夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「恋人はセックス依存症」:グウィネス・パルトローが肉食系に挑戦!

「恋人はセックス依存症」(原題:Thanks for Sharing)は2012年公開のアメリカのロマンティック/ヒューマン・コメディです。日本では劇場未公開で、ソフトのみの公開です。

 

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監督:スチュアート・ブランバーグ

出演:マーク・ラファロ(アダム)

   グウィネス・パルトロー(フィービー)

   ティム・ロビンズ(マイク)

   ジョシュ・ギャッド(ニール)

   ほか

 

セックス依存症に悩む独身男アダム(マーク・ラファロ)と、依存症嫌いで積極的肉食系美女フィービー(グウィネス・パルトロー)とのロマンスを中心に、アダムのセラピー仲間の姿をユーモアを交えて描いています。

 

DVDのカバー写真ではグウィネス・パルトローを大きく取り扱っていますが、中心的人物はグウィネス扮するフィービーではなく、マーク・ラファロ扮するアダムを接点に群像劇的に進行する映画です。

 

 アメリカ版DVDカバー写真(内容を正しく表現している)

 

邦題の「恋人はセックス依存症」は刺激的なタイトルで、予告編もセックス依存ばかり強調していますが、原題の「Thanks for Sharing」はグループ・セラピーで悩み共有してくれた仲間への感謝の言葉です。ストーリーも二人のロマンスだけではなく、グループ・セラピーの仲間と悩みを共有したり、携帯で仲間と連絡を取り合ったり、時にはピンチの仲間の元に駆けつけるなど、助け合いながら依存症と戦う人々を暖かく、ユーモラスな眼差しで描いています。自分でも苦しさがわかる為でしょうか、ピンチの仲間の元に懸命に駆けつける姿は感動的でもあります。

 

セックス依存ばかり強調している日本版予告編 *3

www.youtube.com

 

依存症から回復したマイク(ティム・ロビンズ)と息子との葛藤や、前向きになったニール(ジョシュ・ギャッド)に生まれるロマンスも織り込まれているこの映画は、セックス依存症という題材の珍しさによりかかかるのではなく、暖かみのあるロマンティック・コメディ、ヒューマン・コメディとしての広がりを持っています。DVDのタイトルや、カバー写真がミスリーディングな為、いわゆる「釣り」で中身のない映画では無いかという懸念があったのですが、それはいい意味で裏切られました。

 

さて、マーク・ラファロは濃い感じでセックス依存症の役にぴったりですが、グウィネス・パルトローは上品で優しく清楚な印象があり、「積極的な肉食系」というイメージはありませんでした。むしろそのギャップを狙ったキャスティングかもしれませんが、黒い下着でのストリップ・シーンには本人も当惑したそうです。彼女のような大女優でも当惑することがあるというのが意外ですが、これは恐らく役作りが難しかったということではないかと思います。

  

これが、例えばケイト・ブランシェットのようなタイプの女優ですと、役になりきって攻めるような気がします。グウィネス・パルトローの場合は一種の性格俳優というか、ひとつのベースとなるキャラクターがあって、その上で様々な役をうまく料理するタイプの女優だと思います。「愛しのローズマリー*4 では、グウィネス・パルトローのイメージを破綻させることなく、超肥満の女性をうまく演じていました。「黒い下着のストリップ・シーン」も、グウィネス・パルトローのイメージぎりぎりのところで嫌みなく演じています。恐らくこれは彼女の計算された技で、グウィネス・パルトローの肉食系表現はこうなんだと納得させてしまうところが、彼女の凄いところなのだと思います。

 

グループ・セラピーのシーンは欧米の映画に良く出てくるので珍しくないのですが、誘惑に負けそうな時に、指を立てながら「One day at a time.」(1日1日を大切に)と自分に言い聞かせるシーンが何回かあったのが印象的でした。気持ちのスイッチのようなものですが、よく効きそうな気がします。また、依存症の恋人と別れた経験のあるフィービーの悩みも、本人ではないパートナーの視点で印象的でした。依存症から回復したマイクの奥さんとフィービーの会話です。

フィービー:アダムから聞いたけど、高校時代からの恋人なのね。

ケイティ:ええ、馬鹿だったわ・・・。どうしたの?

フィービー:高校時代の恋人と結婚していたら、どうなっていたか想像してたの。

ケイティ:恐ろしいでしょう。

フィービー:ホラー映画級ね。

ケイティ:私たちは運が良かったのよね。

フィービー:うらやましい・・・。

ケイティ:あなたもそうなるかも。アダムはいい人よ。

フィービー:そうね。

ケイティ:どうしたの?大丈夫?

フィービー:依存症の事が心配なの。あなたは怖くならない?幸せにしてたのに突然、彼が依存症に戻ってしまったら・・・。

ケイティ:経験上のアドバイスよ。自分を見失わないようにするしかない。

フィービー:どういうこと?

ケイティ:つまり・・・、自分はどうなのか、自分が取り組む自分の問題を考えるの。依存症の人を選んだのは自分だもの。そこが大事よ。

 

マーク・ラファログウィネス・パルトローの二人は、「アベンジャーズ」*5 にも一緒に出演していますね(「インクレディブル・ハルク」のハルク役と「アイアン・マン」のペッパー役)。群像劇的に進行するドラマの中で「ショーシャンクの空に」で有名になったティム・ロビンズや、ジョシュ・ギャッドのパフォーマンスもなかなかです。ジョシュ・ギャッドは、「アナと雪の女王」にオラフ役で出演(声)していますが、今後の活躍が期待されます。

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*3:国際版予告編にはグループ・セラピーや他の登場人物のシーンが含まれますが、日本版予告編ではすべてカットされ、ほとんどがグウィネス・パルトロー、それもセックスがらみのシーンになっています。

*4:グウィネス・パルトローが超肥満の役に挑戦した映画
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*5:マーク・ラファログウィネス・パルトローの二人がともに出演している映画
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