夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「プレイス・イン・ザ・ハート」:厳しい時代に強く生きる南部の女性

プレイス・イン・ザ・ハート」(原題:Places in the Heart)は、1984年公開のアメリカのドラマ映画です。1935年のテキサス、大恐慌後の厳しい時代背景をバックに、夫を亡くした妻が貧困にもめげずに必死になって家族を守ろうとする姿を描いています。第57回アカデミー賞で、脚本賞ロバート・ベントン)、主演女優賞(サリー・フィールド)を受賞した作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ロバート・ベントン
脚本:ロバート・ベントン
出演:サリー・フィールドエドナ)
   ダニー・グローヴァー(モーゼス)
   ジョン・マルコヴィッチ(ウィル)
   リンゼイ・クローズ(マーガレット)
   エド・ハリス(ウェイン)
   ほか

あらすじ

  • 1935年、大恐慌時代のテキサス州の小さな街、ワクサハチ。エドナ・スポルディングサリー・フィールド)は保安官の夫、ロイス(レイ・ベイカー)と小さな二人の子供を育てながら平和に暮らしています。ある日の朝早く、酒に酔っ払って銃を撃っている黒人ワイリーに対処するために、ロイスは朝食もままならない内に出かけて行きます。ワイリーをなだめているうちに、ロイスははずみで腹を撃ち抜かれてしまいます。 ロイスの遺体が運ばれて来て衝撃を受けた彼女は、二人の子供にこの事実を説明するのがやっとのことでした。ロイスの葬儀が行われ、エドナは姉のマーガレット(リンゼイ・クルーズ)に、子育てと家事しかしたことのない自分がどうやって子供たちを養っていけばいいのかわからないと不安を訴えます。
  • しばらくすると、ファースト農業銀行からデンビーという銀行員が訪ねてきます。お金のことは、すべてロイスにまかせていたエドナは、初めて自分の家の経済状態を知ります。ロイスは家の購入資金を銀行から借り入れていました。未返済の金額が3681ドル残っており、年2回240ドルの支払い義務がありました。この次の支払いは10月15日でしたが、預金残高は160ドルでした。この不景気では子供をご主人の親戚に預け、あなたはお姉さんのところに身を寄せるのが最善策だと、デンビーはエドナに自宅を売るように勧めますが、エドナは頑として受け入れません。
  • エドナはマーガレットを訪ね、美容師の仕事で雇ってもらえないかと相談しますが、彼女にも人を雇う余裕はありません。 その夜、「この男がお宅の銀食器を持ってうろついていました」と、副保安官ジャックが黒人の男を連れてやってきます。「この人はうちで雇った人です」と、彼女はとっさに嘘をついて彼をかばいます。男はモーゼス(ダニー・グローヴァー)と言う流れ者で、彼女は以前、彼に食事を与え、家の雑用をしてもらった事がありました。5歳の時から綿花畑で働いていて、綿のことはなんでも知っているというモーゼスに、この家で綿花を栽培したらいくらになるかとエドナが訪ねると、「お宅には畑が30エーカーあるから、300ドルほどになります」と彼は言います。ひらめいた彼女は、彼に納屋の隣の小屋に住むように言い、モーゼスは盗みを見逃してもらったことを感謝します。
  • 次の日、銀行員のデンビーが目の不自由な男性を連れてきた。ウィル(ジョン・マルコヴィッチ)という名の彼の義理の弟で、戦争に行って失明してしまい今は椅子とほうき作りの職人をしているといいます。デンビーは彼に部屋貸しをして、少しでも現金収入を得てはどうかという彼の提案を、彼女は受け入れることにします。エドナはモーゼスと共に綿花の種を購入し、馬を使って畑を耕し、種まきを行います。銀行への支払いには畑からの収穫だけでは不十分で、さらに町で一番早く綿を収穫した者に与えられる賞金100ドルを獲得する必要があります。エドナは一番で収穫するためモーゼスに働き手を10人集めてもらい、子供たちや姉夫婦の手も借ります。盲目のウイルが料理を受けもち、皆、夜も眠らず、綿の木の針で指を刺され、曲げっきりの腰がのばせないほど働きます・・・。

レビュー・解説

食前のお祈り、木造の建物、竜巻、綿花畑、KKK、教会、説教、賛美歌などなど、とにかくアメリカの思い出がたくさん詰まった映画です。ロバート・ベントン監督によると、題名の「Places in the Heart」は、彼が生まれ育ったテキサスの小さな町、友達や親戚の思い出、様々な出来事や起きそうになった事のことだそうです。この映画を見ていると、アメリカで育った訳でもない私まで懐かしさを感じます。夫亡き後、子供と土地を守る為に立ち上がる妻をこの映画に重ね合わるとともに、ロバート・ベントン監督は仕事を求めるアフリカ系アメリカ人視覚障害傷痍軍人、夫の不倫に悩む姉などのエピソードをからめ、映画に力強さと広がりを与えています。

