夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ニュースの天才」:実話に基づき記事捏造事件を描いた社会派ムービー!

ニュースの天才」(原題: Shattered Glass)は、2003年公開のアメリカのドラマ映画です。1998年に起きた実話に基づき、ビリー・レイ監督、ヘイデン・クリステンセンピーター・サースガードら出演で、大統領専用機にも配布されるアメリカの権威ある政治雑誌「ニュー・リパブリック」の若い花形記者スティーブン・グラスが、3年以上に渡りソースや引用元や出来事を偽って、面白くユーモラスな記事を書いていた記事捏造事件をスリリングに描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ビリー・レイ
脚本:ビリー・レイ
原案:バズ・ビッシンジャー
出演:ヘイデン・クリステンセン(スティーブン・グラス)
   ピーター・サースガード(チャールズ・“チャック”・レーン)
   クロエ・セヴィニー(ケイトリン・アヴィー )
   スティーヴ・ザーン(アダム・ペネンバーグ)
   ロザリオ・ドーソン(アンディ・フォックス)
   メラニー・リンスキー(エイミー・ブランド)
   ハンク・アザリアマイケル・ケリー
   マーク・ブルーム(ルイス・エストリッジ)
   シモーヌエリーズ・ジラール(カタリーナ・バニア)
   チャド・ドネーラ(デイヴィッド・バック)
   ジェイミー・エルマン(アーロン・ブルース)
   ルーク・カービー(ロブ・グルーエン)
   ほか

あらすじ

1998年、権威ある政治雑誌「ザ・ニュー・リパブリック」の最年少の記者、25歳のスティーヴン・ダラス(ヘイデン・クリステンセン)は、編集長のマイケル・ケリーハンク・アザリア)の下、斬新な切り口で特ダネをモノにするジャーナリストとして頭角を現わし始めます。彼には他誌からも執筆依頼が舞い込むような売れっ子になりますが、ケイトリン(クロエ・セヴィニー)やエミー(メラニー・リンスキー)ら同僚の顔を立て、周囲への気配りを怠らない態度は高く評価されていました。そんなある日、部下から信望の厚かったマイケルが会長とのいざこざが元で解雇されてしまいます。グラスたちの元同僚であるチャック・レーン(ピーター・サースガード)が後任に指名され、新編集長の座に就きますが、記者としての能力は平凡で人望も薄いレーンに、グラスを始めとする記者たちは反感を覚えます。

それから数か月後、グラスは少年ハッカーが大手コンピューターメーカーを恫喝して取り入り、社員として雇われた上に多額の報酬を得たという内容の「ハッカー天国」という記事を掲載、大きな反響を得ます。この記事を目にしたインターネットマガジン「フォーブス・デジタル・ツール」の編集長はこのような特ダネをなぜ見逃したのかと部下である記者のアダム・ペネンバーグ(スティーヴ・ザーン)に調査させます。ところがペネンバーグが調査するうちに、その記事に登場するハッカーの少年や、恫喝されたコンピューターメーカーはおろか、記事内に登場する人物、会社すべてが実際には存在しない捏造記事の疑いが持ち上がります。事の顛末を知ったレーンはグラスを問い詰め、彼からそのコンピューターメーカーの電話番号やホームページのアドレス、記事内の人物の連絡先や電話番号などを聞き出しますが、ペネンバーグらフォーブスの記者たちの電話取材によってそれらがでっちあげであることを突き止められてしまいます。

グラスは情報提供者のハッカーからだまされて鵜呑みにしてしまったことを認めますが、「他社から吊るしあげられてなぜかばってくれなかったのだ」とレーンに対し憤慨、同僚たちはグラスをかばい、停職という厳しい処分を行おうとするレーンに冷たい態度をとります。一方、レーンはグラスの記者生命だけは絶たないようにと、フォーブスの編集長に掛け合うなど手を尽します。ところがレーンがより詳しい顛末を調査していくと、グラスが取材したとされる場所は当日閉鎖されていたなど、グラス自身が記事を捏造していた証拠が出、調査中にレーンに電話してきたコンピューターメーカーの社長は、グラスを騙したハッカーではなく、パロアルトに住むグラスの弟だと悟ります。レーンがグラスのパソコンや雑誌のバックナンバーなどを徹底的に調べた結果、「ハッカー天国」はグラスが完全に捏造した記事であるだけでなく、グラスは過去から記事の捏造行為を繰り返していたことが判明、あまりの行いに見かねたレーンはグラスを即時解雇します・・・。

レビュー・解説

優美な立場から恥辱への転落を描いた本作は、グラス記者の外向きの楽しさや気遣いと内面的な不安感と弱さ演じるヘイデン・クリステンセンと、グラス記者の寡黙な上司のジャーナリズムの正義と「ニュー・リパブリック」誌への忠実さを素直に演じるピーター・サースガードの演技が際立つ、スリリングな作品です。

 

2014年になって、「ニュー・リパブリック」誌がグラス氏本人にインタビューを行い、記事を掲載しまた。この中でグラス氏本人が、

映画では私が楽しんでいたかのように描かれているが、私は一度も楽しいと感じた事はない。私は、不安であり、恐れており、落ち込んでいた。外向けには楽しいように話していたが、内心は不安でたまらなかった。
Hello, My Name Is Stephen Glass, and I’m Sorry (New Republic)

と語っています。 映画では、グラスが特段、楽しんでいるようには見えませんが、裏を返せばグラス本人はそれだけつらい思いをしていたということでしょう。いずれにせよ、グラス記者が経験したのと全く同じつらさを追体験するのは心地の良いものではないでしょう・・・。原題の「Shattered Glass」は、「粉々になったガラス」の意味ですが、記事を捏造した記者スティーブン・グラス(Steven Glass)の名字グラスとかけており、「荒んでしまった(或は失墜した、潰れてしまった)グラス記者」とも読めるようになっています。

 

ヘイデン・クリステンセンは主役をうまく演じていますが、ピーター・サースガードの抑え気味の演技も光って見えます。彼は、「ニュースの天才」で全米映画批評家協会賞の助演男優賞を受賞し、以降、「フライトプラン」、「ナイト&デイ」、「ブルー・ジャスミン」などの大作に出るようになりました。こうしたハリウッドの大作に出演する一方で、低予算のインディペンデント映画にも積極的に出演する俳優として知られています。ビリー・レイは、アメリカの脚本家・映画監督で、「ニュースの天才」が監督デビュー作になります。彼はその後も、「フライトプラン」、「ハンガー・ゲーム」、「キャプテン・フィリップス」など、大作の脚本を執筆しています。

 

ヘイデン・クリステンセン(スティーブン・グラス)

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ピーター・サースガード(チャールズ・“チャック”・レーン)

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関連作品

ビリー・レイ監督・脚本作品のDVD(Amazon

  「アメリカを売った男」(2007)監督・脚本

  「消されたヘッドライン」(2009年)脚本

ハンガー・ゲーム」(2012年)脚本

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ヘイデン・クリステンセン出演作品のDVD(Amazon

  「ヴァージン・スーサイズ」(1999年)

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ピーター・サースガード出演作品のDVD(Amazon

  「デッドマン・ウォーキング」(1995年)

  「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年)

  「終わりで始まりの4日間」(2004年)

  「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004年)

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  「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」(2015年)

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