夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

ベルギー映画

「あさがくるまえに」:心臓移植を通して一つの喪失が再生に連鎖する様を美しく繊細に力強く描いた、女性監督ならではのフランスの群像劇

「あさがくるまえに」(原題:Réparer les vivants、英題:Heal the Living)は、2016年公開のフランス・ベルギー合作のヒューマン・ドラマ映画です。数々の文学賞を受賞したメイリス・ド・ケランガルのベストセラー小説「Réparer les vivants」を原作に、カ…

「RAW~少女のめざめ~」:少女に潜在する獣性の目覚めを多層構造の中で描き出した、ドラマ性が高く深みのある稀有なボディ・ホラー

「RAW~少女のめざめ~」(原題:Grave、英題:Raw)は、2016年公開のフランス・ベルギー合作のホラー&ドラマ映画です。ジュリア・デュクルノー監督・脚本、ギャランス・マリリエら出演で、獣医科大学に進学したベジタリアンの少女が肉を食べたことから、自…

「エル ELLE」:勝ち組の敏腕女性が遭遇するレイプの顛末を、様々な人間関係が織りなす日常的現実感の中で描いた、異色サスペンス映画

「エル ELLE」(原題:Elle)は、2016年公開のフランス、ベルギー、ドイツ合作のサスペンス映画です。2012年に発表されたフィリップ・ジャンの小説「Oh...」を原作に、ポール・バーホーベン監督、イザベル・ユペールら出演で、瀟洒な自宅で覆面の男に襲われ…

「わたしは、ダニエル・ブレイク」:高齢の失業者が直面する苦難を通して、資本主義下の管理社会における人間性の欠如をリアルに訴える

「わたしは、ダニエル・ブレイク」(原題:I, Daniel Blake)は、2016年公開のイギリス・フランス・ベルギー合作の社会派ドラマ映画です。ケン・ローチ監督、ポール・ラヴァーティ脚本、デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズで出演で、心臓病により…

「神様メール」:聖書の世界にPCや携帯を導入、性差別を風刺しつつ障害・孤独・依存・不和等の悩みと救いを描く野心的ダークコメディ

「神様メール」(原題: Le Tout Nouveau Testament、英題:The Brand New Testament)は、2015年公開のベルギー・フランス・ルクセンブルグ合作のダークコメディ&ファンタジー映画です。ジャコ・ヴァン・ドルマル監督、ピリ・グロワーヌ、ブノワ・ポールヴ…

「レッドタートル ある島の物語」:無人島を舞台に人間と自然のかかわりを繊細で美しい映像と音楽で描いた、神話的アニメーション映画

「レッドタートル ある島の物語」(原題:The Red Turtle、仏題:La Tortue rouge)は、2016年公開の日本・フランス・ベルギー合作のアニメーション映画です。スタジオジブリ初の国外との共同製作による作品であり、オランダ出身のアニメ作家、マイケル・デ…

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」:アイルランドの伝説を基に、妖精の母を失った少年の冒険談を美しい映像と音楽でほろ苦く描く

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」(原題:Song of the Sea)は、2014年公開のアイルランド・ベルギー・ルクセンブルグ・デンマーク・フランス合作の長編アニメーション映画です。アイルランドに伝わる民話や神話を基に、トム・ムーア監督・原案、ウィル…

「少年と自転車」:親に捨てられ、神経がむき出しになったように傷ついた少年の痛ましさと、母のような愛でそれを癒す女性の豊かさ

「少年と自転車」(原題:Le gamin au vélo)は2011年のベルギー・フランス・イタリア合作のヒューマン・ドラマ映画です。ダルデンヌ兄弟監督、トマ・ドレ、セシル・ドゥ・フランスらの出演で、育児放棄され、神経がむき出しになった少年が、平和と慰めを得…

「君と歩く世界」:両足を失ったシャチの調教師の女性と、朴訥な労働者階級の格闘家のハードなラブ・ストーリー

「君と歩く世界」(原題:De rouille et d'os、英題:Rust and bone)は、2012年公開のフランス・ベルギー合作の映画です。クレイグ・デイヴィッドソンによる同名の短編集を原作とし、ジャック・オーディアール監督、マリオン・コティヤール、マティアス・ス…

「サンドラの週末」:鬱病から回復するも解雇、復職の為には同僚の賞与返上が必要という過酷な状況を、マリオン・コティヤールが好演

「サンドラの週末」(原題:deux jours, une nuit)は2014年のベルギー・フランス・イタリア合作の映画です。解雇の窮地に立たされ、自分の存在価値を疑いながらも同僚たちに賞与を諦めるよう説得して回り、自身の拠り所を見つけ出していくひとりの女性を、…