夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ゼロ・グラビティ」:映画の可能性を拡げた無重力宇宙空間のリアルな描写

ゼロ・グラビティ」(原題:Gravity)は、2013年公開のアメリカの宇宙をSFファンタジー・ドラマ映画です。スペースシャトルで船外活動中の事故で宇宙空間へ放り出され、救助も期待できない絶望的状況で無重力の世界を漂い続ける2人の宇宙飛行士を、圧倒的な臨場感で再現した3D映像でスリリングに描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン/ホナス・キュアロン
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:サンドラ・ブロック(ライアン・ストーン)
   ジョージ・クルーニー(マット・コワルスキー)
   ほか

あらすじ 

地上600kmの上空で地球を周回しているスペースシャトル。今回が初めてのミッションとなる女性エンジニアのストーン博士は、ベテラン宇宙飛行士コワルスキーのサポートを受けながら船外での修理作業に当たっていました。その時、ロシアが自国の衛星を爆破したことが原因で大量の破片が軌道上に散乱し、猛烈なスピードでスペースシャトルを襲います。衝撃で漆黒の宇宙へと放り出された2人は絶望的な状況の中、互いを繋ぐ1本のロープを頼りに、奇跡の帰還を信じて決死のサバイバルを繰り広げます・・・。

レビュー・解説 

プロットは至ってシンプルですが、宇宙空間がかつてないほど美しく、また、実際に無重力の宇宙空間で撮影したかのようなリアルな映像に驚きます。どのように撮影したかも簡単には読めません。この映画は間違いなく、宇宙空間における人間の新たなドラマへのチャレンジです。

 

アルフォンソ・キュアロンとその息子ホナスは、ユニバーサル・ピクチャーズでこの作品の脚本を書きました。ユニバーサル・ピクチャーズは主役にアンジェリーナ・ジョリーの起用を希望していましたが、制作費が高かった為、プロジェクトは売りに出されました。また、撮影技術、視覚効果、真空がもたらすリアルな物語の雰囲気の実現等、チャレンジングな目標の為、映画は4年間の開発地獄を味わいました。アルフォンソ・キュアロンは、2009年に「アバター」が公開され、こうした技術が彼のヴィジョンに追いつくまで待たねばなりませんでした。

 

アルフォンソ・キュアロン監督、エマニュエル・ルベツキ撮影監督と視覚効果のティム・ウェバーは、従来の撮影法では望む映画は作れないという結論に達しました。ウェバーは、宇宙遊泳のシーンに関して、「俳優の顔を撮影し、他はデジタルで作成すると決めた」と語っています。これを実現する為には、登場人物がゆっくり宇宙空間に浮かんでいようが、向きを変えようが、回転していようが、俳優の顔に当たる光は地球、太陽、他の星々といったデジタル環境にマッチしなければなりません。これは「ライト・ボックス」によって解決されました。高さ約6メートル、幅約3メートルで、内部は196枚のパネルで出来ており、パネル1枚のサイズは約60センチメートル四方、4,096個のLED電球がはめ込まれています。必要に応じてどんな光や色でも投射出来、どんな速さにも対応出来るもので、俳優がライティングの中で動くのではなく、ライト・ボックスの中の俳優の周りで光が動くものです。

 

特殊効果監修のニール・コーボールドは、12本のワイヤーによって無重力を表現するシステムを10ヶ月かけて開発しました。このワイヤー装置は、サンドラ・ブロックの体に合わせて作られた超薄型のカーボンファイバー・ハーネスに取りつけられており、コンピュータ制御のミニチュア・レプリカを通しての遠隔操作が可能で、業界最高のパペッティア(操人形師)のロビン・ギバー、アビー・レベンティス、マイキー・ブレットが操作します。「パペットの世界では、優雅で表情豊かに物理の法則を破ることが出来る。僕たちはこの映画でも同じスキルを使い、他の方法では出来ない自由な動きを見つけていった」とギバーは語っています。

 

