夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択」:モンタナの片田舎で真摯に生きる平凡な女性たちの姿をリアルに描いた、見ごたえのある群像劇

「ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択」(原題:Certain Women)は2016年公開のアメリカの群像劇ドラマ映画です。メイリー・メロイの短編小説集「Both Ways is the Only Way I Want It」、「Half in Love」を原作に、ケリー・ライヒャルト監督・脚本、ロー…

「しあわせな人生の選択」:良質の脚本と演技、悲しさとおかしさの均衡、忍耐強く演出された末期がんの男と旧友の慎ましやかな友情の物語

「しあわせな人生の選択」(原題:Truman)は、2015年公開のスペイン・アルゼンチン合作のコメディ&ドラマ映画です。セスク・ゲイ監督・脚本、リカルド・ダリン、ハビエル・カマラら出演で、末期がんに侵され余命短いスペイン男性をカナダの旧友が訪ね、男…

【閑話休題】家族を描いた邦画:「万引き家族」と「未来のミライ」

たまたま、家族を描いた邦画を二本、続けて見ました。是枝裕和監督のドラマ映画「万引き家族」(2018年)と細田守監督のアニメ映画「未来のミライ」(2018年)です。 家族を描いた邦画 目次 「万引き家族」(2018年) 「未来のミライ」(2018年) どちらの監…

「アリー/スター誕生」:レディー・ガガとブラッドリー・クーパーがコラボ、旧作名画を大きなインパクトと商業的成功で現代に蘇らせた傑作

「アリー/スター誕生」(原題:A Star Is Born)は、2018年公開のアメリカの音楽&恋愛ドラマ映画です。「 スター誕生」(1937年)の4度目のリメイクで、ブラッドリー・クーパー監督・主演、レディー・ガガ主演で、歌手を夢見るヒロインが国民的人気を誇るミ…

【閑話休題】消えたデータの復旧費用

二、三日前、データを読み出そうとを覗いたところ、外付けHDDのデータが空っぽなことに気づきました。1TBほどのデータが入っていたので、一瞬、私の頭の中も空っぽになりました。以前、SDカードから誤って必要な写真を一枚削除してしまった時にウィンドウズ…

【閑話休題】中露機の韓国防空識別圏侵入が意味すること

先日、投稿した拙稿【閑話休題】韓国の本音、韓国政府の交渉術、恨、日本が考えたいこと - 夢は洋画をかけ廻るを、knori さんにご紹介いただきました。 knori.hatenadiary.jp どうも、ありがとうございますm(_ _)m。 さて、その私の拙稿で、 米中の防衛ライ…

【閑話休題】韓国の本音、韓国政府の交渉術、恨、日本が考えたいこと

いろいろな国や文化について知りたいというのが洋画を観る理由のひとつですが、韓国については韓流ドラマのファンというわけでもなく、韓国映画をたまに見る程度です。済州島とソウルを一度ずつ訪問したことがあるものの、韓国通にはほど遠く、 何故、韓国政…

「女王陛下のお気に入り」:史実に触発され、実在した女性三人のキャラクターを大胆開発、宮廷を舞台に人間の本質を描くダーク・コメディ

「女王陛下のお気に入り」(原題:The Favourite)は、2018年公開のアイルランド・アメリカ・イギリス合作の宮廷コメディ映画です。ヨルゴス・ランティモス監督、オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズら出演で、18世紀初頭のイングラ…

「クレアのカメラ」:キム・ミニ、イザベル・ユペールを迎え、映画の即興詩人ホン・サンス監督がカンヌを舞台に繰り広げる、大人の童話劇

「クレアのカメラ」(原題:클레어의 카메라、英題:Claire's Camera)は、2017年公開の韓国のドラマ映画です。ホン・サンス監督・脚本、イザベル・ユペール、キム・ミニら出演で、女癖の悪い映画監督、監督と男女の関係にある映画会社の女社長、監督と火遊…

「夜の浜辺でひとり」:監督自身の不倫に触発され、ドイツと韓国を舞台に報われぬ不倫の恋に悩みキャリアから遁走する女優を叙情的に描く

「夜の浜辺でひとり」( 原題:밤의 해변에서 혼자、英題:On the Beach at Night Alone)は、2017年公開の韓国のドラマ映画です。ホン・サンス監督のミューズであり、プライベートで不倫関係にある女優キム・ミニとのコラボ作品で、不倫スキャンダルで異国…

