「アーティスト」(原題:Artist)は、2011年公開のフランスのロマンティック・コメディ&ドラマ映画です。ミシェル・アザナヴィシウス監督・脚本、ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョら出演で、サイレントからトーキーへと転換期を迎えた1920年から30年代のハリウッドの映画界を舞台に、スターの座をかけのぼっていく新人女優と、過去の栄光にしがみつこうとする大スターの没落と再起を描いています。サイレント、カラー映画として制作され、ポストプロダクションで白黒となった作品で、第64回カンヌ国際映画祭デュジャルダンが男優賞を受賞、第84回アカデミー賞では作品賞、監督賞(ミシェル・アザナヴィシウス)、主演男優賞(ジャン・デュジャルダン)、作曲賞、衣裳デザイン賞を受賞しています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン(ジョージ・ヴァレンティン、ハリウッドの大スター)
ベレニス・ベジョ(ペピー・ミラー、新人女優)
アギー(ジャック、ジョージの愛犬で、俳優としての相棒)
ジョン・グッドマン(アル・ジマー、映画会社の社長)
ジェームズ・クロムウェル(クリフトン 、ジョージの忠実な運転手)
ミッシー・パイル(コンスタンス、ジョージ主演の映画の相手役、仲が悪い)
ペネロープ・アン・ミラー(ドリス、ジョージの妻、夫婦仲は冷めている)
マルコム・マクダウェル(執事、ペピーが撮影所で出会ったエキストラの男)
ビッツィー・トゥロック(ノーマ、ジョージが監督・主演した映画の相手役)
ほか
あらすじ
1927年、サイレント映画全盛のハリウッド。大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、共演した愛犬とともに新作の舞台挨拶で拍手喝采を浴びます。熱狂する観客たちで映画館前は大混乱となり、若い女性ファンがジョージを突き飛ばしてしまいます。それでも優しく微笑むジョージに感激した彼女は、大胆にも憧れの大スターの頬にキスをし、その瞬間を捉えた写真が翌日の新聞の一面を飾ります。彼女の名前はペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)、未来のスターを目指す新人女優です。映画会社キノグラフでオーディションを受けた彼女は、愛らしい笑顔とキュートなダンスで、ジョージ主演作のエキストラ役を獲得します。撮影後、楽屋を訪ねてきたペピーに、ジョージは「女優を目指すのなら、目立つ特徴がないと」と、アイライナーで唇の上にほくろを描きます。その日を境に、ペピーの快進撃が始まります。踊り子、メイド、名前のある役、そして遂にヒロイン役を獲得します。
1929年、セリフのあるトーキー映画が登場すると、「サイレント映画こそ芸術」と過去の栄光から逃れられないジョージは、キノグラフ社の社長(ジョン・グッドマン)と決別します。しかし数か月後、自ら主演と初監督を務めたサイレント映画は大コケしてしまいます。心を閉ざしたジョージは、心配して訪ねてきたペピーすら追い返してしまいます。それから1年、今やペピーはトーキー映画の新進スターとして人気を獲得、一方、妻に追い出されたジョージは、運転手クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)の給料すら払えなくなり、想い出の品々をオークションで売り払います。執事にその全てを買い取らせたペピーは、ジョージの孤独な背中に涙を流します。酒に溺れるジョージは自分に絶望し、唯一の財産であるフィルムに放火します。愛犬の活躍で救出されたジョージの元へ、ペピーが駆けつけます・・・。
レビュー・解説
白黒サイレント映画への賛辞に溢れた本作は、圧巻のチャールストンなど俳優の嬉々としたパフォーマンスとスタイリッシュな映像で、大いに楽しめる作品です。
プロットはシンプルで、時代が変わるにつれて落ちぶれていくサイレントの俳優と、新たにスターなり美しくなっていくトーキーの女優の対比を見事に描いています。監督はずっと白黒の作品を撮りたかったというミシェル・アザナヴィシウス。サイレントのスターにフランス人俳優のジャン・デュジャルダン、トーキーのスター女優にアルゼンチン出身のベレニス・ベジョ、またジェームズ・クロムウェルがスターの忠実な運転手という渋い役回りで脇を固めています。
もう一人、いや一匹の重要な俳優が、ジャック・ラッセル・テリア犬のアギーです。このアギー君、映画でとても可愛らしい演技をするのですが、実は撮影中にトレーナーが声で演技指示を出しています。撮影現場の音が録音される事がないサイレント映画なので、そんなことが出来るのですね。
何と言っても「アーティスト」映画の圧巻は、ジャン・デュジャルダンとベレニス・ベジョが二人で踊るダンス・シーン。1900年頃にアメリカで生まれ、その後の流行とともに映画にもよく取り入れられたチャールストンです。二人はこの踊りの撮影の為に、5ヶ月間、ほぼ毎日、練習したそうです。
「アーティスト」はサイレント(音楽・効果音付きの無声映画)ですが、最後にちょっとだけ音声が入ります。その音声部分の最初の言葉が「カット!」、そして最後の言葉が「アクション!」。再起するサイレントのスターの未来を占うような、粋なエンディングです。
映画の撮影現場でおなじみの「カチンコ」は、トーキーから採用されたものです。英語ではフラッパーボード(Flapperboard)と言い、撮影を開始する際に上部の拍子木を「カチン」と鳴らします。以降は音を出してはならないという合図を兼ねているんですね。具体的には、監督が「レディ?」と確認し、カメラを回す指示「ロール!」を出します。カメラはカチンコの記載内容を撮影、カチンコ係が拍子木を鳴らし、監督が演技の開始を指示「アクション!」を出します。
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白黒、サイレントというシンプルな「アーティスト」ですが、豪奢な他の映画を押さえて2011年度のアカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、作曲賞、衣裳デザイン賞を受賞しました。非英語圏制作の映画では、初めての作品賞受賞という快挙です。まさにフランスがしてやったりの観ありです。
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ジャン・デュジャルダン(ジョージ・ヴァレンティン、ハリウッドの大スター
アギー(ジャック、ジョージの愛犬で、俳優としての相棒)
ジョン・グッドマン(アル・ジマー、映画会社の社長)
動画クリップ(YouTube)
圧巻のチャールストン
アメリカ発祥のチャールストンをパリの町並みの中で見る(映画とは関係ありません)
関連作品
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