夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」:少年の不幸を村人達が暖かく包む

マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(原題: Mitt liv som hund、英題:My Life as a Dog)は、1985年公開のスウェーデンのヒューマン・コメディ映画です。1983年に出版されたレイダル・イェンソンの自伝的な同名小説を原作に、ラッセ・ハルストレム監督、アントン・グランセリウス、メリンダ・キンナマンら出演で、1950年代末のスウェーデンの海辺の小さな町と山間のガラス工場の村を舞台に、人々との出会いと別れを通して人生に目覚めてゆく少年の姿を描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ラッセ・ハルストレム
原作:レイダル・イェンソン「マイライフ・アズ・ア・ドッグ
脚本:ラッセ・ハルストレム/レイダル・イェンソン/ブラッセ・ブレンストレム
   /ペール・ベルイルント

出演:アントン・グランセリウス(イングマル)
   メリンダ・キンナマン(サガ、男の子のような少女)
   アンキ・リデン(イングマルの母)
   マンフレド・セルネル(エリク、イングマルの兄)
   レイフ・エリクソン(サンドベルイ氏、イングマルの父親の弟)
   クリスティナ・カールヴィンド(サンドベルイ夫人)
   トーマス・フォン・プレムセン(グンネル叔父さん、イングマルの母親の弟) 
   キッキ・ルンドグレン(ウラ、グンネルの妻)
   イング=マリー・カールソン(ベリット、ガラス工場に勤める女子工員)
   ヤン=フィリップ・ホルストレーム(マンネ、緑色の髪の少年)
   ヨハンナ・ウーデン(カエルちゃん、イングマルの地元の女友だち)
   ほか

あらすじ 

イングマル(アントン・グランセリウス)は、父親が南洋の海に出かけたまま返って来ず、兄と病気の母親、愛犬シッカンの三人と一匹で暮らしています。おねょしょをしたり、自分が抑えられなかったり、緊張で強ばったりと、少しばかり「問題のある」イングマルは、「満足な餌も与えられずに人工衛星に乗せられたライカ犬より、僕の人生はまし」と考えていました。やがて母親の病気が悪化し、イングマルは愛犬シッカンを残して、一人、田舎の叔父に預けられます。その村人達は、風変わりで、滑稽で、気だてが良くて、寛大な人たちばかりでした。男の子のふりをしてサッカーやボクシングに興じる女の子、サガ(メリンダ・キンナマン)とも仲良くなり、村の少年や大人たちとの交流の中でイングマルは毎日を楽し、笑顔も取り戻して行きます・・・。

レビュー・解説 

スプートニク・ショックに揺れ、ワールドカップに熱狂する1950年代のスウェーデンを舞台に、村人達との交流と決して幸せとは言えなかった少年の成長をユーモラスに描いたこの映画は、まったく古さを感じさせず、新鮮な感動を与えてくれます。プロットも良く練られており、主役の子供達もとても可愛く、村人など脇役の俳優達も個性的なキャラクターを好演しています。悲しさを隠すでもなく、強調するでもなく、ありのままに捉え、人々の暖かさと少年の成長をじんわりと感じさせる名作です。

 

監督のラッセ・ハルストレムは、以前にも「アバ/ザ・ムービー ABBA」などの監督を務めていましたが、この作品で世界の注目を集め、以降、「ギルバート・グレイプ」、「サイダーハウス・ルール」、「ショコラ」、「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男 」、「HACHI 約束の犬」などのヒット作、名作を手がけています。

関連作品 

ラッセ・ハルストレム監督作品のDVD(Amazon

  「アバ/ザ・ムービー ABBA」(1977年)

「ワンス・アラウンド」(1991年)・・・VHS

  「ギルバート・グレイプ」のDVD(1993年)

  「サイダーハウス・ルール」(1999年)

  「ショコラ」(2000年)

  「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男 」(2007年)

  「HACHI 約束の犬」(2009年)

  「砂漠でサーモン・フィッシング」(2011年)

  「マダム・マロリーと魔法のスパイス」(2014年)