「悲しみに、こんにちは」:両親を亡くした都会っ娘が田舎の叔父夫婦、年下の従姉妹と過ごすカタルーニャの夏を描いた自伝的人間ドラマ

「悲しみに、こんにちは」(原題:Estiu 1993、英題:Summer 1993)は、2017年公開のスペインのドラマ映画です。監督自身の幼少期の体験に基づき、カルラ・シモン監督・脚本、ライア・アルティガス、パウラ・ロブレスら出演で、病気で両親を亡くしたバルセロ…

「正しい日 間違えた日」:男女の出会いを二通りの展開で描き、認識と行動、人間関係の無限の可能性を示唆する異色のラブストーリー

「正しい日 間違えた日」(原題:지금은맞고그때는틀리다、英題:Right Now, Wrong Then)は、2015年公開の韓国のドラマ映画です。ホン・サンス監督、チョン・ジェヨン、キム・ミニら出演で、映画監督チュンスと女性美術家ヒジョンの運命的な出会いと二通り…

「ウインド・リバー」:強者生存の雪原を舞台に、傷心のハンターと女性FBI捜査官が先住民のレイプ被害に挑む社会派クライム・サスペンス

「ウインド・リバー」(原題:Wind River)は、2017年公開のアメリカのクライム・サスペンス映画です。テイラー・シェリダン監督・脚本、ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセンら出演で、アメリカ中西部ワイオミング州のアメリカ先住民の居留地で起きた…

次々と登場する女性監督がフランス映画ならではの繊細で美しく、叙情的、芸術的な表現を底上げする?!

目次 次々と女性監督が登場するフランス映画 フェミニズムに急進的なアメリカ、保守的なフランス 女性が支え、女性が活躍できるフランス映画 関連記事 次々と女性監督が登場するフランス映画 先日、「あさがくるまえに」に関する情報を調べているうちに、最…

「あさがくるまえに」:心臓移植を通して一つの喪失が再生に連鎖する様を美しく繊細に力強く描いた、女性監督ならではのフランスの群像劇

「あさがくるまえに」(原題:Réparer les vivants、英題:Heal the Living)は、2016年公開のフランス・ベルギー合作のヒューマン・ドラマ映画です。数々の文学賞を受賞したメイリス・ド・ケランガルのベストセラー小説「Réparer les vivants」を原作に、カ…

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」:テニス男女決戦の実話に基づき、人間模様を描きつつ女性差別を風刺するヒューマン・コメディ&ドラマ

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(原題:Battle of the Sexes)は、2017年公開のアメリカのスポーツ系ヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。全世界のテニスファンの注目を集めた1973年の男女決戦の実話に基づき、ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファ…

「アントマン&ワスプ」:パートナー新登場、縮小技術を駆使しコミカルにMCUをリフレッシュするシリーズ第二作のアクション・コメディ

「アントマン&ワスプ」(原題:Ant-Man and the Wasp)は、2018年公開のアメリカのスーパー・ヒーロー映画です。マーベル・スタジオが製作、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが配給する、マーベル・コミックのアメリカン・コミック…

【閑話休題】「湯を沸かすほどの熱い愛」を洋画の目(世界の目)で見てみる

先般、テレビ放映された際に録画しておいた、中野量太監督、宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」を観ました。とても良い作品ですが、洋画の目(世界の目)から見て気づいたことが何点かありましたので、まとめてみました。 「湯を沸かすほどの熱い愛」…

「クワイエット・プレイス」:ホラー初挑戦で記録的ヒット、見えぬ恐怖と静寂が館内を包む、エミリー・ブラント主演のサスペンス・ホラー

「クワイエット・プレイス」(原題:A Quiet Place)は、2018年公開のアメリカのサスペンス・ホラー映画です。ジョン・クラシンスキー監督、エミリー・ブラントら出演で、姿の見えない地球外生命から身を潜め、物音をたてずに密かに生きる家族に迫る恐怖を描…

「クレイジー・リッチ!」:恋人のシンガポールの実家で大富豪一族と悪戦苦闘する中国系アメリカ人女性を描いたロマンティック・コメディ

「クレイジー・リッチ!」(原題:Crazy Rich Asians、中題:摘金奇緣)は、2018年公開のアメリカのロマンティック・コメディ映画です。ケヴィン・クワンが2013年に発表した小説「クレイジー・リッチ・アジアンズ」を原作に、ジョン・M・チュウ監督、コンス…

