夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「グロリアの青春」:若さとは諦めない心の状態!

「グロリアの青春」は、(原題:Gloria)は、2013年公開のスペイン・チリ合作のドラマ映画です。監督はセバスティアン・レリオ、出演はパウリナ・ガルシアほか。

 

【あらすじ】

舞台は チリの首都、サンティアゴ。58歳になるグロリア(パウリナ・ガルシア)は、10年以上前に夫と離婚、息子も娘も立派に成長、それぞれ独立した生活を持っていたし、自分も職を持ち、会社で責任ある仕事を任せられて充実していた。時間があればヨガ教室や様々なサークルに参加、夜には中年の独身者たちが集まるダンスホールに通い、孤独を紛らしていた・・・。

 

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パウリナ・ガルシアの体当たり演技が素晴らしいです。積極的に愛を求める58歳のグロリアを、映画公開時53歳の彼女がベッドシーンも辞さない体当たりで演じます。パウリナ・ガルシアはこの映画で、見事、ベルリン国際映画祭を銀熊賞 (女優賞)を受賞しました。 「グロリアの青春」では、70年代から80年代のヒット曲が効果的に使われていますが、この時代のチリは経済危機にあっただけではなく、ピノチェト政権の人権侵害に苦しめられた時代でもありました。グロリアは、あたかも失われた青春を取り戻そうとしているようでもあります。そんな彼女に交際を申し込んだのが、優柔不断な退役軍人というのが皮肉と言えば皮肉ですが、最後には・・・。

 

「グロリアの青春」の中に、アントニオ・カルロス・ジョビンの有名なボサノバ「3月の水」が使われています。みんなでお酒を飲みながら、掛け合いで歌うこの曲は、今まで効いた中で最高です。こんな雰囲気でボサノバが楽しめる場所があるならば、是非、行ってみたいです。

 

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「3月の水」の歌詞は、「棒切れ、石、道路の終わり、踊りの合間、わずかな孤独、ガラスの欠片、人生、太陽、夜、死、罠、銃・・・」と言った言葉がポンポンと紡がれ、「吹き渡る風、坂道の終わり、一筋の光、無、予感、希望、岸辺は語る、三月の水を、苦悩は終わり、心は安らぐ」と結ぶことを繰り返しています。南半球では3月は秋ですが、夏の間の緊張した雰囲気が和らぎ、安らぎに向かう季節を歌っています。アントニオ・カルロス・ジョビンは英語の詩を前提に北半球、即ち、希望の春をイメージしていたという説もありますが、老いを迎えつつあるグロリアにとっては、少し微妙なところかもしれません。

 

バスティアン・レリオ監督はインタビューで次の様に語っています。

「チリのサンティアゴを行き交う60代に近づいた女性たちには、どこか感動的な佇まいを感じます。厳しい世界の中で自分の居場所を見つけようと戦い、車の中で歌い、孤立し、誰も彼女たちのために多くの時間を割こうとはせず、そして、過ぎた年月の長さにも関わらず、いまだに物事を諦めようとせず、感じ続け、踊り続け、生き続けようとする女性たちです。『グロリアの青春』は、そんな彼女たちの生き方と権利を改めて認識させます。歯と爪で人生に何とかしがみつこうとする、愛らしい女性に魅惑されるからです。」

 

グロリアを演じたパウリーナ・ガルシアはインタビューで次の様に語っています。

「グロリアは60代にさしかかり、新たな段階に踏み出そうとしている女性といえるでしょう。しかし今、彼女の目の前にあるものは老いなのです。社会からは、もうそろそろ落ち着いて、人生の秋を生きていると思われますが、グロリアは60代を春にしたいと思っている。新たな春を手に入れようとしている女性なのです。」

「私は人生の春夏秋冬というのは自分で決めるべきで、秋であっても自分がまだ早いと思えば、変えていくことが出来ると思っています。グロリアはいつも幸福に向かって突き進んでいます。常に自分が春の状態にあると思っているのが、彼女の面白いところですね。グロリア世代の女性達が何をなしえるのかは誰にも分かりません。ですが、世間が思っている以上に、彼女たちには自由があり、パワーを秘めているのです。」

「私がグロリアから学んだことは、決断していくことです。そして、その決断によって、導き出した結末を自分で担っていく姿勢にとても共感したのです。この映画を観るときに、男女問わず、皆さんの中にあるグロリアを見つけて欲しいと思います。私も演技をしながら自分の中にグロリアを見つけましたから。」

 

「青春とは心の状態」という言葉を思い出しました。マッカーサーや、デール・カーネギーや、ロバート・ケネディが愛したと言われるサムエル・ウルマンの「青春」という詩の一節で、「青春とは人生のある時期を云うのではなく、心の持ち方を云う。・・・・・・年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時初めて老いる・・・・・・。」とあります。ちょっと堅苦しいですが、要は気の持ちようだと言うのです。若い頃に大変な経験をしたであろうグロリアですが、一方でどこにでもいそうなグロリアでもあります。いい年をしてという人もいるかもしれませんが、若くても覇気が無い人もいれば、老いても生き生きしている人がいます。青春はまさに私たちの心の中にあるものなのでしょうね。

 

「グロリアの青春」のエンディングは、なんと、ローラ・ブロニガンのヒット曲「グロリア」でした!

 

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グロリアの青春(字幕版)

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