 

ロバート・ベントンは「プレイス・イン・ザ・ハート」で1984年度のアカデミー脚本賞を受賞、主演のサリー・フィールドは「ノーマ・レイ」に次いで二度目のアカデミー主演女優賞を受賞しました。「アマデウス」という強豪がいたため、「プレイス・イン・ザ・ハート」のアカデミー賞受賞は二部門にとどまりましたが、助演や衣装もオスカー級の内容です。ロバート・ベントン監督は、先に「クレーマー・クレーマー」でアカデミー監督賞を受賞していますが、他にも「ノーバディーズ・フール」、「クレーマー・クレーマー」、「レイト・ショー」、「ボニーとクライド/俺たちに明日はない」でアカデミー脚本/脚色賞へのノミネート/受賞を獲得しており、脚本・脚色に強みがあります。ジョン・マルコヴィッチは、「プレイス・イン・ザ・ハート」がデビュー作ですが、ハナから存在感が凄く、ダニー・グローヴァーもはまり役です。

 

サリーフィールドが扮するエドナは小柄で貞淑な妻ですが、夫亡き後、戸惑いながらも力強く立ち上がります。男でも女でも強くなければ生きていけないというのが世の常ですが、特に南部には女性が強い、あるいは強くなければ生きていけないという土地柄がが伺われます。

Lorri: Jim Morris, I'm a Texas woman, which means I don't need the help of a man to keep things running.

(ロリー:「ジム、私はテキサス女よ。男の助けなしでもやっていけるわ。」)

〜映画「ルーキー」より

 

Scarlet: “I'll think of it tomorrow, at Tara. I can stand it then. Tomorrow, I'll think of some way to get him back. After all, tomorrow is another day.”

(スカーレット:「明日、タラで考えることにしよう。そしたら、何とか耐えることが出来るわ。あの人を取り戻す方法を考えるの。明日という日があるんですもの。」)

〜映画「風とともに去りぬ」より

 

I was immersed in gun culture, but hadn’t previously reflected on the significance of guns in the everyday lives of Texas women...

Concealed depicts the private and previously unseen lives of women who arm themselves. They come from diverse backgrounds, each with their own individual story and personal motivations...

However, I found a commonality in their response to the question “are you prepared to pull the trigger to protect yourself or your loved ones?” The answer from the women in this collection of portraits is a resounding "yes."

私自身、銃の文化に慣れ親しんでいたものの、テキサスの女性が日頃から銃を携帯する重要性を理解していませんでした。

〜 「護身用」では、武装する女性の私生活や見えない過去を描いています。彼女らはバックグラウンドも異なれば、ひとりひとりの物語や動機も異なります。

〜 ただひとつだけ共通するのは、「自分自身や愛する人を守る為に引き金を引きますか?」という問いに、「イエス」と答えたことです。

"Concealed" by Shelley Calton

撮影地(グーグルマップ)

  • 映画の最初に映し出される時計台 

    エリス・カウンティ・コートハウスの時計台が撮影に使用されている。
  • 教会
     
    ロケに使用されたベセル統一メソジスト教会は、畑の真ん中にある。周辺の光景から、映画の舞台となったテキサスの広さがわかる。

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関連作品

ロバート・ベントン監督・脚本作品のDVD(Amazon

  「俺たちに明日はない」(1967年):脚本

  「スーパーマン」(1978年):脚本

  「クレイマー、クレイマー」(1979年):監督・脚本

  「ノーバディーズ・フール」(1994年): 監督・脚本

 

サリー・フィールド出演作品のDVD(Amazon

  「ノーマ・レイ」(1979年) 

  「リンカーン」(2012年)

  「ドリスの恋愛妄想適齢期」(2015年)

 

ジョン・マルコヴィッチ出演作品のDVD(Amazon

  「キリング・フィールド」(1984年)

  「シェルタリング_スカイ」(1990年)

  「ザ・シークレット・サービス」(1993年)

  「マルコヴィッチの穴」(1999年)

  「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(2000年)

  「家路」(2001年)

    「Disgrace」(2008年)・・・輸入版、日本語なし

  「RED/レッド」(2010年)

  「REDリターンズ」(2013年)

  「ウォーム・ボディーズ」(2013年)

  「バーニング・オーシャン」(2016年)

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