「ファントム・スレッド」:引退するダニエル・デイ=ルイスの卓越した演技、美しい衣装、甘い音楽で紡がれたゴシック・ロマンス風ドラマ

「ファントム・スレッド」(原題:Phantom Thread)は、2017年公開のアメリカのドラマ映画です。ポール・トーマス・アンダーソン監督・脚本、ダニエル・デイ=ルイス、レスリー・マンヴィルら出演で、1950年代のイギリスを舞台に著名なオートクチュールの仕…

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」:国際的なカンニングをソダーバーグばりにスタイリッシュ、スリリングに描いた画期的なタイ映画

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(原題:ฉลาดเกมส์โกง (Chalard Games Goeng/Chalat Kem Kong)、英題:Bad Genius)は、2017年公開のタイのクライム・サスペンス&ドラマ映画です。ナタウット・プーンピリヤ監督、チュティモン・ジョンジャルーンス…

【閑話休題】最近、観た邦画と雑感

本ブログでは洋画のみを扱っていますが、筆者はほとんど邦画を観ることはありません。もともとは、といっても10年以上前ですが、洋画、邦画、半々くらいの比率で見ていました。しかし、邦画を観た後にがっかりすることが多く、自然に手が出なくなったという…

「スターリンの葬送狂騒曲」:旧ソ連の権力承継の狭間を描き、独裁や粛清が人間の普遍的欲望の反映であることを暗示する高度な政治悲喜劇

「スターリンの葬送狂騒曲」(原題:The Death of Stalin)は、2017年公開のイギリス・フランスの歴史ドラマ&コメディ映画です。フランスのグラフィック・ノベル「La mort de Staline」(スターリンの死)を原作に、アーマンド・イアヌッチ監督、スティーヴ…

「レディ・バード」:故郷から巣立ちを目指す女子高生を母との対立を軸にコミカルに生き生きと描く、グレタ・ガーウィグの監督デビュー作

「レディ・バード」(原題:Lady Bird)は、2017年公開のアメリカのコメディ&ドラマ映画です。グレタ・ガーウィグ監督・脚本、シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、ルーカス・ヘッジズ、ティモシー・シャラメら出演で、カリフォルニアの片田舎のカ…

「グローリー/明日への行進」:非暴力を貫くキング牧師の政治信条、人間的側面と、周囲の人々、道半ばで倒れた人々を描いた感動的な作品

「グローリー/明日への行進」(原題: Selma)は、2014年公開のアメリカの歴史ドラマ映画です。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアらによって先導された1965年のアラバマ州セルマの大行進を題材に、ポール・ウェブによる脚本をエイヴァ・デュヴァーネイ…

「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」:妻子ある男性と結婚するも不満を抱き、元妻へ返そうと企てる型破りなロマンティック・コメディ

「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」(原題:Maggie's Plan)は、2015年公開のアメリカのロマンティック・コメディ映画です。レベッカ・ミラー監督、グレタ・ガーウィグ、イーサン・ホーク、ジュリアン・ムーアら出演で、恋愛感情を維持できない女性が人…

「君の名前で僕を呼んで」:美しいイタリアの田舎で家族とともに過ごす17歳の少年の夏休み、年上の青年へのほろ苦い初恋を爽やかに描く

「君の名前で僕を呼んで」(原題:Call Me By Your Name)は2017年公開のイタリア・フランス・ブラジル・アメリカ合作の恋愛ドラマ映画です。アンドレ・アシマンが2007年に上梓した同名小説を原作に、ジェームズ・アイヴォリーが脚色を手がけ、ルカ・グァダ…

「運命を分けたザイル」:厳美のアンデス山中で相方にザイルを切られ墜落するも、奇跡的に生還する登山家の凄絶なサバイバルと感情の交錯

「運命を分けたザイル」(原題:Touching the Void)は、2003年公開のイギリスのドキュメンタリー&実録ドラマ映画です。ジョー ・シンプソンの自伝「死のクレバス―アンデス氷壁の遭難」を原作に、ケヴィン・マクドナルド監督、ジョー・シンプソン本人、サイ…

「夏時間の庭」:時代、社会、芸術への洞察を背景に、パリ郊外の自然のに囲まれた家に集う家族を印象派の絵画のように美しく描いたドラマ

「夏時間の庭」(原題:L'Heure d'été)は、2008年公開のフランスのヒューマン・ドラマ映画です。パリ、オルセー美術館の20周年を記念して制作された作品で、オリヴィエ・アサイヤス監督・脚本、ジュリエット・ビノシュら出演で、パリ郊外の古めかしい邸宅を…