「8月の家族たち」(原題:August: Osage County)は、2013年公開のアメリカのブラック・コメディ映画です。ピュリツァー賞とトニー賞を受賞した傑作舞台を基にした映画で、一家の主の失踪を機に数年ぶりに再会した家族の本音や、秘密が暴露される様をを描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ジョン・ウェルズ
脚本:トレイシー・レッツ
原作:トレイシー・レッツ『August: Osage County』
製作 ジョージ・クルーニー/ハーヴェイ・ワインスタインほか
出演:メリル・ストリープ(バイオレット・ウェストン 、毒舌家、ガンで闘病中
ジュリア・ロバーツ(バーバラ・ウェストン、バイオレットの長女、母と険悪)
ユアン・マクレガー(ビル・フォーダム 、バーバラの別居中の夫)
クリス・クーパー(チャールズ・エイケン、バイオレットの妹マティの夫)
アビゲイル・ブレスリン(ジーン・フォーダム、バーバラとビルの娘、反抗期)
ベネディクト・バーバッチ(リトル・チャールズ・エイケン、チャールズの息子)
ジュリエット・ルイス(カレン・ウェストン、バイオレットの三女、自由奔放)
マーゴ・マーティンデイル(マティ・フェイ・エイケン、バイオレットの妹)
ダーモット・マローニー(スティーブ・ハイデブレクト、カレンの怪しい婚約者)
ジュリアンヌ・ニコルソン(アイビー・ウェストン、バイオレットの次女、独身)
ミスティ・アッパム(ジョナ・モンヴァータ、ウェストン家の住み込みの家政婦)
ウィル・コフィ(デオン・ギルボー保安官、バーバラの高校時代の恋人)
ニューウェル・アレクサンダー(バーク医師 、バイオレットの主治医)
ほか
あらすじ
父親が失踪したことを知り、オクラホマの片田舎に住む母親バイオレット(メリル・ストリープ)の元に3姉妹、長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)、次女アイヴィー(ジュリアンヌ・ニコルソン)、三女カレン(ジュリエット・ルイス)たちが集まります。一癖ある母バイオレットは病を患い、長女のバーバラは夫(ユアン・マクレガー)の浮気と娘(アビゲイル・ブレスリン)の反抗期に悩んでいます。次女アイヴィーはひそかな恋に胸を躍らせており、三女カレンはこの家族の危機に婚約者を連れてきます・・・。
レビュー・解説
冒頭、薬を過剰投与された老女を演じるメリル・ストリープの演技が衝撃的です。リアルで、まるで悪魔が乗り移ったかのよう・・・。中盤のメリル・ストリープと助演俳優のダイニング・テーブルを囲んだ言葉の応酬が見どころです。メリル・ストリープのみならず、助演の俳優も映画の見どころを完璧に演じています。「8月の家族たち」で、メリル・ストリープは2013年度アカデミー主演女優賞、ジュリア・ロバーツは同助演女優賞にノミネートされました。
舞台の映画化で会話劇となるとキャスティングが最大の興味となります。プロデュサーのハーヴェイ・ワインスタインはユアン・マクレガーやベネディクト・カンバーバッチなどイギリス人を起用しましたが、脚本のトレイシー・レッツは、「脚本はすべて、アメリカ人俳優を前提として書かれている」と反対でした。後日、完成した作品を見て、トレイシー・レッツは「考えが変わった」と述べています。
同様、ハーヴェイ・ワインスタインはバイオレット役にジュディ・ディンチ、バーバラ役にニコール・キッドマンを提案しましたが、「この二人は絶対アメリカ人でなければならない」と、トレイシー・レッツの反対にあい、残念ながらこれは実現しませんでした。ジュディ・ディンチ+ニコール・キッドマンだと、よりシビアな方向に振れそうですが、見てみたい気がします。
撮影チームはオクラホマのオーセージ群バーンズビル近くの、地元で「ブーランジェ一族の家」と呼ばれる1912年に建てられてた古い家を買い上げ、撮影を行いました。また、オーセージ郡の真夏はあまりに暑すぎる為、撮影は秋に行われましたが、それでも最高気温は40度に上りました。枯れ葉は緑に塗られ、落ち葉はCGによって復元されました。
撮影に使われた「ブーランジェ一族の家」
周辺を見てみると、凄い場所にある事がわかります。広大な荒野の夏は如何にも厳しそうですが、それが、原題の「August: Osage County」の示唆するところではないかと思われます。
「8月の家族たち」には「マイ・ルーム」に似ている点があります。どちらも、再会した離散家族をメリル・ストリープと他のオスカー女優(「マーヴィンの部屋」ではダイアン・キートン」)が競演しています。「8月の家族たち」で描かれている家族の不調和は、「マイ・ルーム」の比ではありません。女優にとってメリル・ストリープと競演できることは大きな喜びです。インタビューで「8月の家族たち」に話が及んだ時に、ジュリア・ロバーツはメリル・ストリープとの競演の喜びで涙ぐんでいました。
人間や家族の暗い一面を暴くこのブラック・コメディは、優れたスタッフとキャストの手によりすばらしい会話劇となっっており、何度も繰り返して味わうことができる作品となっています。
関連作品
「ディア・ハンター」(1978年)
「クレイマー、クレイマー」(1979年)
「ソフィーの選択」(1982年)
「マディソン郡の橋」(1994年)
「めぐりあう時間たち」(2002年)
「アダプテーション」(2002年)
「クライシス・オブ・アメリカ」(2004年)
「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年)
「プラダを着た悪魔」(2006年)
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙}(2011年)