクルーは戦車砲及び小火器の全てを駆使してドイツ軍に多数の損害を与えますが、クーンアスはパンツァー・ファウストの噴流を受け、ゴルドは信管の外れた手榴弾を体で押さえ込み、バイブルは頭部に銃弾を受けて戦死します。狙撃兵の銃撃を受け負傷したウォーダディーは、ノーマンに戦車の脱出ハッチから逃げろと言います。ノーマンはハッチから脱出、地雷の爆発によってできた穴に隠れ、ウォーダディーは戦車の中に放り込まれた手榴弾の爆発によって戦死します。ノーマンは戦車の下をのぞき込んだ若いナチス親衛隊兵士によって発見されますが、兵士はノーマンをそのままにして先に進んでいきます。翌朝に到着したアメリカ軍部隊がノーマンを発見、「お前はヒーローだ」と話しかけ、「フューリー」乗組員の奮戦によってドイツ軍の攻勢が失敗に終わったことが暗示されます。多くのドイツ兵の死体と破壊された「フューリー」を戦場に残し、ノーマンは救急車で後方に搬送されていきます。

 

第二次世界大戦を舞台に戦車の乗組員を描く戦争映画ですが、この映画を際立たせているのは、リアリティにこだわるデイヴィッド・エア監督の演出です。彼は「エンド・オブ・ウォッチ」でも、臨場感あふれる演出で迫力の映像を提供してくれましたが、「フューリー」では撮影に先立ち、俳優に拳で喧嘩をさせ結束を強めるなどの過激な手法がとられ、殺気立った雰囲気が演出されています。これには、怪我をした一部の俳優から不満の声が上がるほどでした。また、ドイツ軍のティーガー戦車には、世界で唯一現存する実物が使用されています。

 

撮影に先立ち、一ヶ月の厳格な新兵訓練プログラムが実施され、最終試験は戦闘訓練における実物の戦車の操縦でしたが、当時50歳のブラッド・ピットは、他の若い出演者同様、すべての肉体トレーニングに参加しました。イギリスのオックスフォードシャーで行われた厳しい撮影では、食料もなく、シャワーも浴びられず、雨の中で眠るという悲惨なものであったが、それはそれで良いものだったと、ブラッドピットは語っています。第二次世界大戦における戦車の乗組員は二十代半ばくらいだった想定されますが、ブラッド・ピット第一次世界大戦のベテラン的位置づけで、荒くれの乗組員の統率や、人生や戦争経験の年輪を伺わせる円熟のパフォーマンスが映画に深みを与えています。

 

シャイア・ラブーフは、撮影の為、歯を抜き、撮影期間中は、一切、シャワーを浴びなかったと言われています。また、彼の顔の傷は本物で、演技のリアリティを増す為に、必要に応じて顔を傷つけていました。また、この映画の為に、彼はクリスチャンになったと言われています。

 

余談になりますが、シャイア・ラブーフは一見、大人しそうな顔立ちですが、実はスタンディング・コメディアン出身で、ジム・キャリーベン・スティラーのように、コメディ色の強い演技も得意とする多彩な俳優です。また、イギリスの芸術大学とコラボでパフォーマンス・アートも演じています。グリーン・スクリーンを背景に撮られたこのパフォーマンスは、容易に背景の合成が可能であり、このパフォーマンスを再利用した第三者の二次作品も製作されています。

 

シャイア・ラブーフの檄ベスト5

 

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  「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年)

 

シャイア・ラブーフ出演作品のDVD(Amazon

 

  「トランスフォーマー」(2007年)

  「ニンフォマニアック」(2013年)

 

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