撮影準備の為に、サンドラ・ブロックは6ヶ月を肉体トレーニングに費やすかたわら、アルフォンソ・キュアロンと脚本をレビューしました。キュアロンは「何よりも逆境から再生できるかという、作品のテーマに関わることを話し合った」と語っています。彼らは、サンドラが各シーンをどう演ずるか話し合い、彼女のコメントは下絵のアニメやロボットのプログラムの中に反映されました。また、彼らはストーン博士の息づかいにフォーカスしました。「息づかいが感情をどう反映するかです。息づかいはある時はストレスに関係するが、酸素不足にも影響される」と、キュアロンは語っています。彼らの話し合いは、脚本やキャラクターの隅々までに及びました。

 

「彼女はすべてに渡って、ひとつひとつの決定に密接に関わったが、それは良い事だった。一旦、撮影準備に入ると、それはダンスのステップのようだ、1、2、3、左、左、4、5、6、右、という具合にね。彼女の見事に追従し、リハーサルも素晴らしかった。我々はすべてが本当であり、感情の産物であるかのように撮影することができた」と、キュアロンは語っています。彼の親友であり、彼の作品の大ファンでもあるジェームズ・キャメロンは、「彼女は信じがたい挑戦をしなければならなかったはず。私が見る限り、それはシルク・ソレイユのパフォーマーと同じくらい大変なはず。一見、自然見えるが、それは高度なリハーサルと撮影技術による創造的な瞬間であり、芸術だ。誰でもできるわけではない。ハリウッドの人間は、ここで何が成されているのか、理解すべきだ。」と述べています。

 

プロジェクトを購入したワーナー・ブラザーズは、主役に起用すべくアンジェリーナ・ジョリーにアプローチしましたが、彼女は辞退、アルフォンソ・キュアロンナタリー・ポートマンの起用に関してワーナー・ブラザーズの承認を得ましたが、妊娠の発表の直前だったナタリー・ポートマンも辞退しました。これを機にワーナー・ブラザーズは、サンドラ・ブロックにアプローチを開始しました。他に、レイチェル・ヴァイス、ナオミ・ワッツマリオン・コティヤールアビー・コーニッシュ、キャレイ・マリガン、シエナ・ミラースカーレット・ヨハンソンブレイク・ライヴリーレベッカ・ホール、オリビア・ワイルドらが候補に上がっていました。ちなみに、アルフォンソ・キュアロンは当初、メキシコ人女優のサルマ・ハエックを主役に考えていましたが、誰もメキシコ人の宇宙飛行士を信じないと、スタジオに拒否されました。マット・コワルスキー役には、当初、ロバート・ダウニー・Jr が考えられていましたが、スケジュールが合わず降板、ジョージ・クルーニーに替わりました。

 

非常にシンプルなプロットにも関わらず、「ゼロ・グラビティ」に対する評価は高く、第86回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞、作曲賞、音響編集賞、録音賞、撮影賞、視覚効果賞、編集賞の9部門でノミネート、作品賞と主演女優賞を逃したものの、残りの7部門すべてを受賞しました。一方で、リアルに見える映画も

  • ハッブル宇宙望遠鏡とロシアの人工衛星は軌道傾斜角が異なり、爆破事故が起きても衛星破壊の連鎖は起こりにくい
  • ISS国際宇宙ステーション)は、ハッブル宇宙望遠鏡からかなり遠い
  • 中国の宇宙ステーションは、ハッブル宇宙望遠鏡と軌道傾斜角が異なり接近し難い
  • 有人機動ユニット (MMU) は非常に燃料が少なく、気軽に飛び回ったりできない
  • 緊急用の「セルフレスキュー用推進装置SAFER」をストーン博士がつけていない
  • 消火器が噴射剤に使われる場面があるが、そんな器用なことはできない
  • 宇宙服を着ると指を動かすのに力が要り、船外の突起物などを掴むことができない
  • 船外活動の必要なオムツをストーン博士が着用していない

など、考証の不足を指摘する声もあります。妥協をした点も多々、あるかと思いますが、いずれにせよ、無重力の宇宙空間における人間の活動のリアルな描写は、この作品で大きく進化したことは間違いないでしょう。

関連作品 

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  「2001年宇宙の旅」のDVD(1968年)

  「ライトスタッフ」のDVD(1983年)

  「アポロ13」のDVD(1995年)

  「ゼロ・グラビティ」のDVD(2013年)

  「インターステラー」(2014年)

    「オデッセイ」(2015年)

 

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  「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(楽天市場

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ジョージ・クルーニー出演作品

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